SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングオートメーションの最新動向を探る

マーケティングオートメーションの最新動向を追う【前編】
「Oracle Eloqua」と「Salesforce1 ExactTarget Marketing Cloud」


Oracle Eloqua、購入に至らなかったリードからビジネスチャンスを掘り起こす

 マーケティング部門にとって、イベントやオンライン広告などでリードを獲得するのは重要だ。得られたリードをさまざまな条件で絞り込み、たとえば購買可能性が高い20%程度のアクティブリードを抽出する。そのアクティブリードは営業担当に渡され購買に結び付ける。購入する顧客がアクティブリードの30%もあればマーケティング活動としては成功だろう。

 営業担当者は四半期の短期オペレーションのことも多く、購買に至らなかった70%の顧客はその後あまりフォローされない。ところが、この残されたアクティブリードのうちの80%近くの顧客が、2年以内に同様の製品を他ベンダーから購入するという調査データもある。これは、購買に結び付けかなかったリードにこそ大きなビジネスチャンスがあるということだ。

 購入可能性が高くないと判断されたリード、購買に結び付けかなかったアクティブリード、これらを長期的に購買に至るリードへと育て上げていく。そのためのマーケティングオートメーション・ツールが「Oracle Eloqua」だ。顧客に対し中長期にわたりマーケティング活動を継続し、案件を育成する。そもそもこの領域を作り出したのが、オラクルが買収する前のEloqua社だったとも言われている。

キャンペーンフロー全体を管理する

 Oracle Eloquaは、オンラインでの顧客の行動履歴、たとえばどのメールを受け取りそれにどう反応したか、Webページのどこを参照し何をダウンロードしたかなどの情報と、顧客の属性データを組み合わせてスコアリングし顧客をセグメント化する。各セグメントに対し最適なマーケティング活動を実施して、その結果をさらに取り込んでスコアリング、セグメント化する。これを繰り返して案件育成を行うのだ。

 従来のマーケティングキャンペーン管理ツールも、顧客属性に応じた施策は打てるが、実施した施策に反応したか否かだけで購買する可能性を判断し、リード抽出するようなものが多い。Eloquaは、キャンペーンフロー全体を管理することで、実施したオンライン上での施策結果を顧客の行動履歴として自動収集する。施策に対する反応をスコアリングし、それに顧客属性情報を組み合わせきめ細かくセグメント化する。

 たとえば、商品に対する興味の度合いは低いが顧客属性的にはターゲット、属性的にはターゲット外だが興味度合いが高い、属性的にターゲット外で興味度合いも低い、興味度合いが高く属性的にもターゲットというような4つのグループにセグメント化できる。ターゲットで興味もあるセグメントはすぐに営業に渡せるリストになる。ターゲットではあるが興味度合いが低いセグメントなら、興味度合いを高める施策を打てばいい。

 逆に対象外で興味度合いも低いセグメントに商品情報を数多く送りつければ、企業に対する満足度は低下し、不快な印象すら持たれかねない。こういったセグメントには、別の情報を適宜発信しどのようなことに興味があるかを継続的に探る必要がある。セグメントごとにどのような施策をどのタイミングで実施すべきかのきめ細かいキャンペーン設計は、EloquaではGUIを使った操作で簡単に行える。

きめ細かなスコアリングとセグメント化

 鍵となるのは、中長期的にキャンペーンを設計し、実施した施策に対する顧客行動を的確にスコアリングするところだ。この処理が単純なツールが多い中、きめ細かく複雑なスコアリングとセグメント化ができるのがEloquaの強みだ。そして、1つの商品だけでなく複数の商品に対しセグメント化し、それらを組み合わせてキャンペーン管理することもできる。

 また、スコアリング結果を多彩な分析レポートで把握しやすいのも特長。これによりどのキャンペーンが誰に対し効果があったかがすぐに分かり、顧客に合ったコンテンツを的確に提供できる。このスコアリング機能の充実、分析レポートの使いやすさにより、顧客が商品をいつ買いそうかを予測できる。この「いつ頃買いそうか」の情報は営業にとってもっとも重要で、後の営業活動の効率を大きく左右する。

収益パフォーマンス指標:CVRの時系列(月毎)ステージ毎のCVR
収益パフォーマンス指標:CVRの時系列(月毎)、ステージ毎のCVR

 案件育成するEloquaの性格上、商品の購買を検討する期間が比較的長く、商談単価も高いものを扱う企業での採用が多い。また、商品購入後も引き続き顧客との接触がある企業、たとえば自動車のようにメンテナンスで継続的に顧客と接触がある商品を扱う企業で使われている。これは、企業の中で商品購入に関わる担当者が複数存在するようなところとも言い換えられる。

 Oracle EloquaはSaaSで提供され、システム構築の手間なしにすぐに利用できる。価格は1万コンタクトで月額約20万円から。クラウドサービスならではの面白い機能もある。それは、他の利用者の実施したキャンペーン結果の統計情報が利用できるというもの。たとえば、同業他社のメールキャンペーンではどれくらいのヒット率があるかが分かるので、それと比べて自分たちの施策を客観的に評価できるのだ。

充実するオラクルのポートフォリオ

 オラクルには既存の実績あるCRMアプリケーション「Oracle Siebel」や、顧客とのさまざまな接点を「カスタマージャーニー」と捉えて一貫管理するクラウドサービス「Oracle RightNow」などもある。また、2013年12月にはBtoCの領域でオンラインチャネルでのコミュニケーション最適化に強みを持つResponsysの買収に合意したことを発表。さらに、2014年2月には300社を超えるパートナー企業からデータ提供を受け、DMP(Data Management Platform)で処理することでターゲットがどのような嗜好を持ちどのような行動をとっているかといった情報を提供する「BlueKai」の買収も発表。着々とデジタルマーケティング関連ラインナップを充実させている。

 今後はより効果的なマーケティングオートメーションを実現させるために、これらとEloquaを連携させて次世代の統合的なMarketing Cloudサービスへと進化させてくるだろう。現状はこれらは1つのサービスとなっていないので、必要に応じ連携させる手間は発生する。しかしシームレスに統合されてくれば、マーケティングからセールス活動、さらにはその後の顧客サービスに至るまで、オラクルのクラウドサービスで1つのソリューションとなることが期待される。

次のページ
ExactTargetが加わって生まれ変わった、SalesforceのMarketing Cloud

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
マーケティングオートメーションの最新動向を探る連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにしたソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋を履いている。DB Online チーフキュレーター。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2014/04/02 11:45 https://markezine.jp/article/detail/19427

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング