動画広告をスムーズに導入するコツ
では、メディアサイドがスムーズに動画広告を導入するためには、具体的にどのようなことが重要だろうか?北庄司氏は3つのポイントがあるという。
1つ目は、管理画面上で配信設定などが簡単に行えること。動画のアップロードやエンコードをはじめ、さまざまな調整がひとつのブラウザ内で完結すると、作業的な負担を大幅に圧縮することができる。2つ目は、プラットフォームが多くのアドサーバーや、アドネットワークと統合されていることだ。管理画面上で各事業者のタグを設定するだけで、幅広く配信することができる。
そして3つ目は、動画広告の標準規格「VAST」「VPAID」へ対応していることだ。プラットフォームがVASTに対応していると広告の流通が活性化し、またVPAIDに対応していると、動画広告再生中にバナーを表示してマウスオーバーで商品を見せる、といったインタラクティブなやり取りが可能になる(VAST、VPAIDについての解説記事はこちら)。なお、「Video Cloud」ではいずれもカバーしている。
動画広告は売れるのか?
メディアサイドからよく聞かれる声として、第一に挙げられるのが「動画広告は売れるのか」というものだ。これに対して北庄司氏は、「これから爆発的に売れると見ている」と語る。事実、米国ではすでに4,000億円超の市場へと成長している。対して日本は132億円。ネット広告全体に占める動画広告の割合も、米国が10%であるのに対し、日本ではまだ1.4%とわずかだ。十分な伸びしろがあると言える。
それでは、今後どのような成長を見せるのだろうか。北庄司氏は動画広告に関するカオスマップの2012年版と2014年版を比較し、デマンドサイドのプラットフォームの増加を指摘する。広告主のニーズの高まりを受けて、代理店や事業者、動画クリエイティブの検証などを手がけるプレーヤーは拡充している。一方で、パブリッシャー側のプレーヤーは微増傾向だ。
「端的に言えば広告の在庫が足りない状況。広告主は十分に機が熟しているので、メディアサイドには、できる限りの動画広告を用意していただきたいです。配信環境が整っても、配信先のメディア在庫が増えなければ市場は伸び悩んでしまいます」と北庄司氏は強調する。
事例に見る「収益化成功の秘訣」
動画広告市場の活性化には、モバイル環境での動画視聴が伸びているという背景もある。モバイルデバイスと動画は非常に親和性が高い。3分以上の長いコンテンツでも、モバイルでなら視聴される傾向がある。
例えば天候情報を提供する「Weather.com」では、スマートフォンでのアクセスがPCの1.5倍になっているという。以前はスマートフォンでの広告対応が遅れ、機会損失が出てしまっていた。だが、今はモバイルのインストリーム動画広告を設置して収益をカバーできるようになった。「モバイルデバイスが明らかに一般的になってきている今、マルチスクリーンへの万全な対応が、今後の収益化には何より欠かせない。だから、それをカバーする配信プラットフォームを選ぶことが重要になります」北庄司氏は述べる。
さらに今、動画広告の展開先はWebサイトだけでなくアプリへも広がっている。例えば、MTVを傘下に持つ米国のメディアグループ「VIACOM」では、MTVやアニメコンテンツなどを自社開発のアプリで提供。その中で展開する動画広告のプラットフォームとして「VIDEOCLOUD」を導入し、アプリならではのユーザーの使い勝手やメディアの意図を追求しながら、動画広告での収益確保を実現している。