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【横山×真野対談】広告枠売買の「代理」から、マーケティングの「代理」へ/『広告ビジネス次の10年』立ち読みコンテンツ


コンペ形式で得られるアイデアはあくまで個別最適解

横山:なるほど、なかなか耳が痛いお話ですが、確かに戦略パートナーになるべきだというご指摘には共感します。僕自身、そういう立場でさまざまな企業の仕事に鍛えられてきた部分は大いにあると感じています。

 領域が広がっているからこそ、広告主がもう追いきれず、そのサポートをしてほしいというニーズはいますごく増えていると僕も思います。一方で、長期的なパートナーを得ることと、コンペでエージェンシー同士を競わせてよりよいアイデアを得ることとは、両立させづらいとも思うのです。

 競わせることによるメリットは大きいですが、いまの時代、ブランド横断的なアプローチが必要だったり、そもそもマーケティングを変革していこうとする企業もではじめていたりするので、広告主も広告代理店もコンペ形式から離れたアプローチをしていくべきなんでしょうか?

真野:そこは広告主企業もまさに模索しているところです。長らくコンペ形式がメインでしたから、環境変化を考えるとシフトしていくのが自然かと思いますが、その際、コンペ形式で得られていたアイデアが研鑽される部分は何らかの方法で得ていくべきでしょうね。

 また、冒頭で組織の課題にも触れましたが、広告、販促、広報などのマーケティングに関わる領域がまだ縦割りになっていて、予算でも人材の面でも統合して力を最大化できるような体制になっていないと思います。ようやく、デジタル領域の中で、広告出稿やオウンドメディアでの発信などが統合されはじめたところでしょうか。

横山:ペイドメディアだけだった時代は「代理」店の機能で済んでいましたが、オウンドメディア、アーンドメディアと広がると、やはり広告主の人でないと全体を把握できませんよね。それを考えると、逆に広告代理店がサポートできる範囲が狭まっているようにも感じますが。

真野:これからは、広告主がマーケティングデータを戦略パートナーの広告代理店には開示していく必要があると思います。マーケティングデータを開示しない中でのコンペ形式では個別最適解しか得られない。でも、これからは、あくまでトータルのマーケティングを共に考え、データも統合的な活用を検討できるようなパートナー関係を広告代理店に求めた方がいいと思いますね。

広告枠売買の「代理」から、マーケティングの「代理」へ

横山:これまでお話をうかがっていて、米国の状況を思い浮かべました。アメリカは広告代理店の収益モデルの幅が広く、コンサルティングを担うケースも多いので、例えば新しい技術が出てきたとき、コンサルティングを担当する広告代理店がそれを評価することがよくありますよね。日本でも、新しい技術を試すかどうかといった判断は、一般的な広告主だとなかなかできないのではと思います。

真野:まさにそうだと思います。だから、これからの広告代理店はコンサルティングができることが重要になってきます。逆に言えば、広告主にはそういう役割のパートナーが必要です。それがないので、いまコンペをしても、結局どの広告代理店に頼んでも同じテクノロジー会社が請け負う、といったことが起きている。それなら、最初からその会社とつながれたらいいですよね。また、中立な立場でテクノロジーの評価をしてくれるパートナーが、いま求められているのです。

横山:広告枠の売買の「代理」ではなく、マーケティングの「代理」ですね。

真野:そうですね。そういうパートナーがまずいて、その先にテクノロジー会社などの個別のエキスパートがいる、という構図です。今、個別手法はそれぞれの専門事業者がどんどん質の高いものをリリースしていますから、メールマーケティングはこの事業者、ダイレクト系はこの事業者、とタッグを組むプレイヤーを選んでいけばよい。それを広告主だけでやるのは難しいので、選定や調整をしてくれる広告代理店が必要だということです。

横山:では、そんな戦略パートナーとしての関係を築くためには、どうしたらよいのでしょうか?

真野:少し遠回りかもしれませんが、「広告主を育てる」発想が大事ですね。他社の事例などを集めて傾向を伝えるなどして、広告主に勉強してもらいながら、自分たちも現状の環境に適応するように育っていくというやり方がいいのではないでしょうか。

 以前、地方の広告代理店のコンサルティングをした際には、まず営業担当者全員にウェブの無料の解析ツールの操作・分析方法を研修させていただき、顧客先にそのツールを導入し、その分析結果をもとに広告主に提案するように促しました。すると、顧客の課題や志向がわかり提案が通るようになりました。

 世の中が変わっているのですから、自分たちも変わらなくてはいけないし、同時に広告主にも変わっていただくよう提案する。そうすると、おのずと戦略パートナーとしての考え方になっていきます。

 特に、最初にお話ししたように、広告主は組織体制に課題を抱えていることが多いので、その部分にまで働きかけて実際に組織が変わっていくと、その後の仕事がずっとしやすくなります。

横山:広告代理店がいくら優秀な戦略パートナーになりえても、広告主内のマーケティングが分断されていたり、先ほども挙がりましたが予算や人材が最適に配分されていなかったりしたら、タッグとして力を発揮できないということですね。

真野:ええ。もちろん簡単ではありませんが、長期的なパートナーになろうとするなら、そこから育てる視点が重要だと思います。

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広告主の事業や顧客を知り尽くす、地道な努力を怠るな

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/04/30 16:32 https://markezine.jp/article/detail/19856

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