クリックから認知や態度変容へ、日産が続ける挑戦
横山: 動画といってもいろいろなフォーマットがあり、アドなのかブランデットコンテンツなのか、種類もさまざまですが、広告主サイドとして吉野さんはどういう考えで取り組まれていますか?
吉野:まさに、当社もクリックから認知や態度変容へと、ブランド視点で効果指標を捉えなければと思っているところです。基本は、ブランディング目的ですね。当社の商材である自動車は、10年単位で購入するという特徴があります。そのため、買い換えを検討するタイミングで日産を想起してもらいたい。そこを見込んで、日ごろから「日産ってなんかいい会社だよね」と思ってもらえるコミュニケーションを目指しています。そのために、当社の公式Facebookページをメインに、動画コンテンツを出しています。
もうひとつ、よりセールス的なところでは、車種の新発売の時期には週末に販売店で「フェア」と呼ぶイベントをやっています。ですので、販売店への送客を狙って、車種に特化した告知をポータルサイトや動画サイトに出稿しています。ですが、昨年から始めた「JUKE」という車のプロモーションは、お客さまの態度変容やブランドへの好意度、またコーポレートへの好意度にどう寄与するかという視点で制作しました。
横山: その場合の効果測定指標は、どうされていますか?
吉野:それがまさに課題です。実は定まっていなくて。今はまだ、可能な限りの調査をかけるくらいです。JUKEでは、映画「スター・ウォーズ」のキャラクターであるトルーパーが、JUKEの個性に触れて白い装甲服の色が赤に変わる、という動画を制作しました。これはコンバージョンに直結するというより、話題化を狙うものです。となると、必然的に「どれくらい広がったか」「それに接した人が態度変容したか」が指標になります。そこで、アドを打った後、一人ひとり追いかけて調査しました。今後はデジタル上で、お客さまの意識変化を確認できる手法を見つけなければと思っています。
日経電子版が見出した、動画広告に接する環境やタイミング
横山: なるほど。一方でメディアサイドの戸井さんは、動画広告とコンテンツとのマッチングをどうお考えですか?
戸井:日経電子版が新しく導入した動画広告は、プリロールとインリードの2種類です。それぞれに特性があるのではないかと考えています。プリロールは実験段階では、かなり高い割合で完全視聴されています。ですが、現状では広告掲載可能なストリーム数に限りがあります。一方で、インリードの場合は動画コンテンツを見にきたわけではなく、記事を見に来た読者にも動画広告を表示できるというメリットがあります。しかし、完全視聴の割合は相対的に低くなります。ユーザー側が動画を見る心づもりになっていない、という点で違いがあるでしょうね。
横山: 確かにそうですね。同じプリロールでも、30分程度の長いコンテンツを見ようと考えている人のスキップ率は低い。だから、そのときのユーザーの時間的な余裕にも関連していそうです。インリードだとデフォルトで音声を消しているというような環境の違いもありますね。
オンラインの動画広告は、テレビCMを使うほど予算がない企業や、ブランドにも使いようがあると思います。特にBtoBの事業でのアウトバウンド策としては非常にいいと思いますが、いかがですか?
戸井:おっしゃる通りです。ターゲティングできる点が、動画広告のメリットのひとつだと考えています。日経電子版では、ラグジュアリーブランドや主にビジネスクラスの訴求を目的とした航空会社など、経済的に余裕のある層をターゲットとしたBtoC企業の活用が進んでいます。また、日経が得意とするBtoB企業も、関心を持って動画広告を準備されている状況です。企業購買において影響力のある方々への効率的なアプローチのために、動画広告でも日経電子版の活用を検討されているようです。こうした、ターゲットを絞ってメッセージを届けたい広告主の期待に応えるために、日経グループではグループ全体でIDの統合を進めています。