どのようなカバーデザインだったら買いたくなるのか?
さて、2回目の調査では元となるカバーデザインを3パターン用意しました。それに加え色と帯のサブコピーを変更して計9パターンの素材をデザイナーさんに準備していただき、調査を行いました。
結果は【最も興味がわいた】【最も手にとってみたい】【最も買いたい】という項目で左上の表紙1が一番となりました。まとまりでみると表紙1、3、6が高い結果を出していて、色は赤系がよいのがわかりました。
カバーデザインへの意見は同僚たちにも聞きましたが、人によって意見はバラバラでした(当たり前ですが)。一番多くの方に手にとってもらいやすそうだと、当初から思っていた表紙1がデータ上でも最もよい傾向となったので、それを採用する方向に落ち着きました。【最もインパクトがある】という項目で一番となっていた帯に写真入りのパターンは、編集部内のアイデアで結果的にPOPで写真を再利用することになりました。

また帯に入れるサブコピーも6パターン用意しました。以下が素材です。
- 米国デジタル人材の年収相場は軽く1千万超え
- これからも必要とされ続けるために必要なスキルは?
- 大変革の波に乗り未来をつかめ!
- 創業初の外国人取締役、電通グローバル化の真相
- IT系・コンサル系の参入加速、業界地図・シェア予想
- キーパーソン対談、3文字略語がわかる用語集収録
スキルに関しては他の調査でも関心が高いことがわかっていたので、2は上位にあがってくるだろうなと予想しておりましたが、後2つをどれにしようか迷いました。というのも調査の結果、そこまで有意な差がなかったのです。
ただ数字上では有意にならなかったものの、「IT・コンサル系」という言葉は帯の中にいれたいと思っていました。なぜなら、原稿内では異業種参入について触れている個所が多くあり、メインターゲットである広告業界以外の業界の方(特にIT・コンサル系の方々)にも手にとってもらえるような言葉を入れることで、少しでも多くの方に食指を伸ばしてもらえるきっかけになるかもしれないと思っていたからです。
さらにあと1つを悩んでいる際に思い出したのが、CCCの方と打ち合わせをした時に聞いた話です。そのお話は「みなさんが知っている言葉(想起しやすい言葉)を表紙に入れるのは、まず手に取らせるためにはよい手段。自分に関係あるかも? と思わせることが重要」という内容でした。
実際その打ち合わせの時に見せてもらったTSUTAYAのPOSデータ上では、企業名でいうとアップル、無印良品、ディズニー、トヨタなど誰もが知っている企業名が入ったビジネス関連書籍が上位に並んでいました。
その意味で本書のターゲット層のほとんどがご存じである言葉であろう、「電通」を入れたいと思っておりましたので、電通イージス誕生~という文句に決めました。最終的には次の3つをサブコピーとしました。
- 次世代型人材に必要なスキルとは?
- IT・コンサル系の参入加速、今後10年の業界シェア予想
- 電通イージス誕生、グローバル化を加速する理由
さらにリアル書店の書店員さんの意見もヒアリング
という感じで内容、タイトル、カバーデザインを横山さん、榮枝さんとも相談しつつ決めていきましたが、カバーデザインの最終調整のタイミングで、書店営業に同行し現場の書店員さんに話を伺える機会を得ることができました。
本を購入する方々と毎日向き合っているのは、当然現場の書店員さんたちであり言い換えればどんな本が売れるているのか、リアルタイムの状況を最もご存知の方々と言えるでしょう。その方々の意見も反映させブラッシュアップできればなおよいかもと思い、最終的に残った2種類のカバーを実際の本に巻いて、どちらがよいか直接聞くことにしました。

結論からいうと真っ二つに意見はわかれたのですが、その会話の中である書店員さんから「広告関係の本はキラキラしているのが売れている印象。箔をのせてみるとよいんじゃない?」というアドバイスをいただきました。確かに売れている本はキラキラしている印象です。なるほど! と膝を打ちデザイナーさんとも相談し、最終的にはサイン個所に箔をのせて以下のようなカバーデザインに落ち着きました。

さて、気になる結果はどうだったのでしょうか。発売2週間で増刷がかかり、おかげさまで現在も好調に推移しております。ひとまずよい結果で推移しているのは、もちろん喜ばしいことですが、それと同時に取り組みを通じて自分としてもたくさんの気づきを得ることができたことが何よりの収穫でした。
また、今回の取り組みでは事前の調査によって「安心感」「方向感」を得たり、「思い込み」を解消することができた印象ですが、やり方やテーマを広げることで企画段階では自分がまったく気づけなかった「新しい発見」や「一つ上のアイデア」を得ることもできるのかもしれない、とも思いました(それを得るためにどの程度のデータ量や材料が必要で、具体的にどう進めればよいのかのイメージはまだできていませんが)。
本は一冊一冊に個性がでる商品だと思いますので、もちろんこの取り組みが全てに当てはまるとは思いませんが、何かの参考になれば嬉しく思います。
今回の取り組みにご賛同をいただいた横山さん、榮枝さん、ステキなカバーデザインに仕上げていただいたデジカルのデザイナー萩原さん、橋本さん、的確なアドバイスをいただいたCCCの小堺さん、中村さん、お忙しい中時間を割いて頂いた、文教堂書店カレッタ汐留店、リブロ汐留店、芳林堂書店汐留店の書店員の方々をはじめ、ご協力を頂いたみなさま誠にありがとうございました!(というわけで、実物を見てみたいという方はぜひAmazon、SEshop、TSUTAYAオンラインショッピングなどのウェブサイトやお近くの書店でお買い求めください!)