元広告主だからこそ分かる、リターゲティングサービスの価値
── 今年7月、Vizury(ビィズリー)社の日本支社が開設されました。日本法人代表に就任された富松さんは、もともと広告主側の方だったそうですね。
そうなんです。デジタルマーケティングの世界は長いですが、ずっと主に広告主として関わってきました。90年代半ば、シティバンクでオンラインバンキングなどの宣伝を行ったことをきっかけに、GE、21世紀FOX映画社でBtoC商品・サービスのマーケティングを行っていました。
── すでに20年の経験がおありなのですね。デジタルだけでなく、テレビや新聞の出稿も担当されていたのですか。
はい。「21世紀FOX」時代は映画の宣伝を担当していましたから、かなりの宣伝予算を持っていました。でもその分、ジレンマもあったんです。
例えばテレビCMの枠は、「F1向け」「ファミリー向け」などの属性で分かれています。でも同じF1層でも、ランチにイタリアンに行く人もいれば、コンビニのサンドイッチで済ませる人もいる。マスメディアは、一気に認知度を高められるメリットもある分、価値観や志向の違いなどの行動履歴を考慮できないのがジレンマでした。
もうひとつのジレンマは、投資対効果(ROI)が分かりづらいことです。大きな予算を投じても、それぞれが入場者数や売上にどうつながったのか、社内で上手く説明するのは困難でした。
90年代後半、デジタルマーケティングが生まれ、その後クリック数に対して課金される「クリック課金」という仕組みも登場しました。でも、どんなにクリック数が多くても、どの程度の売上につながったのか、は分からない。今回Vizury社の日本法人代表をお引き受けしたのは、リターゲティングの技術が、同じジレンマをもつ広告主の方々のためになると思ったからです。
── 元広告主だからこそ、サービスの価値が把握できたのですね。
「スター・ウォーズ エピソード3/ シスの復讐」や「アバター」などの宣伝も担当していたのですが、当時リターゲティングがあったらどんなに良かっただろう、と思いますよ。今だったら、広告をクリックして映画の紹介サイトに飛び、Web上でチケットの購入までリターゲティングできますからね。