SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

運用型広告時代の要!トレーディングデスク最前線(AD)

注目DSP事業社のキーパーソンと語る!(第2弾)スマホ広告市場への期待と現実

 前年比121.6%と、運用型広告市場は拡大路線に乗っている。その市場拡大を後押しすると期待されているのが、スマートフォン広告だ。今回はスマートフォン広告市場への期待とその課題について、トレーディングデスク専門のエスワンオーインタラクティブの高瀬大輔氏が国内DSP事業社のパイオニア2社のキーマンと語り合う。

スマホ広告市場は普及台数や利用率に比べて伸びが鈍い

高瀬:今年2月に電通が発表した「2013年(平成25年)日本の広告費」によると、インターネット広告費は前年比108.1%で9,381億円に達したそうです。中でも運用型広告は、前年比121.6%の4,122億円と大きく成長しています。この理由としては「アドテクノロジーの進化」や「スマートフォン/タブレットの普及拡大」などの要因が大きいでしょう。 そこで本日は、DSP事業社のパイオニアであるフリークアウトとスケールアウトのお二人と共に、スマートフォン広告市場(以下、スマホ広告市場)の現状について議論したいと思います。

株式会社エスワンオーインタラクティブ 取締役 高瀬大輔氏

佐藤:フリークアウトの佐藤です。弊社は国内DSP事業の本格化を目指し、設立しました。現在はDSPのほかDMP、モバイル向け広告製品を提供しています。

高瀬:今年6月には東証マザーズに上場なさったとのこと、おめでとうございます! 佐藤さんはスマホ広告市場をどのようにごらんになっていますか。

佐藤:ありがとうございます。スマホ広告市場に関していうと、RTBについては思ったほど伸びていないのが現状ですね。ただ出荷台数やネットのアクティビティにおいて、スマホはすでにPCを抜いていますし、 品質の高い広告枠も増えているので、今後大きく伸びると思います。特にスマホの場合、PCと違って接触頻度が非常に高いこともあり、期待したいところです。

宮本:スケールアウトの宮本です。僕はインターネット広告代理店を経てmedibaに入社して5年になりますが、昨年8月のmedibaのスケールアウト社買収により、現在はスケールアウトの事業にコミットしています。ご存じのようにmedibaはKDDIグループの一員として、KDDIグループのオーディエンスデータを基盤とした広告配信ソリューションを展開してきましたが、スケールアウトの買収によりDSP/DMPを合わせた総合力を背景に事業を強化していく方針の下、事業全体を統轄しています。

高瀬:御社におけるスマホ広告の伸びはいかがですか?

宮本:市場全体で見ると、やはりPCの方が多いですね。スマートフォンの利用率や普及台数は確かに伸びていますが、DSP事業者の観点で見ると、PCとスマートフォンでは技術的な違いがあること、さらにアドネットワークが依然として強いという特徴があります。ただ、2014〜15年にかけて、今の状態から大きく変わってくると期待しています。

スマホ広告の効果は、PCの指標では測れない

高瀬:スマホ広告市場は新しい分野でもあり、期待と共に多くの課題があると思います。お二人は、スマホ広告市場の課題や、現状で不足している要素について、どのように考えていらっしゃいますか?

株式会社フリークアウト 取締役COO 佐藤裕介氏

佐藤:ネイティブアプリ広告枠では、PCブラウザを中心としてきたパブリッシャーには馴染みにくく、良いパフォーマンスが出せないようです。また広告主サイドも、スマホ最適化されたランディングページの開発やスマホから獲得した顧客とのリテンションという点で準備が足らない面もあります。こうした課題に対しDSPだけでできることは限界がありますね。

高瀬:運用側の我々も同じ問題意識を持っています。PCと異なり、スマホはメディアサイドの準備が整う前から低CPMで市場が形成されたので、PCの広告指標からするとスマホ案件はどうしても安価になってしまいます。それにスマホの場合、PCにはないリアルタイム性とロケーションという特性があるので、運用の仕方も違うんです。PCの運用メソッドをスマホに適用しても求めるパフォーマンスに届きませんし、またPCの広告指標を基準にすると非常に低く見られるので、結局「アドネットワークで安価に回せばいい」となってしまう。スマホの特性に合わせた広告指標の早急な策定が必要だと思います。

プログラマティック・バイイングで成果を上げる!日々の“運用”の信頼できるパートナー

トレーディングデスク事業の専門企業 エスワンオーインタラクティブへのお問い合わせはこちら

スマホとPCで異なる「コンバージョン」の捉え方

高瀬:先ほど、スマホの接触頻度という話が出ましたが、それで思い出したことがひとつあります。最近、「暇」の捉え方が変化しているようですね。昔は数時間〜数日単位で何も予定がない状態が暇だったのですが、今は電車の待ち時間など、何とも接触していないスキマ時間を暇と認識するようになっています。

株式会社スケールアウト 副社長 CRO 宮本裕樹氏

宮本:暇のハードルが下がっているんですよね。聞いたことがあります。

佐藤:僕もエスカレーターに乗っている時とか、信号待ちの時間を暇だと思います。明らかにスマホというメディア登場による影響ですね。こういう数秒~数十秒というスキマ時間の中で、ユーザーがコンテンツや広告にどう接するかを考えなくてはならないんですよね。大量な情報を短時間で脳が摂取する場合、無意識のうちに不要と判断される情報はシャットアウトされます。選択的認知と呼ばれたりしますね。つまり、スマホというメディアへの接触態度の変容にあわせて、広告フォーマットも指標もPCのメタファーから変えていかないといけないのではないでしょうか。

宮本:コンバージョンということでいえば、スマホで広告を見た後、自宅のPCでアクセスしているオーディエンスも多いはずなんですよ。でもそのコンバージョンは拾えていないですよね。

高瀬:デバイスをまたいだトラッキングができればいいのですが、現実問題としてまだ難しい状況ですね。

佐藤:「浅いコンバージョン」といった概念を指標化したいですよね。

宮本:それにスマホ広告市場はPCに比べ、SSPが少ないと思います。最適な広告フォーマットと指標が確立され、RTBで買える広告枠の流通量が増えてくるのが理想ですが、そこに向けて考えていく課題はいくつもありますね。

データ活用で広告主のマーケティング課題をどこまで解決できるか

高瀬: 広告主の方は、ほとんどが「オーディエンスに、最適なタイミングで最適なメッセージを出したい」というニーズを持っています。RTBのプログラマティックな仕組みがそのニーズに応えてきましたが、先ほども話に出たように、スマホの場合は「接触している時=リアルタイム性」と「場所=ロケーション」という特性があるので、その係数を活用できたらお客様の課題解決にさらに貢献できると思っているのですが、DMPを併用することでこうしたニーズに応えることは可能でしょうか。

佐藤:ハイパーローカルな位置情報、移動習慣の推定などが可能になれば付加価値を出すことは可能でしょうね。

宮本:位置情報を活用する場合は従来のバナーでなくプッシュ配信が有効ですが、広告のプッシュ配信はユーザーにストレスを与え逆効果になる場合もあるので、どう出すかが非常に重要ですよね。

高瀬:運用サイドから見ると、スマホのロケーション情報は魅力的なんですけど、具体的な実現方法は熟考する余地があるようですね。ところで両社ともデータ連携・活用ソリューションを積極的に展開されていらっしゃいますが、差し支えない範囲で、今後の戦略などをお聞かせ願えますか?

宮本:スケールアウトは、スマホのデータの精度と量、それに解析手法の多様さは定評があり、スマホのDMPとしては他社では難しいクオリティを提供できている自負があります。また、今後はスマホアプリ上でのDSP経由の配信量も増えてきますので、まずはスマホウェブ、アプリの壁を統合管理する環境を用意したいのと、先々にはPC等のクロスデバイスもみすえ、統合ID化を進めていくことでDSPがお客様の長期的なマーケティング施策に対してバリューを発揮できることを目標にしています。

高瀬:広告主の方、広告代理店の方などもお使いだと思うのですが、その活用具合はいかがでしょうか。使い倒していますか?

宮本:そうですね、お客様によってはDSPをアドネットワーク的に、掲載面や期間を絞った短期施策的に使われているのですが、それだとDSP・DMP合わせた良さが活かされないという懸念があります。最近は当社の方でもアドネットワークとDSPを切り分けた提案をすることで対応しています。

佐藤:フリークアウトは、データ解析事業者であるPreferred Infrastructure社と合弁でIntimate Mergerという専門会社を設立しました。ここではプライベートDMPの構築やデータ活用・解析の支援ソリューションを提供しています。アクティブな1億オーディエンスの外部データとお客様が保持する内部データを掛け合わせた蓄積・解析を続けており、圧倒的なボリュームと共に柔軟性ある解析機能を提供可能な点が特徴です。

高瀬:僕らもIntimate Mergerを利用しているのですが、アドホックでクラスタを作ってピンポイントにターゲティングし、メッセージングしたり、またペルソナ像の作成・拡張に使ったりと、かなり使い込んでいます。

佐藤:当社は「とにかくデータを増やしていけば、きっといいことがある」という信念の下、あらゆるデータとつないでいく方針でやってきました(笑)。運用広告支援というと、必然的にバナー広告への依存が大きくなりますが、実はお客様の課題はそこではないんですよね。もっと広く「マーケティング」として捉え、事業として健全な成長を促すために何が必要かを考えて、その中でどうすれば効果的な運用広告が可能かを策定する必要があります。DMPはそのためのもので、数か月や1年といった単位ではなく、長期に使い込んでいくソリューションなんです。実際お客様のデータ活用を見ると、僕らの想定とは違うけれども、その使い方に感心することも多いですよ。そういう意味では数年越しの長期的なお客様のマーケティングパートナーになることを目標に進めています。

プログラマティック・バイイングで成果を上げる!日々の“運用”の信頼できるパートナー

トレーディングデスク事業の専門企業 エスワンオーインタラクティブへのお問い合わせはこちら

広告主に負けない運用広告のプロフェッショナルを育成するには

高瀬:息の長いマーケティングパートナーになるために、僕らだけでなく、DSP事業者さん自身もお客様の立場に立って運用するケースもあるかと思いますが、そうしたトレーディングデスク系の人材育成に関してはどのように取り組んでいらっしゃいますか。

宮本:自分でやってみて初めてわかるというケースは多いですね。もともと当社スケールアウトは、エンジニアリング中心だったので、ダッシュボードも良くいえばプロ仕様、悪くいえば難しいという評価がありました。しかしここ3か月ほど、社内でじっくり運用することで、効果の出し方やほかの広告商材との差別化ポイントがかなりクリアになりました。スケールアウトDSPの特徴としては、トレーディング手法の多様さがあるのですが、広告代理店の方やお客様にできるだけレポーティングなど透明性を確保してコントローラブルな広告ツールとして使っていただくことで、効果が悪い場合もPDCAサイクルをまわすことができます。

高瀬:そうしたノウハウをどのように共有させていくのですか?

宮本:運用しながら機能改善を行って反映していく、または提案に組み入れるという感じです。ですので最近は、「難しいと思っていたけど、使ってみるととても良かった」という評価をいただくようになってきましたよ。ただ、中で運用するのは非常に負荷がかかるので、できれば外で運用できる人材が増えているのを期待しているんですが……、ますます増えつつある各種DSPの運用に、御社がどのように対応なさっているのか興味あります(笑)。

高瀬:月ベースで数十くらい登場していますから、確かにフォローは大変ですね。広告主さんもかなり勉強されていて、情報も早いので、トレーディングデスク専門業としてはそのペースに追随しないといけません。当社の場合、プラットフォーム別にオーナー制度を敷いて、基本的に1人1プラットフォームという体制で知識を集約・共有するようにしています。

宮本:ノウハウが一人に依存することを避けるわけですね。

高瀬:社内の情報共有は重視していて、相互レビューもしっかり行っています。将来的にはDSPプラットフォームもコモディティ化していくと思っているのでこうした課題は解消されると思いますが、現在は群雄割拠なので、お二人のように強みが明確になっているDSPに追随していきたいと思っています。

佐藤:うちの場合、運用ももちろんですが、どちらかというと、総合的なビジネスマンの育成が課題です。具体的には、「お客様の事業や成長ドライブを理解して、マーケティング施策を立て、その中でDSP/DMPの役割を設定してデータを収集、仮説立案できる」という人材ですね。運用のスキルは必要なのですが、やはりこの基本的な路線ありきで育成しないと、生産性は上がらないと思っています。

高瀬:僕らもトレーディング業務に関してはかっちりとしたカリキュラムを持っているのですが、マクロの視点に立った課題・ミッション設定するスキルの育成は試行錯誤の状態なんです。今度、フリークアウトさんの人材育成を参考にしたいので、いろいろ教えて下さい。

トレーディング業務に期待するのは「スマホに特化した運用手法の発見」

高瀬:最後に、トレーディング業務に期待することをお聞かせ下さい。

宮本:あくまで外から見ているイメージですが、運用パターンが定型化している感があります。もっと積極的に新しい運用手法を見出して、それを各社さんで共有されると、さらに市場が伸びると思います。

高瀬:そういう傾向はありますね。ダイレクトレスポンスなどは、だいたい手法が決まっています。

宮本:スマホアプリに対する効果的な運用などは、まだ誰も見出していないと思うので、大きな可能性がありますよね。そういうことを一緒にやっていきたいです。

高瀬:ありがとうございます。こちらが運用側として出した提案を実装していくという感じで進めたいですね。実際、今年下期はデバイスとしてスマホに注力していくことを宣言していて、社内でプロジェクトを立ち上げているんです。こうしたことで、諸々ご相談させていただくと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします! 佐藤さんはいかがですか?

佐藤:DSPだけでなく、使うテクノロジーにはさまざまなものがあるじゃないですか。僕らもプラットフォーム提供者ですが、いろいろなファンクションを統合するだけでなく、リサーチ会社と合体するなど、特定の課題解決に向けて複数事業者の知見をどのようにブリッジしていくかを考えています。高瀬さんには、 ぜひそうした役割を期待したいです。

高瀬:おっしゃるとおり、DSPのプランニングで運用するだけでは足りなくなっているのは事実です。多様なテクノロジー、知見を集約してメソドロジーを開発することもやっていきますが、それに凝り固まることなく、柔軟性のある対応をしていかないといけません。それと、広い視点に立てる人材育成が課題ですね。スマホへの対応を含め、お二人にはこれからも引き続きお知恵をお借りすることも多々あると思いますが、これからも応援していただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします!

プログラマティック・バイイングで成果を上げる!日々の“運用”の信頼できるパートナー

トレーディングデスク事業の専門企業 エスワンオーインタラクティブへのお問い合わせはこちら

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2014/08/26 17:56 https://markezine.jp/article/detail/20687