新聞社としてのネイティブ広告への課題
そして3人目のパネリストである日本経済新聞社 デジタルビジネス局 上席担当部長の種村貴史氏から「バズワード的に出てきたネイティブ広告だが、これは本当に新しいものなのか」と問題が提起された。
ネイティブ広告を語る際の2つのキーワードである、“コンテンツ”と“誘導枠”。“コンテンツ”の切り口では、タイアップ広告やスポンサードアドという名称で昔からネイティブ広告のようなものは存在しているのに、なぜ今になって急にネイティブ広告と呼ばれ、もてはやされ出したのか。そんな風に感じている人もいるだろう。それに対して、種村氏は「ネイティブ広告という言葉が出てきた理由を考えると、その背景にはデバイスの多様化がある」と指摘する。
「タイアップ広告は中身だけでなく、誘導枠の部分が非常に大きなポイントです。つまり、どうやってオーディエンスを連れてくるのかということです。検索キーワードを買うのか、もしくはバナー広告やテキスト広告を出稿するのか。
スマートフォンのような小さいディスプレイのデバイスでの誘導を考えると、タイムライン上の広告誘導枠は良い例ですよね。そこからネイティブという表現が出てきたと我々は解釈しています。ただ、我々は新聞社として、タイムラインに広告をそのまま同じ状態で載せることはできないので、そこをどう考えていくかが今後の課題です」(種村氏)
ネイティブ広告と既存の枠売り広告との違い
ここで、モデレータの今田氏から投げかけたれた「ブランドサイドから見て、これまでの枠売り広告とネイティブ広告で違う点はありますか?」という問いに、干場氏が答える。
「以前はテレビCMを打ちますと言えば、1種類のコンテンツを作れば済んでいましたよね。それがネイティブ広告というか、デジタル広告になってくると、それぞれのメディア、見ている人、見ているシーンによって、コンテンツも変える必要があります。昔は●●代の女性であればこれでいいじゃんみたいな文脈がありましたが、今はそうではなくなってきています。これはネイティブ広告だからこそできることであり、難しい違いだと認識しています」(干場氏)

さらに今田氏は、「メディアの新しい収益源として、ネイティブ広告についてどのような見解を持っていますか」と種村氏にたずねた。
「ネイティブ広告はコンテンツをつくらなくてはいけないので、その分コストもかかってきます。その意味では、かけたコストに見合う効果がなければいけない。広告主にお願いしたいのは、事前にKPIをある程度握り合っておくことですね。例えば日経であればこんなユーザー層・ターゲット層がいるので、こういったことを達成したい、そのためにコンテンツをどうつくっていくのか。そこをしっかりとあらかじめ決めておいてから、一緒に施策をやっていければ」(種村氏)
そして最後に、笹間氏から今後のネイティブ広告への期待が述べられた。「企業のオウンドメディア、ソーシャルメディア、キュレーションメディアなど、それぞれメディアに滞在している生活者のモードは、同じ一人の人でもそれぞれ異なっています。メディア側だけでなく、広告主側も各々のメディアで生活者がどんなモードで集まってきているのかを理解した上で、どのようなコンテンツを出すのか考えるべきです。プロモーションでユーザーをCVさせたいとしたら、最適な行動をオーディエンスに起こさせるメディアはどこか。そのような視点で広告を出していく必要があるでしょう。ネイティブ広告の使い勝手は未完成だが、ソリューションの一つの手法として、使い方次第で企業とユーザーのコミュニケーション活動における大きな武器になるのでは」(笹間氏)
