電通グループのCarat(カラ)が、本年3月に発表した2014年、15年の世界の広告費の成長率予測について、改定を行った。同社は年に2回(3月と9月)、全世界59地域から収集したデータを基に、世界の広告費の成長率予測を行っている。3月には前年実績の確定と当年予測の改定、および翌年の新規予測を行い、9月には3月に予測した数値の改定を実施している。
主なポイントは以下の通り
世界の広告費、2014年の成長率を0.2%上方修正
2014年の世界の広告費は、成長率予測を3月時の前年比4.8%増から5.0%増へと改定した。これは、ロシア・ソチでの冬季オリンピック・パラリンピック、ブラジルでのFIFAワールドカップ、米国での中間選挙などの大イベントによる寄与が前回調査の想定を上回ったため。特に成長率が顕著なのは、ラテンアメリカ12.1%増(3月時の予測12.8%増)で、アジアパシフィック地域も5.4%増(同5.6%増)と、成長率はわずかに下方修正したものの順調に成長すると予測されている。
2015年の世界の広告費は、経済情勢が世界的にポジティブな傾向にあることから、その成長率を3月時に予測した前年比5.0%増と据え置いている。
米国の広告費、リーマンショック以前の最高値を超えるか
北米は引き続き安定した成長が見込まれ、2014年は3月時予測の前年比4.3%増から4.9%増へ、2015年は3月時予測と同じ4.5%増を見込んでいる。経済が堅調で4.3%増から4.9%増と上方修正した米国の2014年の広告費は、リーマンショック以前の最高値である2007年の広告費を初めて超える見通し。
英仏で明暗わかれる
2012年、13年と英国を除きマイナス成長が続いた西ヨーロッパでも、2014年は前年比2.7%増とプラス成長へと転じ(3月時予測1.8%増)、その傾向は2015年も2.5%増と維持されると予測(3月時 2.1%増)。特に英国はデジタル広告費の2桁の増加が見込まれ、2014年は7.5%増と3月時5.0%増を上方修正している。一方フランスは、経済の低迷が続いており、テレビを始め、構成比率の高いプリントメディア広告費の落ち込みから、2014 年は 0.9%減と3月時0.8%増から下方修正した。
ロシアの広告費・成長率は下方修正
ロシアを含む中央および東ヨーロッパは、地政学的な不安定さから、3月に発表した2014年、15年の広告費を下方修正。ロシアの2014年の広告費の成長率は、3月時予測の前年比8.0%増から3.9%増へ、2015年も同7.0%増から5.0%増としている。
日本、4年連続で前年を上回るか
アジアパシフィックでは、オーストラリアが20年ぶりの緊縮財政の影響で消費が低迷しており、2014年は0.1%増と3月時の2.1%増から下方修正した。中国に関しては、不動産、飲料、食品セクターの前年比割れが見込まれ、2014年は7.6%増と3月時8.0%増からわずかに下方修正した。
アベノミクス効果や2020年のオリンピック・パラリンピックの開催決定により、日本の広告費の成長率は、2014年に前年比2.0%増(3月時予測1.7%増)、2015年には3月時予測と同様の1.7%増と予測。日本は4年連続で前年を上回る見通し。
ブラジル、小売・自動車の伸び低下
ブラジルは、最大セクターである小売や自動車の伸びが低く、2014年は9.4%増と3月時10.0%増からわずかに下方修正した。
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