SVBは永遠のβ版
編集部:来春には実店舗もオープンして、いよいよプロジェクトの全貌が見えますが、今後目指すところは何でしょうか?
吉野氏:来年完成と言いつつも、SVBは永遠のβ版と位置づけています。お店が出来上がっても、DRINXで完成品を売るようになっても、定期的にプロトタイプは出していきたいです。もしかしたら、完成品もお客様の声を聞いてブラッシュアップするかもしれません。
また、体験やコミュニティといったモノ以外のコトをいかに膨らましていけるのかを考えています。新たに設置される店舗は「ブルワリーパブ」。工場の横にレストランが併設しているのではなく、工場とレストランを混在させたものです。ビールを飲みに来たのに、製造所に来てしまったと思えるような空間になる予定です。そこに様々な仕掛けも用意して、飲んだり食べたりしながらモノづくりを感じられるように工夫しています。
そして、店舗がオープンしたら顔の見えるコミュニケーションをしながら、声に応じて変化してゆく。そこをSVBブランドは大事にしていきたいです。
丹羽氏:DRINXは自宅で飲んでもらう商品の販売がメインになっていますが、体験価値をより深めていきたいと思います。例えば、施設ではこんな体験できるよというアナウンスをして体験を深めたり、あるいはファン同士が交流してビールの奥深さを体験してもらったり。そして、意見を聞いて終わりではなく、それがずっと循環してゆく場づくりを、オンラインとオフラインの両方で目指したいです。
クラフトビールを造る気はない
編集部:最後にずばり聞きますが、このような取り組みは、昨今のクラフトビール流行に乗ってのことのようにも見えますが?
吉野氏:実は、クラフトビールやクラフトのブランドを造る気はないんです。SVBについてクラフトビールという表現をすることがありますが、分かりやすいから使用しているだけ。スタートはあくまで「ビール全体を面白くしたい。だから、多様なビールを造っていこう・未来のビールを造っていこう」という考えです。
一方で、ビールの多様性を広げていくという考え方では、クラフトビールと手を握れる部分はたくさんあると思います。いいコラボレーションをしていったり、キリンが様々なビールを出して、そこを入口にクラフトビールを飲んでみようかな、と思う人が増えれば日本のビール文化が豊かになる。そういうことはやっていきたいですね。
取材に際して、496を試飲してきました。濁りのない綺麗な黄金色で、口に含んだ瞬間に強いホップの香りがします。しかし、苦みより甘みを感じる非常に飲みやすい印象でした。醸造を担当する蒲生氏は“世界のどこにもないビール”を目指しているとのこと。その言葉通り、初めて飲むビールでした。ここからさらにブラッシュアップされた完成品は、どのようなものになるのでしょうか。
