リターゲティングを軸にした運用の限界
今回のテーマは、リターゲティングの限界をビッグデータによって解決する方法。商品購入や資料請求、申込みなどのアクションを促すいわゆる獲得系プロモーションでは、広告出稿を担当するマーケターの多くが、DSPのリターゲティング機能を利用した広告配信を行っている。何故ならリターゲティングには、自社のページにアクセスした=興味・関心が高いと考えられるユーザーに広告を配信できるため、CPAを低く抑えられるメリットがあるからだ。しかし、リターゲティングは広告配信対象が自社のページに訪問したことのあるユーザーに限られる。そのため、成約数を十分に獲得できないという限界がある。
したがって成約数を増やすためには、リターゲティングの配信対象以外のユーザーにリーチを拡げる必要がある。しかし、マーケターの勘と経験に頼って性別・年代等の属性情報でターゲティングをすると、実際に申込みを行うユーザーとの間に差異が生じる可能性がある。
仮にマーケターが、アクションを起こすコンバージョンユーザー像を完璧に理解していたとしても、それは単純な属性の掛け合わせで表現できるようなものではない。リアルなユーザー像に迫るには、生活パターン等も掛け合わせて考える必要がある。だが残念ながら現状のDSP単体の機能だけでは、このようなターゲティング配信は難しい。
効率よく新規ユーザーを取り込む「オーディエンス拡張」
マーケターの勘と経験を補い、ターゲティングすべきユーザーを的確に見つけ出してくれるのが、「オーディエンス拡張」だ。オーディエンス拡張は「Look-alike(ルックアライク:「似ている」という意味)」とも呼ばれ、Web上の行動ログから「購買や申込みなどのアクションを起こしたユーザーに似ている」ユーザーを抽出し、広告配信を行うことを指す。
ユーザーの傾向を発見
オーディエンス拡張ではユーザーのWeb上の行動ログから、統計学の知見を活用したロジックによってターゲティングすべきユーザーをセグメンテーションする。例えば、生命保険に加入しようと思うとき「思い立ったが吉日」とばかりに、目についた生命保険会社に即座に申し込むユーザーは少ない。その商品に対する口コミや他社商品との比較検討を行う場合が多いだろう。
つまり、生命保険会社がターゲティングをする際には、Web上の行動ログを持つDMPを活用して既に保険に加入したユーザーの加入直前のWeb上の行動を調べ、「どのようなページを見て情報収集しているのか」について傾向を見つけ出し、その傾向に近しい動きをしているユーザーに広告配信を行うことが最も効果的だと考えられる。
実際に、商品やサービスの購入時に事前に積極的に情報収集をする人は80%を超え、その情報源としてインターネットを使う人は96%になるという結果も出ている(参考:「購買行動におけるクチコミの影響」に関する調査)。生命保険に限らず、多くの商品で同じようにコンバージョンユーザー特有の傾向が見られるだろう。この傾向をとらえるのが、オーディエンス拡張だ。
運用の手間の省く
オーディエンス拡張には、ターゲティングすべきユーザーを見つけ出す手間を大幅に削減できるというメリットもある。人の手と目を使ってコンバージョンユーザーの特徴を浮き彫りにしようとすると、考えられる限りの切り口を挙げて、それがどの程度であればよいのか(例:「年齢」という切り口であれば、何歳以上何歳以下が良いのか)を検証しなくてはならない。これをすべてマンパワーで行うと膨大な時間がかかってしまう上に、必ず「切り口」に漏れが出る。漏れた切り口がコンバージョンユーザーを表す非常に重要な切り口であるかもしれない。
オーディエンス拡張はすべての「切り口」と「程度」を評価し、モデル化してDSPへの連携まで行うことで、マーケターの手間を省く。