「IC」シナリオの類型化
最後に、さらに具体的に、デジタル上でのコンバージョンを促していく「IC」の具体的なシナリオを類型化して説明します。「IC」の具体的なシナリオが定義できると、コンテンツの詳細や画面構成に落としていくことができるためです。
1)プロダクトプレースメント
「製品を配置したコンテンツを作る」という類型です。映画やドラマの中で製品をさりげなく置いておくという従来のマーケティング手法の派生バージョンといえるかもしれません。
「Inside Brazil」では、各国の代表者を選びブラジルで取材活動をしてもらいましたが、その取材活動の中で、ソニー製のカメラやスマホを使い取材してもらいました。もちろん取材内容自体がコンテンツなのですが、その取材をしている様子もコンテンツ化することによって、取材活動の中で製品を訴求しようとしたわけです。さらには、コンテンツ内に製品ページへのリンクを設けて製品に興味を持ったユーザーに対する次の選択肢を用意しました。
たとえば、メガネメーカーが、メガネをかけた人物を主人公とするミニドラマを動画で提供し、その解説テキストに製品ページのリンクをつける、といった方法がこの類型に当てはまります。

2)ニーズの醸成とソリューション提供
「コンテンツを通してニーズを醸成し、その解決策を用意する」という類型です。「Paint Stadium」においては、PS VITAのソフトを使ってサッカーをテーマにしたイラスト作品をアップできるという仕組みを取り入れました。アップされた作品を見た閲覧ユーザーが自分でもやってみたいと思い、その湧きあがったニーズを満たす方法として製品を発見する、というシナリオを定義しました。
さらなる工夫として、中間ポイントとしてWebサイト上でイラスト作品を作成できる機能を設け、さらにもっといろんな機能を使いたい人は、こんな製品がありますよ、というように段階を踏んでコンバージョンしてもらうようなシナリオを組んだのです。

たとえば、弁護士検索サイトにおいて、身近な法律Q&Aコンテンツを提供することで自分の法律ニーズを醸成し、そのニーズを満たす解決策として弁護士を紹介する、という方法も同じ類型に当てはまります。
3)プレミアムコンテンツの提供とユーザー情報獲得
「価値が高いコンテンツやアイテムの提供と引き換えにユーザー情報を獲得する」という型です。すでに説明した「History」が当てはまります。通常版の200本程度の動画だけではなく、価値の高いと思われるマラドーナやジダンのような有名選手のプレー動画を用意し、この動画が見たければ、ユーザー登録してね、と促す方法です。
これはBtoBのコンテンツマーケティングでは一般的な方法です。たとえば、製品の詳細パンフレットをダウンロードと引き換えに、ユーザー登録を促すような方法が当てはまります。
4)PRコンテンツとしての活用
これは「コンテンツのPR利用と集客」という類型です。FIFAワールドカップの取り組みでは「One Stadium Live」が当てはまります。どんなトピックが話題になっているか、どれくらいの人がどのチームや選手を応援しているといった利用データをインフォグラフィックにして、PRコンテンツとして活用していくという方法です。
ソーシャルメディアによるコンテンツ投稿やPRリリースによるデジタル露出からの遷移を生み出すという意味でICの中の類型として取り上げています。
Webサイトやアプリの利用データに価値がある場合や市場調査を行う場合には、それをコンテンツ化して、製品との連携を訴求していくということが考えられます。
ここまで、読んでいただいた読者には、デジタル上でのコンバージョンを促していく「IC」の具体的なシナリオがイメージできたと思います。コンテンツアイディアを含ませた後に、いかに企業や製品やサービスにつなげていくか、という作業なしに、意味のあるコンテンツ企画はできないので、このステップはとても重要あることをご理解いただけたらと思います。
これまでで、コンテンツのプランニングのアプローチを一通り説明してきましたので、最終回である次回は、コンテンツプランを実現していための体制や運用スキームなどについて説明していきます。