EC化率10%以上 海外の先進的なデジタルマーケティング事情
── スマホによりOne to Oneでコミュニケーションができるようになったとのことですが、具体的な事例として、どういった企業がスマホを活用してマーケティングをしているのでしょうか。
伊藤氏:例えば、英米のEC化率が10%以上のすべての百貨店でスマホのアプリを出しています。その中の一例として、アメリカの百貨店 メイシーズ(macy's)が最初にやったことは、クーポンやお得情報の配信です。
最近では店舗での購買もサポートしており、欲しいものの画像を入力して検索するとメイシーズのECサイトで購入できるというアプリも出しています。
また、2014年に最もエンゲージ度の高いアプリと評された高級百貨店 ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)では、EC機能やロイヤルティカードとの連携のほか、さらにアプリ経由で店頭の販売員とビデオ通話・Facetimeができます。
高級店ならではのショッピングのアドバイスが受けられる接客機能を取り入れており、販売員が直接上顧客に対して商品のオススメをするといったことも実現しています。
アプリの見た目や機能はもちろん変わってきますが、自社のお客さまが求めていることに対して一番適切な形で対応できるアプリを各社考えていますね。
── 一方で国内の事業者はどうなのでしょうか。
伊藤氏:現状ですと、残念ながら初期のメイシーズの事例レベルにすら達していない企業がほとんどです。スマホとショッピングとの親和性を意識して、クーポンや宣伝としてプッシュ通知を活用する企業がやっと出てきた状況です。
その中で、東急ハンズのアプリは、商品バーコードを読み取るとその商品をそのままスマホで購入できたり、商品情報がメモできるようになっており、国内企業のなかでは一歩進んでいる印象です。
多くの企業はなぜスマートフォンマーケティングに乗り遅れたのか
── なるほど。マーケティング×スマホ×アプリにおいて日本の企業が遅れている原因にはどういった理由があるのでしょうか。
伊藤氏:今各社が遅れている一番の理由は、別に障壁があったとかではなく、単純に「スマホの普及スピードがあまりにも早すぎた」と言ってしまってよいのではないかと思います。
特にこの1年、スマホからのWebサイト訪問数の伸びは異常だったようです。
ご相談いただく各社さまとお話するなかで、スマホからの流入率は2014年年初の3~4割だったところから年末には7割以上になってしまったと、ご担当者さまの驚きの声を聞いています。
この数字はユーザーの年代別にバラツキが大きいと言うのが私の仮説でしたが、明らかに高年齢層のユーザーが多い企業さまのWebサイトでも、もはや軒並み7割を超えているという認識です。
それくらい急激に、スマホが日常のデバイスとして普及したことがベースにあり、そこに遅れを取る形で昨年あたりからようやく各社のスマホ対応が始まったというのが現状になります。
では、どういうことが課題になっているかというと、非常に「当たり前のこと」ができていないということになるかと思います。
Webサイトのスマホ対応ができていないことはもちろん、もう少し別の観点から見ると、LINEを筆頭に、スマートニュースやGunosyといったキュレーションメディア、Rettyなどの食系アプリなど、スマホに最適化された新興プラットフォームに対して自社広告を打つというように、スマホになってよく見られるようになったメディアへの対策もされていない状況があります。