強みは総合インターネットグループならではの細やかさと柔軟さ
インターネット広告領域を牽引してきたGMO NIKKOが、プライベートDMPをリリースした。インターネット上に多種多用に蓄積されるビッグデータを的確に分析し、広告プランの最適化を実現するDMP(Data Management Platform)。今回提供される「GMOプライベートDMP」は、その名の通り、顧客データや購買情報、各種プロモーション結果など、自社保有のマーケティングデータを集約・活用できるプライベートDMPだ。
GMOインターネットグループでゼロベースから内製している同DMPは、ビッグデータを高速で処理するパフォーマンスを備えつつコストを抑え、運用段階には専門チームがコンサルティングサポートを行う点が特徴だという。自社で開発するに至った背景と、同DMPが提供する価値について橋口氏に聞いた。
「当社が広告マーケティングのプランニングやコンサルティングサービスを展開するなかで、クライアント様からの、リスティングやソーシャルなどの運用型広告に対する期待も大きくなっており、シェアが拡大していることを実感しています。一方で、DMPは2年ほど前から話題になっており、当社でも1年程前から、ツールベンダーが提供するプライベートDMPをクライアント様に広告と一緒に提案しています。
ですが、実際にプライベートDMPの提案をはじめてから、さまざまな課題が見えてきました。その一つが、自社に合ったカスタマイズが難しい点です。例えばプライベートDMPによっては、システムはベンダーが作っていても、サーバーは他社のサービスを使っていることがあります。するとどうしても、「ここからは対応の範囲外」という境界が出てきてしまいます。
そこで、「それなら自分たちで作ってしまおう」と考えたのです。GMOインターネットグループは高い開発力や、広告運用のノウハウがあります。さらにはグループ内で、サーバー構築・運用サービスも提供しています。そのため信頼できるサーバー環境のもと安全性を保ちながら、クライアント様の仕様に合わせたカスタマイズにも、柔軟な対応が可能です」(橋口氏)
目指したのは、マーケターが直接データに触れられるUI
既存のプライベートDMPについて、クライアントから寄せられる最も大きな共通課題が「使い方の難しさ」だという。
「SQLといったコードを打つまではいかなくても、セグメントを切るための設定が複雑など、いざ使おうとすると現場マーケターの手には負えない。専門のエンジニアや分析官が必要になってくる場合が意外と多いのです。そこで我々は、マーケターが直感的に操作できるようなインターフェイスにこだわり、PDCAを効率良く回して、より早く結果を出せるようにしました」(橋口氏)
「例えば広告を運用する際に、最初に立てた仮説が正解で完璧な結果が出る、ということはほとんどありません。セグメントを変えてみよう、期間をのばしてみよう、購買頻度を変えてみよう、単価を変えてみようなど何度もトライ&エラーをする必要があります。現場がプライベートDMPを簡単に操作できることで、そのリトライが安易になる。これが我々のツールが提供する一番大きな価値だと考えています。
具体的には、当社のプライベートDMPならばセグメントを作成する際の条件設定も、ドラッグ&ドロップで視覚的に操作が可能です。さらに、設定した条件でセグメントした場合のユーザー数も、すぐに表示できます。これまでは、マーケターがツールの運用担当者や提供企業にセグメント化を依頼して、その結果を見て、広告を打つセグメントを判断する、というフローも珍しくありませんでした。非常に手間も時間もかかっていたわけです。
当社のプライベートDMPはマーケター自身がDMPを操作して、数字を見ながら条件を変えてリトライできる。それだけでも作業時間をかなり短縮できます。実際に当社グループ内では、このプライベートDMP導入でPDCAサイクルがどんどん速くなっています。
また我々は広告会社ですので、広告をはじめとするWebコミュニケーション施策に最新のデータをすぐに反映できるかといった、リアルタイム性を活かした連携を大切にしました。広告会社目線が入ることで、運用担当者レベルでの使いやすさにつながると考えています」(橋口氏)
導入して終わりではない、データ活用の要は戦略立案
GMO NIKKOは1992年の創業から広告事業を展開し、10年以上インターネット領域での広告マーケティングサービスを提供してきた。当然ながら、運用型広告のコンサルティングにおいても、業界を牽引しノウハウを蓄積してきている。同社が最も得意とする、「コンサルティング」のノウハウも活かしていくという。
「プライベートDMPでターゲットを明確にしたら、次は適切な訴求方法を考える必要があります。そこに我々のノウハウを提供することで、さらにデータ活用を進化させていけると考えています。
プライベートDMPはツールであり、重要なことは、そこで得たデータをどう活用するかです。しかし現在、『プライベートDMPを入れてみたものの』という状態の企業も少なくありません。ツールを導入したあとの、効果的な戦略立案ができていないのです。その点、我々はプライベートDMPのみの提供はご案内していません。プライベートDMPを活用したWebマーケティングの最適化・最大化を目指し、広告運用と共に提案しているのです」(橋口氏)
ゆっくりと着実に、広告効果の高止まりを打破
プライベートDMPの理想的な運用は、予算の一部分を使って段階的に試していく方法だという。改善が見られたら、徐々に予算を寄せていき、全体を最適化していく。当然ながら、プライベートDMP導入直後に劇的な広告効果の向上は期待できない。しかし、広告を運用するなかで必ずぶつかる“効果の停滞”を打破する一手として、非常に有効だと橋口氏は考える。
「広告運用を続けていると、どうしてもある程度のところで効果が高止まりしてしまいます。現場のマーケターにとって、その高止まりしたところから、たとえ0.数パーセントでも効果を上げることは非常に大変です。そこでプライベートDMPが活躍するというわけです。データを活用することで結果が下がることはありません。導入すれば必ずプラスになりますから」(橋口氏)
また、運用や最適化というと、ユーザーをどれだけ細かく分けて効果を出すかなど、複雑で難しいもののように捉えられがちだ。しかし橋口氏は、まずはシンプルに大枠でとらえて試すことが大切だと語る。
「例えば広告のクリエイティブにしても、購入している人/購入していない人/たまに購入する人、というたった3軸で訴求を分けるだけでも、広告効果は変わってきます。複雑に何十個もセグメントするのではなくて、まず2分の1、次は3分の1、4分の1……と進めていくと少しずつ改善していく。この積み重ねが、プライベートDMPの起点です」(橋口氏)
広告のROI最大化はスタートライン、プライベートDMPが持つ可能性
企業の持っている顧客データ資産は、広告・宣伝部門だけが使うべきものではない。その点、プライベートDMPでデータを解析することで、メニューやマーチャンダイジングを含めたサービス全体、全てのマーケティングに活用しやすくなる。そのため、組織間、部署間の壁を超えて、企業全体がプライベートDMPをどう武器にするか考えていくことがポイントだ。
「当社ではプライベートDMP活用のフェーズとして、まず広告のROIを最大化。次にロイヤルユーザーの育成、そして離れてしまったユーザーのリエンゲージメントのための広告、さらに全体のサービス改善やコンテンツマーケティングなどへの活用にもつなげていこうと考えています。今はファーストフェーズとして、広告効果に力点を置いてスタートしています。今後はCRMの領域までサービスを展開する予定です」(橋口氏)
価格や使いやすさで、プライベートDMP活用のハードルを低く
橋口氏は、企業規模を問わないデータ活用の実現に意欲を見せる。
「プライベートDMPを活用しているのは、ほとんどが大手企業です。つまり、まだまだ市場ではハードルが高い商品であると考えられています。我々は、価格帯やUIの使いやすさでそのハードルを下げて、企業規模に関係なく広く普及させたいと考えています。データはあるけど活用はできていない、という企業もまだまだ多い。特に商品点数やサービス内容が多い場合は、運用型広告のチューニングも大変ですし、データの活用も複雑だと思います。そのような企業のかたには、GMOプライベートDMPをお試しいただきたいですね」(橋口氏)