バスキュールとパーティーが始めた学校、BAPA
BAPAという学校をご存知ですか?「Both Art and Programming Academy」略してBAPA。その名の通り、デザインとプログラミングの両面からクリエイティブを学ぶ場として、2014年よりスタート。今年で2期目を迎えています。
インタラクティブ・クリエイティブ・カンパニー「バスキュール」とクリエイティブラボ「PARTY」が主催し、世界中で活躍するクリエイターが講師を努める点も注目を集めるBAPA。今回は、BAPAの校長を務めるバスキュールの朴正義氏に取り組みを始めた背景、クリエイティブの現場でこれから求められる視点について伺いました。
Webがオワコンになるかも、という危機感
――BAPAを始めた狙いや問題意識は何でしょうか?
朴:BAPAはバスキュールだけでなく、PARTYさんや講師を引き受けていただいた他のクリエイターさん、そして生徒の皆さんと作っているものです。ですから、ここでのお話は、僕個人にフォーカスを当てた場合、という前提が入りますけれど、そもそもはバスキュールという会社の創立までさかのぼります。
バスキュールは2000年にマスメディアに対抗する「カウンター」として立ち上げました。2000年はネットが一般に普及する最初期の段階。現在に比べると、ブラウザも開発ツールもネット環境も整っていない頃です。でも、当時から「ネットがコミュニケーションの中心になるのは間違いないという思いがあり、そのテクノロジーの進化にクリエイティブを練り込んでいければ、従来のマスメディアにインパクトを与えられる全く新しいモノがつくれるのでは」ないかと考えてました。その頃から、新しいテクノロジーにクリエイティブを組み合わせるという志向がある。
例えば、1970年代後半から80年代にかけて、コンピューターゲームという、完全に新しいコンテンツのフォーマットがテクノロジーと共に生まれた。当時、僕は小学生だったけれど、その頃の興奮や感動は今も残っています。そして、誕生から30年程経っているのに、マリオやドラクエに対して、制作者であれば「ものすごいクリエイティブだな。もし次回作に関われるチャンスがあるなら関わりたい」と思えますよね。そんな力のあるコンテンツを、PCのブラウザ上でも生み出せるのではないかと思っていたんです。
実際にバスキュールのクリエイティブは、Flashベースで作動するマルチユーザーコンテンツプラットフォームのリリースをきっかけに、各方面から評価をしていただけました。けれど、2007年頃にはすでにPCブラウザ上のクリエイティブに危機意識を持つようになったんです。業界的に見れば、ようやくネット広告が盛り上がり始めた頃です。ですが、「マス云々の前に、PCがオワコン※になっちゃうんじゃないか?」と。
※オワコン:「終わったコンテンツ」の略称。一時は人気があり盛栄を見せていたものの、一般ユーザーに飽きられたコンテンツを指す。インターネットスラング。
というのも、PCよりガラケーからのアクセスが多くなっていた。例えば、予算が100あったら、90でPC用のコンテンツを作って、余ったお金でモバイルに対応するのが当時の予算配分でした。それなのに、モバイルのアクセスの方が多いのです。わざわざPCを開いて、ネットを見るというかたちには頭打ち感を持ったわけです。目先の売上でいえばWebは伸び盛りだったんですが、モバイルに乗り出すのは今だ、と。