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未来を「つくる」天才を育てる学校“BAPA”に迫る

「BAPAはチームで全力をかけてつくりたいクリエイティブを目指す場」卒業生が語るBAPAでの取り組み

 「Both Art and Programming Academy」略してBAPA。「アートとプログラミングの両方ができる天才」を育てることを目標に掲げスタートした学校、BAPAの取り組みに迫る本連載。今回は、BAPA一期生の高橋優氏と武田誠也氏に、BAPAへ参加した背景や、制作作品について話を伺いました。

環境を変えたい、プログラミングを学びたい

 バスキュールとPARTYが主催するクリエイターのための学校「Both Art and Programming Academy」略してBAPA。これまで講師の視点でBAPのビジョンを紹介しました。今回はBAPA一期生にフォーカスを当て、BAPAで行なったことや自身の変化について伺いました。

今回お話を伺った株式会社電通 アートディレクター/コミュニケーションデザイナー 高橋優氏(左)、株式会社バスキュール エンジニア 武田誠也氏
今回お話を伺った
株式会社電通 アートディレクター/コミュニケーションデザイナー 高橋優氏(左)、
株式会社バスキュール エンジニア 武田誠也氏(右)

――お二人は現在どのような立場で制作、クリエイティブに関わっているのでしょうか?

高橋氏:マス広告から、県のPRや日本を海外へ発信するプロジェクト、デパートのオープン施策やアーティストと組み商品開発等を行なっています。企画提案からロゴやグラフィックや衣装やパッケージやCMやデジタルなど、アウトプットはさまざまです。

武田氏:僕はBAPAを卒業後にバスキュールへ転職しました。現在はエンジニアとして、プログラミングを通して、インラクティブコンテンツと呼ばれるものを実際に制作しています。

 参加したプロジェクトとしては、日本テレビの『SENSORS』という番組内の「BODA-RIDE」というコンテンツがあります。タレントやモデル、キャラクターの三次元の立体データとモーションデータを取得して、その動きのある三次元のコースの上でレースができるというものです。このコンテンツはニューヨークADCでアートディレクションのゴールドキューブに選ばれました。

――BAPAに参加しようと思ったきっかけを教えてください

武田氏:さまざまな理由があります。僕は当時、ウェブエンジニアとして別の企業に勤めていました。ですが元々広告クリエイティブに興味を持っていて、ずっとバスキュールの情報をチェックしていたり、PARTYの中村洋基さんたちが講師をする講座にも参加していました。そのため、この2社が一緒に学校をすると聞いて、純粋に面白そうだと感じました。

 クリエイターとの出会いへの期待感もありましたね。前職ではデザインでエッジの効いたものは好まれない傾向がありました。BAPAならば身を置いている環境とは異なる交流ができ、制作活動の相方といえる人との出会いがあるかもしれない、自分の環境を変えられるかもしれないと考えました。相当ギラギラしていたと思います(笑)

高橋氏:私の場合は、「こんなのあったらいいな」と普段妄想する事が好きなのですが、今の自分の技量ではそれが達成できないという無念さからでした。

 例えば、以前世界コンペのプリント部門に日本代表として出場したことがあります。その時には紙ペラ一枚で直接的に人の役に立つものをつくる、ということをしたいと考えていました。ただ、媒体の特性的にできるものもあれば難しいものもありました。その際に、ものづくりを通して直接的にアプローチして、人の心の深度を深めたいと考えていることに改めて気づきました。そのためには、インタラクションの力が必要であることを痛感したというのが、根底にあったと思います。

 このような経験が普段企画を立てる中でも積み重なっていって、プログラミングを学べる学校を探していたところBAPAの情報を見つけたので応募しました。

――BAPAの参加希望者には「卵を描き、その卵をうごかしてください」という制作課題が与えられていましたが、お二人はどのような作品を提出したのですか?

武田氏:僕は物理的に卵を動かすというよりも、変化する卵を描きました。それが「IRODORI」というカメラアプリです。カメラの色彩情報を卵にマッピングし、風景の雰囲気だけを抽象化してコレクションするというものです。写す風景によって、ステンドグラスのようなモザイク調の柄になったり、ローポリな可愛い卵に変化させることができます。このアプリを作った背景には、Instagramの流行があります。現場を詳細に写すよりも、その場の雰囲気や人の気分を投影したい人が多いのかなと考えました。そこから着想を得たんです。

髙橋氏:私は「HAPPY EMPTY」という、卵を主人公にした、ミュージックビデオ風の動画をつくりました。卵がレコーディングしにきているという設定で、ステージ上では次第に卵の殻がバリバリに割れたり、分割されたりと空っぽになっていくことのおかしみを描いてます。TENORI-ON※を使い、TAMAGOのタイポつくって映像に織り交ぜていきました。きっと見た人は目が点になるのだろうなと思いながらもつくりました(笑)

※TENORI-ON(テノリオン):YAMAHAとメディアアーティスト岩井俊雄氏が共同開発した電子楽器。縦横16×16個のLEDスイッチからなるインターフェイスを持ち、ボタンを押すことで音色が出る。

――同じ課題でも、制作の方向性やアプローチに違いがありますね。それはBAPAでの作品制作でも同様かと思います。お二人はどのような作品をつくったのですか?

高橋氏:私たちは「MASS RHYTHM」という、スクランブル交差点を渡る人たちをリアルタイムで音とグラフィックに変換するインスタレーションを制作しました。

 

 青信号で人が歩き出すとメロディーが奏でられて赤信号では静まるというように、信号の周期が音楽のフレームとなっていって、それが繰り返されて永遠に終わらない音楽となります。ビジュアライゼーションでは、赤い服を着た人は赤いカラーキューブとして表示され、タイムラインにどんどん蓄積されていきます。多様性を持つひとり一人を個人として浮かび上がらせたグラフィックにしました。

 作品の狙いは、誰もが知っているスクランブル交差点を使って、世界一ストレスフルな空間を心地よい空間へと価値を変換させることです。普段スクランブル交差点については、あまり考えたこともないような無意識な場所というか、むしろ、雑多で嫌いな場所でもあったのですが、だからこそ払拭したいというネガティブなところが作品の発想につながっています。

 作品名に使っている「MASS」は集団という意味ですが、マスコミにも使われているように「情報の即時伝達性」といった狭義もあるのも良いと思いました。「RHYTHM」は信号の周期性や、個人個人の生活のリズムのような意味にも通ずるものがある点が良いと思っています。当初は「渋谷」や「スクランブル交差点」というワードも頭をよぎったのですが、作品を渋谷だけでなく世界のあらゆる場所でも展開できるフレームになるとといいなと考え、使いませんでした。

武田氏:僕たちは、「Shibuya Sweet Lesson」というコンテンツをつくりました。これは、女の子とデジタル空間の中でデートができるコンテンツです。シチュエーションに合わせたセリフを、プレーヤーがマイクに向かって発声すると音声が採点されて、ゲームが展開していくというものです。ちょっと恥ずかしいセリフを言わせて、しかもその声が大音量で再生される仕掛けを施しています。かわいいけど恥ずかしい、という気持ちの創出を狙いました。

 

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/07/14 12:00 https://markezine.jp/article/detail/22682

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