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消費者行動が変化した今、「AISAS」から「DUAL AISAS」へのモデルチェンジが起きている


「DUAL AISAS」モデルの概要

 私が提唱する「DUAL AISAS」を簡単に説明しよう。「I」は、Interestで、「興味」「関心」「共感」。タテのInterestにはなかった「共感」を意図的に含めている。「S」は、Shareで、FacebookやTwitterなどSNSなどのシェア。「A」は、Acceptで、「受容」「共鳴」。Shareされた情報を他の人(第三者)が受け入れて(Accept)、さらに、Shareしてくれる。「S」は、Spreadで、「拡散」「展開」「流布」。Acceptで第三者が受けれ入れて、さらに、Shareするという連鎖が生まれることで、「拡散」(Spread)という現象につながる。

 ヨコに「I」「S」「A」「S」と並べて、この一連の流れが、機能不全を起こしたAttentionを補う役割を果たす。拡散することで、リーチが拡がっていく。これがうまくいけば、「Attention, Please!」と一方的に大声で呼びかけるマス広告的手法が機能しなくても、なんとかなるかもしれない。ターゲットの人々のInterestに沿った情報提供に成功すれば、リーチが拡がっていくからだ。

タテとヨコのInterestの違い

 さて、タテにもInterestがあるし、ヨコにもInterestがあるのだが、これがとても重要で注意が必要である。もともとの秋山隆平氏が提唱した「AISAS」モデルにあるタテのInterestと、私が提唱する「DUAL AISAS」モデルのヨコのInterestは異なる性質を持っている

 じつは、ここが明確に異なるという点が非常に重要だったのだが、最初は自分自身では気づいていなかった。あるとき、競合提案に向けて、総合広告代理店の女性クリエイターと打ち合わせをしていた。「DUAL AISAS」モデルの図を書いて、タテのInterestの位置で使うクリエイティブの訴求イメージを私なりに説明し、そのあと、ヨコのInterestの位置で使うクリエイティブはこんな感じで作って欲しいと伝えた。すると、彼女が言ったのだ。「有園さん、このタテのInterestとヨコのInterestって、本質的に違うよね?Interestって書くと同じだけど」と。

 たしかに、そうだ。彼女の言う通りだと思った。彼女がいうには、タテのInterestは、購入に向かっていくInterest。興味をもって、Searchして、そして、Actionに向かっていく。では、ヨコのInterestは?こっちは、拡散に向かっていくInterest。興味をもって、すぐにShareして、そして第三者がAcceptして、最後は、Spreadに向かっていく。彼女の指摘どおり、タテとヨコのInterestは本質的に違うのだ。

タテのInterest:利益・利害を推し量っていく流れを生む

 そこで私は、タテInterestを「Conversion-Driving Interest」と名付けることにした。購入などのコンバージョンというActionに向かっていく際、その興味・関心は、購入して本当に自分にとって利益があるか?、お得か?という利害を推し量る気持ちにもつながる。Interestという英単語を辞書でひくと、「興味、関心」という意味以外に「利益、利害」などの意味もある。

 まさに、このタテのConversion-Driving Interestは、興味・関心をもってコンバージョンした場合の利益・利害を推し量っていく流れを生むものだと考えた。コンバージョンへと気持ちを駆動しつつ、購入したらお得かな?という感じ。興味・関心・利益のInterestだ。

ヨコのIntarest:第三者の共感を求めることにつながる

 それに対して、ヨコInterestは、「Buzz-Generating Interest」と名付けた。「これいいよね!」と思ってShare(共有する)気持ちは、「あなたもいいと思うでしょう?」と同じ感情を第三者に共有して欲しいってことだと思う。なので、興味・関心だけではなくて、感情を共有する、つまり、第三者の共感を求めることにつながるInterestだ。これが、Buzz-Generating Interestといっていい。ヨコのInterestの最初の説明で、タテのInterestにはなかった「共感」を意図的に含めたと書いたのは、このような理由からだ。なので、興味・関心・共感のInterestだ。

 アメリカでは新興メディアの『BuzzFeed』などが急激な勢いで成長し、既存メディアを脅かす存在になっている。つまり、Buzz-Generatingを意図的におこなうこともある程度可能だし、その重要性も増しているということだ。「Attention, Please!」型のマス広告的リーチ手法のパワーが弱くなっている状況では、このヨコのBuzz-Generating Interestを戦略的に狙ってリーチを獲得していくマーケティングが必要になってきていると思う。

テレビCMなどのマス広告に見る、「DUAL AISAS」モデル

 「Conversion-Driving Interest」と「Buzz-Generating Interest」と書くと、コンバージョンやバズという言葉のせいで、私がインターネットマーケティングの範囲内で、この「DUAL AISAS」モデルを考えていると勘違いされることがあるが、そうではない。

 たとえば、イオンのお客さま感謝デー「20日 30日 5% OFF」のテレビCMなどは、Conversion-Driving Interestを喚起すると思う。「お、ちょっと安いんだったら興味あるな。20日には買い物に行ってみるか」みたいに感じる。そして、Searchしてイオンのサイトに訪問し、お買い得情報を下調べしておく。そういう購買につながる興味・関心を引き起こす原動力になるテレビCMだと思う。

 ちょっと古いが私の好きなCMで、松本幸四郎と市川染五郎が親子共演したキリンビールのCMがある。これなどは、Buzz-Generating Interestタイプだ。当時、インターネットの書き込みなどで、「ともて共感した。息子とビールを飲みたくなった」などのコメントが多くあったと記憶している。

 「このCMいいね!」と興味をもって共感し、それをキッカケにShare(共有)され、Spread(拡散)していった。テレビCMでも、強引にAttentionを取りに行くCMばかりではなく、共感を生み出しSpread(拡散)のキッカケを作ることができるのだ。

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「Accept」で第三者を取り込み、情報伝播のダイナミズムを生む

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/06/01 10:57 https://markezine.jp/article/detail/22368

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