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大元隆志のマーケター訪問記

「テレビを舞台に、1億人がインタラクティブにコミュニケーションを行う世界を創る」HAROiDの挑戦

日テレとバスキュールが手を組んだ理由

――それはなぜでしょうか。放送受信料から成るNHKならネットに積極的になれないというのは理解できますが、民放であればインターネット上で提供するサービスについては少なくとも法的な観点での制約はないので、可能なのでは?

安藤:確かにそうですが、テレビ局がやるとなると例えインターネット上のサービスでも世間から批判を受けることもありますので、そういう点も考慮しないといけないという文化があります。だから「できなくは無いけれど、やりづらい」ことは、日本テレビとして動くと出てきてしまうんですよね。

――しかし、結局のところ、HAROiDは日本テレビも出資する関連会社なので、HAROiDが無茶をすると、日本テレビ何やってるんだということになるんじゃないでしょうか。

安藤:そういうこと言わないで欲しいなぁ(笑)。確かに日本テレビ100%出資の子会社なら、そうだと思いますが、ウェブ業界で長年やってこられたバスキュールさんとの合弁ということもあって、HAROiDの会社のカラーはバスキュール寄りです。立ち位置はインターネット企業であり、僕達はテレビ局ではないという気持ちでやっていきたいと思っていますね。なら、「安藤、日本テレビ退職して独立しろよ」ってことにもなるかもしれませんが、今の形だからこそ僕らはテレビとインターネットの両方の仕組みを理解している企業という強みを活かせると考えています。

――なるほど。では、なぜパートナとしてバスキュールさんを選んだのですか?

安藤:バスキュールさんは、ひょっとするとテレビ局のライバルなのではと、思っていました。テレビ局の広告主になるような企業に対して、インターネットで大きなPRを仕掛けていたりする。テレビ局ってテレビというリーチ力があった上でのPRでしょ。バスキュールさんはそのリーチ力の基盤がないのにネットで大きな功績を出すわけですよ。それは私たちにとっては脅威でしたね。

――脅威と感じられるほど、広告主側の変化を感じていたのですか。

安藤:そうですね、以前は「ネットなんて」という空気もあったと思いますが、最近では広告主さん側のネットの活用方法や、お金の使い方も変化していると感じます。もちろん、バスキュールさん以外にもネットプロモーションを得意としている企業はありますが、バスキュールさんは、一番テレビに近い位置にいたと感じていました。ネットに軸足を起きながら、テレビの使い方を知っている。そういうのを一番強く感じるのがバスキュールさんでしたね。

――テレビ局の脅威ですか。その言葉を受けて朴さんはどう思われますか。

朴:バスキュールはいわば「アンチテレビ」で始まった会社だったので、面白いですね(笑)。テレビって最大公約数的なところがあるので表現に規制がかかるし、何よりテレビ局の関係者しかコンテンツを作れない、そういう世界にカウンターをあてるように、2000年にバスキュールを創業しました。でも、2000年当時のウェブクリエイティブの実態は、テレビどころではない制約がありました。ファイルサイズが大きいものは受けつけられないのです。1kバイト単位で画像調整していて、今回のバナーは40kも使えるぞ!と喜んでいたくらいです(笑)。音の出るページをつくっただけでリッチコンテンツだと言われるくらいで、ウェブでHD映像を見るのが普通になる時代なんて、イメージできてなかった気がします。

 それでも、ブロードバンドが普及してくれたおかげで、それまで悪だとされていたFlashでのコンテンツづくりが市民権を得て、ウェブの中だけの世界でも多様なものづくりができるようになったんです。今思うと2007年から2009年くらいまでがウェブクリエイティブのピークだったように思います。でも、そこを超えると一気にPCブラウザのクリエイティブに下り坂がやってきた。PCからスマートフォン、ブラウザからアプリへの急速なシフトが起きてきたのです。

安藤:若者のテレビ離れより先に、PCブラウザ離れが起きたんですよね。

朴:より正確にはPC離れというか、スマートフォンシフト、ソーシャルシフトですね。スマートフォンの普及と同時に、TwitterやFacebookなど、ソーシャルの波も一気に押し寄せてきて、人々のネット利用スタイルが変わってしまいました。それまで、PCブラウザ上で作動する、Flashを駆使したスペシャルサイトを花形仕事と考えていたウェブクリエイターたちにとって、スマートフォンサイトやアプリに対応しろというのは、かなりストレスフルなスキルシフトだったと思います。

 でも、コンピュータ=PCだけではない時代に突入したことをいち早く実感できたことはよかったのかもしれません。今で言うIoT化のインパクトを世間より早く身近に感じたんです。これは、ヤバいって。自分たちがどうやって飯を食べて行くか、真剣に考えないと、と。そう考えた時に、僕らの価値は、同業他社がそのリスクの大きさから躊躇してしまうような、たくさんの人を同時にインタラクティブ体験に巻き込む施策に喜んでチャレンジするところにあると思ったんですね。IoT時代にそれを進化させられるがところがどこかって考えると、テレビだった。

 大元さんにも出てもらったWOWOWの金曜カーソルとか、番組放送中にバスキュールのスタッフもシステム運用でスタジオに入ってましたから、直接担当していないスタッフもスタジオに連れて行って「どの家にもあるテレビにこそ、未踏のクリエイティブが眠っている」って社内を煽ったりしていましたね。

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HAROiDが描く、テレビの未来

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この記事の著者

大元 隆志(オオモト タカシ)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーションビジネス推進部 エキスパートエンジニア
国士舘大学 経営学部 非常勤講師

通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。現在はCASBソリューションのセールス開発・プリセールスを担当する一方で、国士舘大学 経営学部にて学生向けに企業におけるクラウド、モバイル利活用について講座を担当する。最新のIT動向や技術動向分析が高く評価され、ヤフーニュース、IT Leaders、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多くの記事を執筆。所...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/06/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22652

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