既存顧客のデータを使って、潜在層を顧客に変える
リピーターを増やしLTVを向上させるには、デジタルマーケティング領域でどのような「おもてなし」が必要なのか。メーカー、ECサイト事業者、ベンダー、コンサルタントなど、様々な立場の有識者とSprocketの深田浩嗣氏が対談し探っていく本連載。今回の対談相手はデジタルインテリジェンスの横山隆治氏。「現在のデジタルマーケティングの課題とこれから」をテーマにディスカッションが展開された。
深田:業界が抱える全体的な課題、それに対するマーケティングの可能性などについてお話したいと思います。
横山:現在、マーケティング領域における大きなテーマの1つは、テレビなどのマス領域とネット領域、そしてリアルの領域をどうつなぐかということです。今、マス広告メディアとして機能するものはテレビだけかと思います。
テレビが抱える課題はセグメントごとに最適化できないので、ターゲットごとに強く刺さるコミュニケーションができないことです。一方、ネットは一度アクセスしたら、とことん追いかけ回される。
深田:マスは広すぎ、ネットは細かすぎるということでしょうか?
横山:そうです。リアルとネットの間を埋められていない。CRMで顧客化した人たちのデータを、どうやってマス領域と結びつけていくかが重要になってくる。
DMP(Data Management Platform)は、CRMの様々なデータを管理できるようになった。CRMで囲い込んだ人をおもてなしして、その反応パターンを潜在顧客とのコミュニケーションにも拡張できれば、新しいセグメントにマッチするコミュニケーションができます。マスが到達できる範囲とCRMの間を埋められるわけです。
深田:既存顧客の反応を潜在顧客とのコミュニケーションに活用するということですね。
テレビがデータを収集し、スマホで情報を補完する
深田:マスは1千万、CRMは10万と圧倒的にリーチできる数字に差がありますよね。この間にいる人たちにはどうアプローチできるでしょうか?
横山:実は、すでに1200万台近くのテレビはオンラインでつながっていて、TV端末ごとにIDをふることができる。技術的には各テレビが映している番組がわかったり、テレビがCMを何回受信しているかもわかる。CMを視聴した経験があるか、何回CMを視聴したかといった、視聴者の状況に応じたコミュニケーションにつなげていくことができます
例えば米国では、テレビをIPアドレスで判別し、同一IPアドレスでつながる端末を識別して広告を配信するということも行われています。スマートフォンが外に行っても紐付けて追跡できるので、テレビ接触に応じたメッセージを送ることができるというわけです。
深田:それはすごい。テレビの方から、デジタルの間を埋めていくということも可能なのですね。