中間指数を最適化すれば目的を達成できる

深田:私の会社でもSprocketというリテンションマーケティングオートメーションツールを提供しているのですが、ブランディングの観点も加味して、CRMにはテレビとの接触経験なども反映する必要があると感じます。
横山:施策を評価するときは、売上など最終的なゴールだけを見るのではなく中間指標を設定するといいでしょう。例えば以前、ある企業のサービスサイトのPVと実店舗への送客数の相関を調査したことがあります。PVが増えると、きちんと送客数が増える結果がでました。ここから、中間指標であるPVを最大化するための施策が必要だとわかります。
今の時代は広告のGRPと売上だけでは相関が見えにくいですが、PVという中間指数を用意して、そこを上げるように最適化すればいいわけです。つまり、中間指数が最後の目的変数と相関すれば、最適化しやすいのです。
深田:中間指標をKPIにして施策をまわしていくということですね。ですが、数値を見て次のシナリオに落としこめる人は少ないのではないでしょうか。
横山:データドリブンなマーケティングの世界では、データを読めるデータサイエンティストが必要です。一方で、セグメント化された人達に最適化したコンテキストでシナリオ策定するには、マーケティングのセンスが必要です。この2つの視点をいかにかけ合わせられるかがカギになるかと思います。
現実的な方法は、ツールを活用しながら2つのスキルの練度を上げることかもしれません。例えば、Sprocketはあらかじめ用意された施策を試して、改善してという流れが作れるので、施策設計に慣れていない人でも利用が可能ですよね。
深田:ツール活用という視点では、将来的にシナリオ設計は自動化できると思いますか。
横山:いずれはできるでしょう。しかし、今の段階では人間の勘所が必要ですね。試し打ちで100回外すのではなく、2割くらい当てる人がいないと先に進めないし、経験値も溜まらない。
最適なタイミングで1 to 1マーケティングが実現できる時代に

深田:マーケティング活動では、クーポンや懸賞などの金銭的インセンティブを提供する施策があります。ですが、このような方法はフックにはなっても、濃いファンの育成にはつながらないと考えています。ですから、この風潮を変えていきたいと思っています。この点はどうお考えですか?
横山:クーポンも消費者のタイミングとコンテキストに合えば有効だと思っています。インセンティブには、金銭的なものと心理的なものがあります。同じ人でも金銭的なものが効くときと、心理的なものが効くときがあります。その見極めを行えばいいのです。
ビッグデータで消費者の反応を見れば、兆しがわかり、その人のベストなタイミングでコミュニケーションすることができる。みんなに一斉ではなく、個別の1to1マーケティングがいよいよ技術的にも実現できるようになった。タイミングを合わせて適切な施策を打つことができると思います。
例えば、従来ビデオカメラのキャンペーンは、春の卒業・入学シーズンと、秋の運動会シーズンの年2回行われていました。ですが、一方で面白い事実があります。実は、1年を通してネット上でのビデオカメラの検索量はほとんど変わらないのです。
送り手は春と秋というタイミングで購入ニーズが高まるものだと考えていますが、実際には結婚式や子どもの出産など個別の需要がある。これはほんの一例ですが、そろそろ、買い手と提供側のギャップを意識して、需要のタイミングに合せて施策を打つスタイルにシフトしたほうがいいと思います。