今後のニュースメディアが果たすべき役割とは
バネルディスカッションのテーマは「未来に向けてニュースメディアが果たすべき役割」に移る。個人でも積極的に情報を発信できる現代。ニュースメディアは企業や組織として、どのような役割を果たすべきであろう。津田氏は、ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジの言葉を引用しながら、新聞、ラジオ、テレビなどをメインに展開する伝統的なトラディショナルメディアと、新興のソーシャル・デジタルニュースメディア、それぞれの役割について語った。
ウィキリークスでは、匿名でリークされた情報でも受け手の方で検証されることを期待していた。しかし、思うような成果は上がらなかった。その経験を通し、アサンジは情報の検証というのはプロのジャーナリストや法律に詳しい弁護士など専門家でないとできないことを悟ったそうだ。情報の検証というプロの担うべきジャーナリズムの機能は、トラディショナルメディアが変わらず果たすべき役割であろう。一方、ソーシャルメディアの役割として掲げられるのが「ニュースの読み解き・ニュースの発掘・情報源」であるとする。トラディショナルメディアの作ったニュースに、更に多くの読み解き方、視点を与えること。埋もれてしまうようなニュースにも光を当て、発掘すること。そして、ネット上に情報を出すということ自体が、現代においては「情報源」となり得る。トラディショナルメディアの記者においても、ネットを情報ソースとして活用することはあるためだ。
ニュースメディアに欠かせない信頼性と見識
また、ニュースメディアに信頼性が問われることはいつの時代でも変わらない。発信された情報が本当のことかどうかということが、そのメディアの信頼性を左右することは言うまでもない。ユーザーは受け取るニュースを選ぶことはするだろうが、多くの場合、その真偽を確かめることまではしない。このことは、前述の津田氏のコメントにある通りだ。BBCのようなトラディショナルメディアにおいては、そのブランドが持つ影響が大きく、信頼に繋がっている。では、Webからアルゴリズムによって情報収集し、ニュース発信をしているSmartNewsの場合はどうなのだろうか。藤村氏は、「見識というものをコンテンツに含める、あるいはコンテンツの周囲に伝える仕組みを考えていく必要がある。編成や編集というところに重要な意義を示す流域が残されている。そこにメディアがやるべき仕事が残っている。人が素晴らしいコンテンツを作り、見識を高めていくという行為と、アルゴリズムによってコンテンツを生み出したり、選択する行為というのは、目的としては同じ。これからのニュースメディアは常に同様の課題を持つ」と語った。
情報の正確性の担保やニュースとして発信すべきかどうかという判断が、ニュースメディアに求められる見識であり、その基準をどう作り上げ、発信する情報に反映していくかを、すべてのニュースメディアは考えていかなくてはならない。ここでもあえて寿司に例えるならば、ニュースソースであるネタやシャリさえあれば、職人ではない個人であっても寿司らしきものは作れるかもしれない。しかし、それが安全でおいしく食べられるものであるとは限らない。読者がどんな寿司ネタを選ぶにしろ、ニュースメディアとしては、発信する情報に対して「安心しておいしく食べられますよ」ということを約束していかなくてはならない。
