小売業のような事業環境になりつつある

プラットフォームに多数の「出店」をすることになれば、管理の大変さは想像に難くない。たとえば、コンテンツについてのクオリティ管理やマネタイズにおけるセールスオペレーションなど、専任担当者が必要になる可能性が高い。
山田氏はこういった状況を「小売業」に例えると分かりやすいとした。「百貨店の本店にお客さんが来て、その場でモノを買ってくれる時代は幸せだった。今は同じモノを売るのでも、原宿、軽井沢、千葉県、など場所によってお客さんの質や層が変わるので、売るモノは変わるし、売り方も変わる。同様のことがメディアのビジネス環境にも起こっている」
さらに山田氏は、こういった変化はチャンスでもあると説く。「こういった変化に対する怖さはあるが、チャンスでもある。ソーシャルにしろ、プラットフォームにしろ、集客力が高い場所はたくさん存在しているので、こういった場所を活かしていかに新しいユーザーを獲得していくのか、という思考を持たなければならない」
こうした変化に対する組織の対応例として「例えばですが、東洋経済オンライン編集部の中にFacebook課、アップル課などのチームを作って、それぞれの場所でパフォーマンスの高いコンテンツ配信を担う部隊ができてもよいかもしれない」と語った。
一方「東洋経済オンライン」は、「東京カレンダー」「AERA」などの他メディアのコンテンツを受け入れる取り組みも進めている。関係は相互であり、たとえば「東京カレンダー」にも「東洋経済オンライン」の記事が掲載されている。
山田氏は「これまでパブリッシャーは『いいコンテンツを作成すれば誰かが運んでくれる』と考えがちだった。今後はパブリッシャー同士がシナプスのようにつながり合い、読者を獲得する努力をする必要がある」とした。
ローカルで強いメディアを作ることがまず大切

そのコンテンツの乗り合いを、コンデナストの場合はグローバルなネットワークで行おうとしているという。たとえば12か国で「VOGUE」が配信されているが、その中のコンテンツは各国オリジナルもあれば、共有もある。また日本未発表ブランドのものをクロスブランドで入れることもある。
一方で新井氏は「やみくもに持ってくればいいわけではない」と強調。「まず、ある程度のレベルまでは国内でしっかりと作る。それをベースに海外のコンテンツをどうブレンドするのかという視点が大切。しっかりとしたキュレーションが必要である」と語る。
山田氏も「確かにコンテンツ乗り入れで双方のPVは大きく上がった。しかし、単なるPV稼ぎではなく、メディアの『こんなに面白いものをみんなに伝えたい』というパッションが不可欠」と強調する。
