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枠売り広告マンに価値はない/代理店はCRM領域へ踏み込めるか【加藤公一レオx有園対談】


良いクリエイティブの定義とは?

有園:ところで、最近、テレビ番組制作会社とかCM制作会社からネット広告勉強会の依頼がチラホラ来るようになりました。そこで「どんな動画やクリエイティブが、今まではいいとされていたんですか」とクリエイティブディレクターの人に聞いたら、「人の心を動かすもの」だと。

 では、「人の心を動かすいいクリエイティブができた結果、どうなるといいのですかね?」という話をすると、「結果的にはそれによってクライアントの商品が売れるのがいい」と。「でもそれ、測ってないですよね」みたいな感じの話になって。理屈としては「人の心を動かすことができて、かつ、売上につながる」っていうのがいいっていうのはわかっている。でも、要素分解をされるのは嫌だ、しかも自分のクリエイティブをテストするとかになるとそれは嫌だってなる。

 「人の心を動かす」という、クリエイターが一生懸命に考えていることが、今後は売りにもつながらなきゃいけない。そういうところをクリエイターが目指してくれれば、いいんじゃないかなと思っていて。一方でレオさんはA/Bテストで売上につなげるわけですが、レオさんは必ずしも人の心を動かそうとはしていない?

レオ:人の「行動」を動かそうとしていますね。

有園:結果的に売上につながるってことは、「行動」を動かすこと。で、「行動」を動かすってことは「心」が動いている。A/Bテストを続けたら数字が出てくるというのは厳しい世界です。でも、有名クリエイターも、自分のクリエイティブで、どれぐらい売上が上がっているのか、もっと検証したほうがいい。

 いまテレビCMはざっくりとした相関分析、重回帰分析ぐらいしか手法がありませんが、オンライン動画では要素分解してA/Bテストができるようになってきたので、もっと積極的にやるべきです。人の心を動かしつつ、かつ、クライアントの売上にも貢献するクリエイティブかどうかを検証していく。レオさんなら共感してもらえるかなと。

苦い経験から学んだ「広告は売ってなんぼ」

レオ:僕は、ネット通販のダイレクトマーケティングですが、どんなブランド系、イメージ系のマスメディアの広告マンだろうと、広告なんて所詮、販売業だってことを理解すべきです。決して、アートでもないし、エンターテイメントでもない。広告はズバリ販売業です。でも、誰も認めません。電通も博報堂も「お前ら、販売業だからな」って言っても認めない。「俺は広告マンだ」と。いや、販売業だよ。

有園:受託産業だって言葉を聞いたことがあります。クライアントからお金もらって引き受ける仕事だから、どんなにすごいクリエイターであっても、オリエンがあって、クリエイティブブリーフがあって、それに則って作ります。そこからはみ出していくのはダメで。どっちかと言うと、ファンドマネージャーに近いイメージだろうなと思っていました。予算をお預かりして、倍返しするってレオさんよくいうでしょ。

レオ:世の中のメーカーの人は、そんなに給料が高いわけじゃないですか。ハッキリ言って。広告業の方が高いわけですよ。ある意味、クライアントの社員から奪っているんです。数十万円、数百万円と。本当は給与とか賞与として全員に渡せるのに、広告という何百億円の投資のために、1人ずつから奪っているようなものです。その大事な命の金を広告業界が自分の趣味のために、泡遊びのために使っちゃダメだっていうのがあって。僕はそれが大嫌いなんです。

 僕はそれをよく批判するから、大手広告代理店の人たちは僕が嫌いなんですよね(笑)。命の金ですよ。本当は社員に払うべきだと思うんです。でも、1人ずつから集めた金で、未来に向けての投資として広告をやっている。万が一、失敗したら大損ですよ。社員それぞれにとってね。その下には奥さんもいて、子供もいて。裏切りですよ。

有園:自分で会社をやるようになってから、そう思うようになりましたか?それとも昔からですか?

レオ:昔からですね。ADK時代に、1度だけですがクライアントが倒産した苦い経験があったからかもしれません。そのクライアントは通信会社で、資本は多く、それなりの規模でお金も持っていたんですが。

 僕が広告業界に入った25歳頃、バンバンテレビをやらせて、バンバン新聞をやらせて。でも、商品がそこまで売れなかったんです。今、考えると「あれじゃあ売れないわ」っていう広告を作っていたんですよ。ミーハーなクリエイターを入れて。契約をとらなきゃいけないんで、ミーハーな新聞をガンガン打たせて。僕は儲かったけど、そのクライアントは倒産してしまった。その会社にいた社員たちもいなくなってしまった。そういう苦い経験があります。

 だからそれ以降、僕が思ったのは「やっぱり広告って、売ってなんぼだな」と。そうじゃないと、クライアントとその社員も死んでしまう。そこから、ダイレクトマーケティングをすごく勉強し始めました。クライアントを儲けさせたら、社員のボーナスも上がって、会社としても伸びていく。広告マンに対しても、翌年どんどん戻ってくる。自分の想像力やアイデア力、広告マンとしてのセンスは日本トップだと思っていませんが、クライアントのお金を自分のお金のように考えられる能力だけは日本一だと思っています。でも、みんなサラリーマン的思考でクライアントの広告費を消化するっていうイメージだから、うまくいかない。

有園:「消化する」って言いますもんね。

レオ:広告費が投資だということをわかっていない。「運用する」ってマインドがないんです。

企業の決算と同じように、広告の費用対効果も年単位でみるべき

有園:僕は今日最初に、LTVと年間ROASの話をしたじゃないですか。単品通販の世界ではかなり浸透しているのかもしれませんが、LTVを計ろうとしてないクライアントもけっこう多い。なので、LTV、そして、年間ROASが重要だという話は、ぜひ、もっと広めていったほうがいい。僕の経験からも、一番大事なのはLTVとROASを年間で計ること。

レオ:そうですね。企業の決算と同じです。企業の決算が1年ごとであるように、通販の広告の“費用対効果”も1年単位で見ていかないとわからない。

有園:短期で見てもしょうがない。1年で見ていく。ある意味、マス広告も本当は同じであるべきだと思っています。投下した広告に対して、売上がどれぐらい上がっているのかを1つの指標にして年間でみていく。

レオ:僕はむしろ、マスメディアでも、そこを最重要視しています。短期的にはどうこう、長期的にはっていうのが逃げにしか聞こえないんですよ。そういうのは大っ嫌いで。うちも1年単位で見ますが、1年後に全部ビシッと詳細まで分析して結果を出します。結果を数値化する。これが必要だと思います。逃げとしての短期的、長期的ではなくて、長期的でも1年後の約束の期限に全部、通信簿を出すことをやっています。

有園:素晴らしいです。参考になりました。ありがとうございました。

本記事は「Unyoo.JP」の記事「加藤公一レオはなぜ、LTVを重要視するのか?」を要約・編集したものです。長編のオリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/11 20:18 https://markezine.jp/article/detail/23541

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