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サイバー・コミュニケーションズが語るネット広告の歴史と、未来の広告ビジネス――新刊記念インタビュー

 翔泳社では1月21日(木)に『ネット広告がわかる基本キーワード70』を刊行しました。本書の監修は、インターネット黎明期から広告ビジネスの最先端で活躍してきたサイバー・コミュニケーションズ。今回、刊行&設立20周年を記念し、社長の新澤明男さんと副社長の小林千秋さんにインタビューをお願いしました。

ネット広告がわかる基本キーワード70

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ネット広告がわかる基本キーワード70

編著:MarkeZine編集部
監修:株式会社サイバー・コミュニケーションズ
発売日:2016年1月21日(木)
価格:1,944円(税込)

目次

  • Chapter01 インターネットの利用動向とメディアの変化
  • Chapter02 広告の役割
  • Chapter03 ネット広告の基本
  • Chapter04 ネット広告を支えるウェブ技術
  • Chapter05 広告とデータ活用
  • Chapter06 新たな広告手法
  • Chapter07 広告のこれから

ネット広告がわかる基本キーワード70』は、日本にネット広告が生まれてから現在までのおよそ20年間を70個のキーワードで解説したネット広告の入門書です。黎明期のバナー広告からRTB、DSP、ネイティブ広告やディープリンク、ビューアビリティなど最新の用語も収録。本書は言葉の意味だけでなく、その言葉や概念が誕生した背景にまで迫った業界の俯瞰図です。

 監修はネット広告の先駆者である株式会社サイバー・コミュニケーションズCCI)。これからネット広告を勉強しようという方や、この業界を志望する学生に向けて、各分野のエキスパートが知識と経験を詰め込みました。最近業界に入り、いきなりRTBやDSPという最新アドテクノロジーを使い始めた方が、それらが誕生した背景を知るのにも有用です。

 今回本書の刊行とCCIの20周年を記念し、代表取締役社長の新澤明男さんと副社長の小林千秋さんにネット広告の変遷やCCIの事業についてお話をうかがいました。ネット広告業界において最古参といえるCCIがなぜ20年間、常に最先端で新しいビジネスを生み出してこられたのか、秘密の一端が明かされます。

『ネット広告がわかる基本キーワード70』内容紹介はこちら

この20年、インターネットは広告とともにインフラへと成長した

――今回、本書の帯に「日本にネット広告が生まれて20年」と入れていますが、これは御社が設立20周年であることも意味しています。御社が最初期のメディアレップとして設立されて以降、言いかえれば御社がネット広告の発展と並走されてきて20年が経ち、いまどんな実感をお持ちでしょうか。

新澤:20年という区切りは感慨深いですね。インターネットがスタートした頃は一部のユーザーが使用するマニアックなものに過ぎませんでした。その中で我々は広告を販売し始め、メディアはコンテンツを制作してきたのですが、それによっていろんな方々がインターネットを使うようになり、便利な生活を送れるようになりました。

 インターネットユーザーが増えたことで、我々としては新しい広告モデルを作ることができ、それがメディアのコンテンツやサービスの充実に繋がり、またユーザーが増えていくというサイクルができ上がっていきました。この産業に血液といえる収益源を確立するサポートをしてきたわけですが、その結果としてインターネットを日常生活に欠かせないインフラにするお手伝いができたことは嬉しく思っています。

新澤明男さん
新澤明男さん
株式会社サイバー・コミュニケーションズ 代表取締役社長

小林:私が入社した1999年というのは、インターネットがまだ電話回線で繋がっている時代でした。コンテンツも少なく、これからメディアを立ち上げてサービスを提供していこうという野心的な方が大勢いらっしゃいました。そんな中で、弊社は広告がインターネット産業を支えていく大きなドライブになるという認識をもって取り組んできました。ネット広告を健全に発展させるために我々には何ができるのか、と考え続けてきた20年だったと思います。

 これまでいろいろな出来事がありました。メディアの形はどんどん変わり、コンテンツはますます充実し、広告のあり方も変わっていきました。特に、かつて広告はマス的に出稿することしかできませんでしたが、いまではターゲットに合わせて多様な広告を作り配信することが技術的に可能になりました。データを活用して潜在的な顧客にアプローチするなど、新しい手法が生まれ続けています。

 インターネットが生活に欠かせなくなり、さらに天災が起きたとき生活を支えられるようなインフラにまで成長したことはとても感慨深いです。弊社ではメディアに広告という収益源を確立するサポートをすることでインターネットの成長を後押ししてきましたが、それはまさしく情報社会発展の一翼を担うという企業理念を追求することだと改めて感じます。

小林千秋さん
小林千秋さん
株式会社サイバー・コミュニケーションズ 取締役副社長

人材採用は知識やノウハウよりも志を共有できるかどうか

――現在も市場は成長し続けていますが、同時に課題も生まれています。本書でも挙げられているように、ユーザーが広告に追いかけられていると感じたり、悪質な広告やマルウェアが依然として横行していたりします。御社では市場の健全な発展を重要な目標に掲げられていますが、そうした理念は社員の皆さんにどのように伝達されてきたのでしょうか。また、その点を含め人材を育成するうえで大事にしていることを教えてください。

新澤:私が社員に何度も説明しているのは、我々がメディアと生活者と広告主の健全な関係を支える基盤を構築する会社だということです。"The Media Growth Partner"であると標榜していますが、まずメディアを広告で支えることを重視するのは、メディアがこの基盤の起点になるからです。先ほどお話ししたように、メディアが有用で健全なコンテンツを提供し、そこに集まる生活者に対して広告主が安心して広告を出すことができる、というサイクルですね。ですから、あくまでも弊社の存在意義は基盤を作ることにあるわけです。

 広告会社であれば、ときには広告主の期待に応えるためメディアの広告枠を値引きしてもらうこともあるかもしれません。しかし、弊社の仕事は広告主の広告パフォーマンスを最大化するとともに、メディアの収益を最大化させることです。広告主の期待とメディアの期待をすり合わせるのは、実際には難しいこともありますが、その中で最適解を見つけ出さなければなりません。非常に重要な考え方で、社員にはこのことをきちんと理解して仕事をしてもらっています。

 弊社には広告会社出身の社員が大勢いますが、異業種からも多く受け入れてきました。中途採用の半分以上は異業種出身です。この業界を発展させていくのに、さまざまな業種の方々の知識や経験が不可欠だからです。社員それぞれの背景がありますが、そのうえでどういう会社なのかという認識、考え方を全員が共有することを大事にしています。そういう意味では、学生や異業種の方も本書を読んでいただいて、この業界の面白さを知っていただきたいですね。

小林:異業種からの採用という話が出ましたが、新しい領域を開拓していく会社なので、経験のある方がそもそも少ないです。ですから、達成すべきことに対して何が必要で、どういう能力を備えていなくてはいけないのか、初めから分かっているわけではない領域もあります。そのため、人材の選考に関しては、我々の志を理解してくれて、一緒に実現しようとモチベーションを持ってくれることがスタート地点になります。一方で、ビジネスが確立されている既存領域においては、必要とされる明確なスキルセットがありますので、こういったスキルを積みたいという方にも成長する環境を提供できると思います。そのうえで、課題を認識し、解決策を練って、知識を身につけていける方でないといけません。ノウハウを会社に蓄積していけることはもちろん、業界全体に定着させられるかどうかも重要です。

 強い想いさえあれば、会社はスキルアップのサポートを惜しみません。社内での研修もそうですが、社員同士でも自主的に勉強会を行なっています。メディアの方を呼んで講義をしていただくなど、かなりの頻度で開催していますね。

新澤:実はいまのオフィスに引っ越してくるときそのことをかなり考えていまして、いろんなメディアや広告会社に入館証を提供して好きなときに来て使ってくださいというシステムにしているんですよ。社内だけでなく社外向けの勉強会など含めて、いろいろな方々が交流でき、新しいものが生まれる空間にしたいなと思っています。

 例えば、立ち上がったばかりのメディアであれば自分たちで説明会を開催するのは相当な労力が必要でしょうから、弊社のスペースで我々の取引先をお呼びして説明会なり勉強会を開催するなど活用していただきたいと思っています。

メディアはコンテンツ制作に注力し、CCIは広告ビジネスをサポート

――新しいメディアでいいますと、2013年にハフィントン・ポスト、つい先日(2016年1月)BuzzFeedが日本に上陸しました。国内で生まれたメディアとは異なる背景を持つ両者ですが、新しいメディアとはどのような取り組みをされているのでしょうか。

新澤:ハフィントン・ポストさんとは3年間、パートナーとして新しい取り組みをさせていただいています。一般的には、どのようなメディアでも優良で役に立つコンテンツでユーザーを集めつつ、収益源を確保する必要があります。ですから、広告専門の部隊を用意し、メディアレップを通じて広告を制作して出稿するのが基本的な方法です。

 ですが、もう一歩踏み込みたいと思い、本件に関してはハフィントン・ポストさんにコンテンツの制作と集客に専念していただき、広告に関してはすべて我々が行なうという形を取りました。つまり、メディアはいいコンテンツを作ってユーザーさえ増えれば広告で収益が上がるというモデルです。

 3年経ってハフィントン・ポストさんでも自分たちで収益を確保することができるようになったということで、そこに至るまでをお手伝いさせていただきました。我々は"The Media Growth Partner"を標榜してから、メディアをサポートする新しい形を模索しています。メディアが作った広告枠を広告会社に販売するだけでなく、メディアの成長そのものを支える体制やアプローチ、テクノロジーなど一切合切を提供したいと思っています。最近ではスマートフォンアプリも一つ一つがメディア化していますから、ウェブのメディアと同様にサポートしていきたいと考えています。

小林:やはりメディアを立ち上げられたなら、全体のビジネス構築とコンテンツに注力していただかなければならないですし、多くのことをやらなければなりません。弊社では、広告領域において豊富な知見がありますので、広告ビジネス立上げのお手伝いができます。我々の立場であれば、広告枠の開発、販売だけでなく技術提供などの基盤サポートからコンテンツ同士を組み合わせて相乗効果を狙うなどのタイアップに至るまで、成長段階でさまざまな手法を使ってサポートすることができます。

新澤:黎明期は広告枠を売ることばかりで、そこに付加価値をつけることがなかなかできませんでした。ですが、我々自身のネットワークが広くなってきたこと、またアドテクノロジーが発達してきたこともあり、例えばCPMが100円だったとしても、他社のオーディエンスデータを組み合わせることで単価を向上させるなど、付加価値をつけられるようになってきました。

 最近は我々の存在意義がより高まってきていると感じます。ここ数年で、メディア一社ではつけられないような付加価値を我々がつけられるようになりましたから、より高い単価で広告枠を販売できるわけです。同様に、アドテクノロジーの発達やノウハウの蓄積によって、広告主にとってもその単価で充分にリターンが取れる商品を開発できるようになりました。

小林:付加価値をつけるという意味で、多くの広告会社から頂戴した広告主やマーケティングサイドのご要望やトレンドをメディアにしっかりとフィードバックすることによってメディアはより充実し、さらに質が高まった場を広告主が利用するという循環を生み出すことを常に心がけています。

RTBから入った人がその背景を知るための解説本

――いまお話しいただいたことだけでも、ネット広告の最先端がどうなっているのかを実感できます。常に第一線で新しいものを生み出している御社が本書『ネット広告がわかる基本キーワード70』を作られたわけですが、どんな意図や目的があったのでしょうか。

新澤:いま新卒や異業種からこの業界に入ってこられる方は、いきなりRTB(リアルタイムビッディング)からスタートするんですね。私たちのように予約型のバナー広告からやってきた人間は、なぜRTBがあるのか、なぜアドテクノロジーがあるのかという進化の歴史を把握して現在の状況を受け入れています。しかし、RTBやDSPを最初に知ると、私たちとは考え方が少し異なってくるのではないかと思っています。

 ですから、ネット広告をまったく知らない学生が全体像を勉強するために読むのはもちろん、RTBから入った方も歴史を振り返って背景を理解するためにも、本書は役に立つと思います。

――本書では「いま知りたいキーワード」を解説していますが、Chapter07で「広告のこれから」に関する項目を三つ解説しています。改めておうかがいしたいのですが、今後広告はどうなっていくとお考えでしょうか。

新澤:この数年でアドテクノロジーやプラットフォーマー型の広告が発展してきましたが、いま広告主が求めているのは、自分たちのブランドや広告に見合ったコンテンツがある場に出稿したいということです。同時に、コンテンツ提供者サイドでは日本独自のコンテンツを積極的に出していこうという機運が高まっていますので、また新たな局面が来ているのかなと思っています。

 ですから、弊社としては日本発、日本独自のコンテンツを作ろうというこの流れと、広告主のニーズをマッチさせた新しいネット広告商品やモデルを作りたいですね。そういう市場を作るうえで、海外企業とのパートナーシップも重要でしょう。

小林:ADSL、光ファイバーの普及によりインフラがより一層発達し、デバイスの進化も目覚ましいものがありました。PCの画像もより鮮明になり、端末の処理速度が上がり動画もストレスなく楽しめるようになりました。特に、スマートフォンが登場したときの衝撃が忘れられません。20年前にこうなったらいいなと思っていたことが、まさに実現されている気がしたんです。この先20年後にはもっと新しいものが現れてくると思います。もちろんIoTもその一つです。コンテンツを発信するにしても、デバイスに囚われる必要がなくなって、いま以上に手段が増えていくでしょうね。

 あとは、マーケティングできる場所が増えるのではないでしょうか。通信環境が拡大することで、いろいろなチャンスが生まれます。我々としては、このチャンスがどこに生まれるのかを半歩先で捉えていき、そこに健全な市場を作れるようにサポートしていくのが使命です。いまは想像もつかない広告を作っていければいいですね。

この業界を広く理解できるCCI

――最後に、これからこの業界や御社に入りたいと考えている方に向けてメッセージをいただけないでしょうか。

新澤:CCIではいろんなことを経験できますし、さまざまなノウハウを持っています。今回、それらを書籍でまとめたのですが、インターネットを広く理解しようとするなら、弊社はいい会社なのではと考えています。

 CCIの卒業生も非常に多く、インターネット系の広告会社であれば必ず卒業生がいるくらいです。また、最近退職後に改めて企業理念に共感し、再びCCIに戻ってデジタル業界を発展させていきたいという方も増えているんですよ。この業界の発展ということは、広告だけではなく社会基盤そのものを変えていくことに繋がり、ひいては消費者の生活が豊かになることにも繋がると思っています。その基盤となる業界を一緒に創ってみたい、発展させたいと思える志の高い人は大歓迎です。

 デジタルの会社の中でCCIほど幅広い領域で展開できている会社はほかにはないと思っていますし、志を持って入っていただければ、さまざまなフィールドで挑戦できる場を用意しています。環境の変化や進化に合わせて、自分自身を成長させていきたい、挑戦していきたいと思っている方、ぜひ一緒に頑張っていきましょう。

ネット広告がわかる基本キーワード70

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ネット広告がわかる基本キーワード70

編著:MarkeZine編集部
監修:株式会社サイバー・コミュニケーションズ
発売日:2016年1月21日(木)
価格:1,944円(税込)

目次

  • Chapter01 インターネットの利用動向とメディアの変化
  • Chapter02 広告の役割
  • Chapter03 ネット広告の基本
  • Chapter04 ネット広告を支えるウェブ技術
  • Chapter05 広告とデータ活用
  • Chapter06 新たな広告手法
  • Chapter07 広告のこれから

 

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/01/13 13:20 https://markezine.jp/article/detail/23782