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広がるテレビの価値を計測し、あらゆる視聴の場で収益を得る新たなビジネスモデルを【氏家x有園対談】


テレビのネイティブ広告

氏家:CMの効果を上げるもう一つの方法が、ネイティブ広告です。ネイティブ広告というと、ウェブサイトの記事の中に紛れ込んでいる記事の体裁をした広告ですが、これはテレビでもできます。

有園:「リアル脱出ゲームTV」での日産のCMは話題になりましたね。(参考記事はこちら)

氏家:日産のCMに出演者がそのまま登場していましたよね。番組から自然な形でCMに入り、ドラマの流れを断ち切らない、雰囲気を壊さない工夫ができていたんです。ネイティブ広告って雰囲気を壊さないから効くのだと思うんです。そういうCMを流すと、おそらく認知のされ方がまるで違ってくる。視聴者にとってCMが邪魔なものではなく、共感を得るものに変わるんです。そのドラマや番組でないと通用しないから、使用できる回数は少ないかもしれないけれど、その分の制作費を安くしたってリターンはくるんじゃないかな。それをYouTubeにアップしておけば、SNSで口コミで広まり放送は見なくても、多くの方に見てもらえるわけだし、効果は大きいでしょう。

 あとはメタデータや視聴データを広告主にも提供して利用してもらう。広告主が「CMって面白いね」って思ってくれるようなデータを提供することで、CMを伝える媒体としてのテレビの価値は上がると思います。

テレビは使いにくい

氏家:テレビの未来を明るくするには、これまでお話ししてきた「地上波放送を元気にすること」に加え、「新しい接触点を増やすこと」も重要です。ユーザー側からすると、今までのテレビは使いにくいわけです。放送しているその時、テレビの前にいなければ見られない。こんな不便なサービスってないでしょう。

有園:テレビ業界にいる氏家さんがおっしゃるなら、そうですね(笑)

氏家:スタートしてから60年間ずっと変わらないわけですから。いまのネットユーザーは、いつでもどこでも、見たいものは見るし、知りたいことは知るし、買いたいものは買う。若い子たちと話をしていて「これって何だっけ」と聞くと「何だっけ」と言う前にパパパッとスマートフォンで調べて「こうです」と。私自身はスマートフォンで調べる動作は面倒臭いんだけど、若い子は抵抗感がない。スマートフォンを使い倒すことが自然なんだよね。

有園:スマートフォンと一緒に育っていますからね。

氏家:便利なものに慣れてしまった人からしたら「テレビって使いにくい」と思うのは当然です。テレビでやっていることは面白いかもしれないけれど、面倒臭かったら見ない。僕らだってネットで動画を見ようと思っても、年齢とか居住エリアを打ち込んだり手続きが面倒だと、「う~ん、もういいや、見ない!」と(笑)

有園:はい(笑)

氏家:それと同じことを若い子たちはテレビに感じているわけです。面倒臭くないようにするには、いろいろなルートで番組を届ける必要がある。それで一番効いてくるのが見逃し配信だと思うんです。見ようと思っていたけど録り逃した、ネットで話題になっているけど録画していなかったから見られない。それらを解消してあげるだけでだいぶ違います。

 ネットの話題の半分はテレビのことだと言われてます。記事や書き込みに画像が付いているかもしれないけれど、そこに見逃し動画へのリンクが付いていたら視聴につながります。面白いことがいっぱい起きると思うんです。

広がるテレビの価値をすべて計測していく

有園:2015年12月8~9日にテレビ業界のイベント「VRフォーラム 2015」が開催されました。僕は行けなかったのですが、参加した人々の話を要約すると、「広がるテレビの価値をすべて計測していきます」という話がなされたらしいです。

 そのことをもっとも表していたセッションが「ビデオリサーチが描く”これからの視聴率”」で、ビデオリサーチのテレビ調査部長、橋本和彦氏の話が良かったらしいです。今後の視聴率計測の方針を示して「分散したテレビ視聴をすべて計測する」という内容だったと聞きました。下記のように、2016年10月からスタートし、視聴対象やエリアを徐々に広げていく、と。

1、視聴率のサンプル数を現状の関東600世帯から900世帯に拡大
2、タイムシフト視聴も計測する
3、スマートデバイスによるテレビ視聴の測定準備をする
4、関西・名古屋をはじめ徐々に全国で同様の体制を整える

 このフォーラムの初日におこなわれた民放連の井上会長の話では、「テレビはこれまで放送だけで儲けてきたけれど、現状の世帯視聴率だけでなく、タイムシフトでも、VODでも見逃しでも、スマートフォンで見ているものも含めて、放送以外のチャネルも計測していこうよ」というメッセージが感じ取れた、と聞きました。つまり、あらゆる視聴の場で収益を得ていく。そんなビジネスモデルを提案しているようにも見えたらしいです。井上会長ってすごいなって思いました。

 VODであれ、見逃し視聴であれ、視聴を測ってビジネスにしていこうというのは賛成です。ハードディスクレコーダーに録画しないようにする、録画させないようにするというのは、それもそうですよね。ハードディスクレコーダーに録画したものに関してはCMを飛ばすという制限はかけられないけれど、配信は違う。VODもCMを入れられるとなると、スマートフォンでもCMビジネスは成り立つわけで。そこを測ってお金に換えられる指標として出すだけでも違ってくるなって思います。

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世帯視聴率を捨てるべきか

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/11 20:02 https://markezine.jp/article/detail/23825

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