伊藤さんをうんざりさせないためにも
すでに「Adobe Marketing Cloud」では特定のパートナー間で「セカンドパーティーデータ」を共有することは可能だ。

新たに発表された「Co-op」は、この機能を進化させ、「Adobe Marketing Cloud」を強化するもので、「Co-op」会員企業となる複数社のデータを繋ぎ、他サイトの情報を元にデバイスの垣根を越えて個人を特定できるようにする。
具体的な仕組みの話に入る前に、現段階でも実現可能なクロスデバイスのパーソナライズについて振り返ってみよう。自社で会員ID等を持っている場合、デバイスごとにログインさせることで会員情報のひも付けによるセグメント情報の共有は今でも行える。

しかし、デバイスを移った際にログインをしないと、ひも付けを行うことはできない。そのため、次の例のような問題が起こる可能性がある。
伊藤さんはゴールデンウィークに旅行に行こうと考え、PCから旅行サイトにアクセス、ログインし、宿泊予約を行った。その後、移動時間を利用して旅行中のプランを練ろうとスマートフォンを手にする。このスマートフォンでは旅行サイトにログインしていない。IPアドレスとCookieにより、デバイスに向けてのマーケティングは行われていたため、すでに予約したはずのホテルの広告が表示される。最初は無視していたものの、何度も予約済のホテルの広告が表示されるのを目にし、すっかり嫌気がさしてしまう伊藤さんなのだった。
伊藤さんがホテルを予約済だということをデバイスをまたいで認識できないがゆえの問題で、機会損失になるどころか、下手をすればブランドをも毀損しかねない。実際、Adobeが行った調査では、デバイスを持っている生活者の3分の2が、デバイス間でコンテンツが同期できていないことに不満を感じていると回答したとのことだ。
「Co-op」参加企業のひも付けデータを用いることで、ログインの必要なくデバイスをまたいで同じ「人」を認識できるようになる。それにより、予約済のホテルの広告を出す代わりに、客室のアップグレードや現地オプショナルツアーなどをオファーできるようになるのだ。

企業側は無駄な広告出稿を減らすことができるし、生活者にとってもその時の状況に合った有益な情報(広告)を受け取れるようになるというメリットがある。では、その仕組みと気になる個人情報の話はどうなっているのだろうか。