生活者・メディア・広告主の間にギャップ
MarkeZine編集部(以下、MZ):博報堂は1996年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下、DAC)を中核となって立ち上げ、以降もグループ内外でデジタル活用に積極的に取り組んでこられたと思います。まずは、博報堂DYデジタルの指揮を執られるお二人のご経歴から教えてください。
辻:私は営業出身です。といっても博報堂は元々、営業がマーケティングを含めてクライアントにかかわるパートナー型の体制をとっているので、マーケティング志向が強い営業でした。
ご指摘のように20年前にDACを立ち上げ、グループ内外でデジタル活用を模索する中、ちょうど10年を経た2006年ごろに改めて体制の見直しの期間があり、そのタイミングでデジタルのセクションに移りました。デジタルを活用したダイレクトマーケティングを経てメディアサイドに移り、この数年は博報堂DYメディアパートナーズ(以下、HDYMP)のi-メディア局長を務めていました。
石川:私は23年間テレビ担当、しかもずっとタイム一筋でした。テレビはよく「スポットは経済、タイムは政治」と表されるように、タイム担当は放送局全体を見すえ、コンテンツに広告主のニーズを反映することが求められます。しかし、年々デジタル環境の浸透によって生活者は大きく変化しました。それに合わせて放送局も広告主のニーズも変わってきたため、これら3者の変化に対応できるようになりたいと考えていた折、HDYMPのデジタルセクションへ異動しました。そして、この4月から現職に移りました。
現代の「生活者発想」にデジタルは不可欠
MZ:博報堂DYデジタルは「生活者、企業、メディア、すべての『デジタルシフト』を主導するデジタルリーディングカンパニー」として発足しています。設立の背景をうかがえますか?
辻:前提として、博報堂DYグループの中には2つのポリシーがあります。ひとつは、生活者がどう考え、どういう行動をとり、そこにはどんなインサイトがあるのかを起点にマーケティングを考える「生活者発想」です。当然、メディア環境や接触状況にも生活者は大きく影響を受けるので、そうした変化をつぶさに捉える必要があります。
もうひとつは、冒頭でも少し触れましたが、クライアントに対する「パートナー主義」です。クライアントのマーケティングを最適化するために、当社も進化する必要があります。デジタル黎明期の1996年、2006年と、およそ10年単位の大きなうねりを経て、今が次の大きな変革のタイミングだとみて、昨年から具体的に新会社設立の準備をしていました。
MZ:直近の生活者や広告主の変化としては、どういった点に注目されていたのですか?
辻:生活者の間でスマートフォンなどのモバイルデバイスによる動画視聴が浸透しつつあります。それに呼応するかのように、動画広告などを中心にブランド広告主のデジタル活用が活発化している点に注目しています。デジタル広告は、先行してダイレクトマーケティングでの刈り取り施策として確立しました。私もちょうどそのころにダイレクトレスポンスを目的としたクライアントの支援をしていたので、成果が数値で見える手応えを肌で感じてきました。
それは残りつつも、現在は、先述の動画広告をはじめ、ブランドマーケティングにおいてどう活用するかが探られています。