世界の変化スピードをどれだけ認識できているか
ビジネス系記事の中で散見される紋切り型の表現に、「ビジネス環境の変化スピードは、年々速くなっている」というものがある。ほとんどのビジネスマンは、この表現を見ると「そんなことはわかっている」「当たり前だ」と思うはずだ。
では、その変化スピードを、当事者としてどこまで認識できているのか? こう疑問を呈するのは、SAPジャパン バイスプレジデント・チーフイノベーションオフィサー 馬場渉氏だ。
「たとえばサッカーや野球のようなスポーツでも、変化の波は起きています。野球の場合、1990年代は日本もメジャーリーグも共に1000億円規模だったのですが、今やメジャーは1兆円規模の巨大ビジネスにまで成長しています。知らないうちにこれだけの差がついてしまった。ビジネスでは、さらに差がついています」(馬場氏)
実際、Fortune500に取り上げられる日本企業の数は、約20年にわたり減り続けており、現在は54社ほどとなっている。代わりに台頭しているのが中国企業だ。その数は98社で、日本企業のほぼ倍となっている。
IT業界はさらに変化が激しい。設立して約12年のFacebookは2兆円企業となり、2000年当時は存続すら危ぶまれたアマゾンが、日本国内だけで1兆円規模の売上を達成するに至っている。
馬場氏は「こうした新しい企業がこれだけ伸びたということは、相対的にどこかのシェアを奪っているからです。今や日本企業は、この“差”を意識しないと、奪われる立場にあるのです」という。
デジタル化は業種・業態の垣根をなくす
どうすればこの“差”を解消できるのか。「スピードに追随するために、デジタル化を進めよう」という方向は、間違っていないが、“正しいもの”とは限らない。なぜなら、リアル店舗の代わりにECサイトを構築したり、スマホ対応をしたりすることが「デジタル化」ではないからだ。
デジタル化を進めるというのならば、デジタル化の本質を知る必要がある。
馬場氏は、「今やさまざまな業種・業態でデジタル化が進み、その垣根はなくなりつつあります」という。その一例として挙げたのが、農業だ。
かつて農業といえば、生産から出荷までのプロセスにおいて、農機や農薬、種・苗の開発業者、卸業などが関わるスタイルが一般的だった。ところが今の技術を使えば、オープンデータを活用して天候予測の精度を上げ、農作業のスケジュールを組むことができる。そのスケジュールを農機が受け取り、人間の基本的なオペレーションだけで農作業を完了することも可能だ。
どの農作地に、どんな作物を植えれば、収穫量がどれだけ見込めるかもわかる。万が一、収穫量が予想以下だった場合、損失を補填する保険業があればいい。つまり、もはやこれまでの競合企業だけでなく、まったく別業種の企業と競争することもあり得るわけだ。
「これまで直接農業と関係なかった企業も、データやネットワークでつながることで付加価値を生む状態です。もはや、総合格闘技戦といえるでしょう」(馬場氏)
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