SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所

カンヌ・ライオンズは広告祭の枠を超えた/若手クリエイターに向けた10の金言

人類の普遍的価値を伝える社会的な作品が増えている背景

 今回のカンヌで私は、Cannes Lions Film部門のショートリストを中心に、250本ほどの作品を見た。その中には、笑える作品、泣ける作品、感動する作品など素晴らしいフィルムがたくさんある。そして、人類の普遍的価値「自由・平等・友愛」をプロモートする社会的な作品も数多くあったので、いくつか紹介しよう。

 たとえば、「#EqualFuture - Pocket Money」というフィルムは、男女の賃金格差解消を訴えている。Gender Equality(男女平等)という価値に立脚したキャンペーンになっている。

 

 同様に、「THE REAL 10 - #TheNew10」も、平等を扱っている。

 

 「HOW TO GET PERFECT RED LIPS」は、あきらかに、反暴力を唱えるものだ。これは、市民の倫理としての友愛(博愛)の価値を反映している。

 

 「I AM YOUR FAN」には、家族愛を感じることだろう。

 

 「SUPER BOWL BABIES CHOIR」も、アメリカ的だが、家族愛を表現している。

 

 「Marriage Market Takeover」は、固定概念に囚われずに自由に生きる権利を訴えている。これは、そのものズバリ「自由」を尊重するものだろう。

 

 そして「SHOPLIFTERS」が今年のFILM部門でグランプリを受賞した。この広告はイギリスの百貨店「Harvey Nichols」がクライアントで、万引き犯を防犯カメラが捉えた映像を素材に使っている。これも、イギリスの社会問題としての万引き(犯罪)、その背景に所得格差や貧困問題が見え隠れしている。

 

 2010年頃から、カンヌではこのような社会的作品が増えてきたと聞いている。この背景にはおそらく、グローバルな企業活動の拡大とコミュニケーションのグローバル化があるだろう。

 グローバリゼーションで生まれた地球規模の多国籍企業(グローバル・ブランド)は、自らのアイデンティティを特定の国家や地域の文化、あるいは、特定の価値観に求めるのが難しくなった。日本国内で日本人向けにビジネスをしているときは、日本人にだけ分かるメッセージを発信していても通用する。しかし、多国籍企業は、グローバルにビジネスをしている訳だ。自ずとコミュニケーションもグローバルに通用するもの、普遍的なもの、を好むことになる。

 グローバル・ブランドのコミュニケーションは、普遍的価値の持つ磁力に引き寄せられるのだ。その結果、人類の普遍的価値「自由・平等・友愛」など基本的人権を核にしたコミュニケーション戦略を作り、広告やマーケティングを実施するようになってくる。

 地球規模に進展するグローバル社会の中で生息するブランドは、引き続き、ある程度の確率で、人類の普遍的価値を拠り所にしてメッセージを発信してくるだろう。逆に言えば、世界経済が順調で、安定した時代には、そのような人類の普遍的価値に依拠したコミュニケーションは減るのかもしれない。そして、比較的ローカルなビジネスをおこなう企業は、そのような世界的に通用するアイデンティティを必要とせず、人類の普遍的価値を拠り所にすることは少ないのかもしれない。時代状況によっては、社会的な作品は減って、広告クリエイティブとして、純粋に面白い作品が増えるのかもしれない。

次のページ
ユニクロのグローバルクリエイティブ統括者による10の金言

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2016/08/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24903

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング