「戦略」の本質とは「確率」にある

ではいったい、どんな内容が書かれた本なのでしょうか。ここではいくつか、特徴的な記述を抜き出してみました。森岡さんは、USJが成功した理由として、「勝てる戦いを探した」だけだと語っています。
「彼を知り己を知れば 百戦殆うからず」という孫子の故事のように、勝てる確率の低い戦いはできるだけ避けて、勝てる確率の高い戦いを選ぶことが大切だと言うのです。
そしてこの「勝てる戦いを探す」ために、確率を調べ、確率を操作することが大切だと続けます。「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率はある程度まで操作することができる」と述べる森岡さんは、今西さんというパートナーとともに、確率を操っていきます。
ここで興味深いのは、森岡さんと今西さんが、「ビジネスの局面には本質的に共通している『法則』がある」と言っていることです。
つまり、再現可能なノウハウがあるというのです。「法則」には、数学的に証明できていることや、数式で導き出される有力な仮説など、すでにわかっていることがたくさんあると言います。そのため、導かれた結論であるそれらの法則を理解しているだけで、成功確率が高い戦略をつくれるようになるのです。
一例として、消費者の「プレファレンス」が市場構造を決定させる、という法則を示します。「プレファレンス」とは、ブランドに対する消費者の相対的な好意度(好み)のこと。これは主に、ブランド・エクイティ、価格、製品パフォーマンスの3つによって決まります。
では、プレファレンスが高いものが高頻度で購買されるとしたとき、企業はどうしたらいいのか。当然、プレファレンスを高めるために、経営資源を投下するべきです。すると、アイデアがいかにプレファレンスを高めるかという「確率」、プレファレンスの高まりがどのくらい購買を動かすのかという「確率」を導けば、経営資源を投下するべき対象が明確になるでしょう。
本書では、このプロセスを、具体的な数式の使い方も交えながら示していきます。きわめて実践的な記述が、そこにはあるのです。