消費者の「テレビよりもスマホ」のシフトについていけるか
田端氏はまず、マーケティングの主戦場が変わりつつある現状から説明した。多くの企業で宣伝・マーケティングはいまだにテレビが中心。だが「中高年の男性以外は、スマートフォン(以下、スマホ)中心になった」と田端氏は指摘する。10代から20代の女性、30代の男性などを中心に、テレビよりもスマホに長い時間を費やす人が増えているという。
主戦場がスマホに移ったことは、単にPCからスマホに移行する以上の「文脈的な変化も伴う」と田端氏。PCで中心的な役割を果たしたのはWebブラウザだが、スマホの中心はアプリだ。平均的なユーザーは1日2時間弱をスマホに費やすが、そのうちの72%がアプリであるというニールセンの調査を引用しながら、「これまでデジタルマーケティングの重要な課題だったSEO(検索エンジン最適化)は、スマホの登場により重要性が下がっている」と田端氏は述べる。
「スマホへの移行は画面が小さくなっただけではない。音楽がレコードからCD、そしてiTunesで曲単位の配信になったように、メディアの伝え方の変化とコンテンツの変化が一緒に起こる」と田端氏は変化を形容する。
だからといって、単にアプリを作ればよいわけではない。ニールセンの調査によれば、ユーザーが日常的に利用するアプリの数は9個にとどまっており、「大企業が提供するアプリといえども、よく使われるアプリになるのは絶望的」と田端氏。「スマホ時代に対応しようとアプリを出したところで、出す側の自己満足で終わる可能性も十分にありえる」と企業のスマホマーケティングの現状を表現した。
LINEの開封率はメールを大きく上回る
アプリだけではない。田端氏はもう一つ、よくみられる誤認識として電子メールを挙げ、「企業から送られる電子メールの開封率は10%、つまり90%は開封すらされていない」と語る。さらに、電子メールアドレスを持たない若者も出てきており、「デジタルマーケティングの基本」と思われてきたメールアドレス収集の有効性に疑問を投げた。
そこで田端氏は自社のコミュニケーションアプリ「LINE」を新たな手段として提案した。国内の6,800万人以上が登録している同アプリは、全体に占めるデイリーアクティブユーザーの比率は7割。10代、20代では9割を超えていると言われる。「毎日当たり前のように使うインフラ」と田端氏は胸を張る。
またLINEの面白いところは、どの地域でも多くのユーザーが利用している点だ。Facebook、Twitterは比較的、大都市にユーザー数が偏っているのに対し、LINEのユーザー分布は日本の人口分布とほぼ等しいと田端氏はいう。これが「インフラ」とする所以だ。
消費者の間では、コミュニケーションツールとして当たり前になっているLINEを、企業も活用しようという動きが出てきている。手始めとなるのが企業のLINE公式アカウントで、ユーザーに送ったメッセージの既読は過半数に達しているとのこと。「クーポンを利用した」「サイトを訪問した」というユーザーも2割を超えているという。企業・ブランドから情報を受け取る手段として利用するサービスを一般消費者に聞いたところ、LINEは堂々のトップに輝いた。田端氏は「企業が消費者とコミュニケーションをするという点でもLINEは浸透しつつある」と語る。