ハニーズは10代~30代の女性をメインターゲットとするアパレルメーカーで、国内に800店舗以上、中国に500店舗以上を有しています。価格帯はリーズナブルなため、売上を左右するのは来客数。実店舗だけでなくオンラインショップも並行して展開しています。
アパレル業界ではファッションの流行り廃りが激しく、変化についていくことがなにより重要です。生活者の好みやニーズに対応した商品を作ることはもちろん、どのチャネルでコミュニケーションを取ればいいのか検証し続けなければなりません。ハニーズが掲げる「私たちは、いつもお客様の『声』に真剣に向き合います」という経営理念は、それをしなければ生き残っていけないからです。
では、ハニーズはどのように顧客の声に向き合っているのでしょうか。ブログ? Twitter? Instagram? もちろん。ですが、それだけではありません。ブログを含めて六つのSNSを活用し、顧客とコミュニケーションしているのです(スマホアプリ、ECサイト、メルマガを含めれば九つ)。宣伝だけでなくニーズを拾い上げブランディングも行っているハニーズのSNS戦略を分析してみましょう。
※本記事は『毎日の発信に役立つWebプロモーションのネタ出しノート』(翔泳社、2016年9月15日)に掲載されている事例からの抜粋です。
コミュニケーションのできるアメブロ
ハニーズでは顧客とのコミュニケーション手段として、アメーバブログ(アメブロ)を利用しています。商品の紹介記事がメインとなっていますが、カタログ的ではなく、その商品を実際に使用している人のような目線で紹介されています。
アメブロを利用する主な理由は2点。一つは、アメブロがモデルやタレント、俳優などが公式ブログを開設していて、ターゲットとなる人たちが普段から読んでいるブログだからです。もう一つは、一般的なコメント機能に加えて、多様なコミュニケーション機能が用意されていることが挙げられます。
コミュニケーション機能には、ブログが更新されたら通知してくれる「読者」、個別にメッセージを送ることができる「メッセージ」、承認したユーザーだけに公開できる「アメンバー」、アメーバピグと連携して友達になれる「ピグとも」、記事を読んだことを知らせる「ペタ」などがあります。また、「リブログ」によって誰かの記事を引用して記事を書くこともできます。
ハニーズでは自社のターゲットがよく利用するブログサービスを選び、そこで詳細な商品紹介やキャンペーン案内を行うことで、オンラインショップや実店舗への来店を促しているわけです。
ブログとの相乗効果を狙ったFacebook
Facebookの大きな特徴は、実名での利用による信頼性の高さです。また、ユーザーが自分の好きなものや利用している商品、企業の投稿に「いいね!」やシェアをすることで、ターゲットの友達(潜在顧客)に対しても信頼性のある情報が拡散していきます。
ハニーズでは公式Facebookページで、主にブログ記事を簡略化して短時間で読みきれるようにしたものをほぼ毎日投稿しています。
Facebookではユーザーのタイムラインにどんな投稿が表示されるか、システム内部で計算されて決められています。「いいね!」やコメントの数はもちろん、投稿頻度も重要な指標になっているのです。ユーザーのタイムラインで表示頻度が落ちれば、その分ユーザーとの関係性は薄れてしまいます。
情報拡散や関係性の構築のためには、まずは投稿頻度を上げる必要があります。ハニーズではブログや他のSNSで使用したコンテンツを少し変えて対応しています。また、ユーザーにとってもわざわざブログに見に行く必要がなく、新商品やおすすめ情報の通知代わりになります。投稿も、多くが直接オンラインショップへ誘導し、アクションを促しています。
Twitterはリアルタイムで柔軟な発信ができる
Twitterは詳細な情報を届けるには向いていませんが、リアルタイムで簡潔に情報を届けるには最適なSNSです。ハニーズでは商品単体だけでなく、コーディネート写真を提示する形での紹介を多く行っています。ただし、商品の詳細や購入への明確な誘導はしていないことに注目しましょう。これはあからさまな宣伝が好まれないTwitterに合わせたプロモーションだといえます。
また、入荷が決まった商品の情報を「近日入荷予定」としてツイートしたり、「今週のTOP3」を紹介したり、あるいは購入者のツイートをリツイートしたりするなど、旬な情報を多く流していくことでユーザーからの支持を集めています。
LINEは親近感とタイミングが命
10代~20代に圧倒的な利用率を誇るLINEにおいて、ハニーズは公式アカウントで商品紹介はもちろん、お友達紹介キャンペーンや期間限定の割引クーポンを配布するといったプロモーションを行っています。
Tiwtterは不特定多数とのリアルタイムなコミュニケーションが可能なSNSですが、LINEはそれよりももっと1対1に近いコミュニケーションを行うことができます。そのため、文字と画像だけでなく微妙な感情も表現できるスタンプの利用が不可欠です。それによって親近感や深い関係性が構築されていきます。
また、プッシュ通知されるLINEでは情報発信のタイミングが重要です。顧客の生活パターンを理解し、読まれやすい曜日や時間帯に配信できるかどうかでアクションが左右されるのです。
写真を中心にシンプルに届けるInstagram
Instagramのユーザーは、ハニーズのターゲットとそっくりそのまま重なるといっても過言ではありません。運営する公式サイトのフォロワーは4万人以上で、しかももともとファッションに強い興味のある女性が多いため、商品単体の写真よりもコーディネートした写真をアップしています。
文字情報はほとんど投稿されず、商品の価格と品番程度に留めているのが特徴的です。しかしその分、大量の写真があるため注目を集めることができています。
カテゴリーとスクラップが要のPinterest
PinterestとInstagramはどちらも写真・画像を共有するスタイルのSNSのため、利用していないと何が違うのか分かりづらいかもしれません。実は使い方がまったく異なっており、Instagramは自分で撮影した写真を投稿するサービスであるのに対して、Pinterestはネット上にある画像をスクラップ帳のように自分のエリアにブックマークするサービスなのです。
そのブックマークをピンと呼びますが、企業のサイトなどにある写真がピンされるとリーチが広がり、大きな広告効果が生まれることがあります。さらにその写真を見たユーザーがリピンすることでどんどんシェアされ、拡散していく可能性があります。
ユーザー層はInstagramと似ており、ファッションに敏感な女性が多く、つまりはハニーズのターゲットと重なっています。ハニーズではオンラインショップに掲載した商品写真をピンすることで、公式アカウントページに商品のスクラップを作っているというわけです。さらに、自社の商品以外でもユーザーが共感を持てる写真をピンすることで、ハニーズのファン以外にも興味を持ってもらえるような使い方をしています。
公式アカウントではnew arrivalやliveといった12のカテゴリーを用意しているので、ユーザーは自分の今の気持ちに合わせて特定のカテゴリーから商品を選ぶことができるようになっています。
複数のSNSを活用すれば相乗効果が見込める
ここまで見てきたように、ハニーズはアメブロ、Facebook、Twitter、LINE、Instagram、Pinterestという六つのSNSを活用しています。それぞれの特性とユーザー層に合わせて使い分けることで、一つのSNSだけでは情報を届けられないユーザーにも幅広くリーチすることができるようになりました。
とはいえ、やはり投稿内容をどうするかという大きな課題を感じる方も多いかもしれません。しかし、同じコンテンツを再利用して別のSNSに投稿することをあまり遠慮してはいけません。ユーザーにとって好ましくないと思ってしまうかもしれませんが、そんな心配はしなくても大丈夫。何度も同じ情報を見て嫌になるユーザーはそもそも見込み客ではありませんし、すべてのSNSをきっちり見ているユーザーはほとんどいません。むしろ、大量の情報が流れていく中でいかに自社の情報を目立たせ、表示頻度を挙げていくかが大事なのです。
今回紹介した事例は、翔泳社が9月15日(木)に刊行した『毎日の発信に役立つWebプロモーションのネタ出しノート』により詳しく掲載しています。他にも実店舗を持つ企業がネット販売を拡大させた事例としてオリジナル名を入れた商品を販売しているトレジャー、自治体と企業が協力して認知度を高めた事例として大阪ミュージアムショップを中心に、多くのWebプロモーションの実例を紹介しています。
本書には新規顧客獲得やブランディング、SNSの活用など、Webプロモーションに関するノウハウも詰まっています。Webで何をしたらいいのか、どのようにSNSを使えばいいのか、どんな情報を発信すべきなのか、詳しく知りたい方はぜひ本書をお手元に。