安直なマネタイズではなく市場の成熟を待っての参入
運用型広告を開始するまで、LINEは慎重にタイミングを見計らってきた。田端氏は「スマートフォン広告費の7、8割が運用型広告」と認めながらも、開始が今になった理由について、「iモード」全盛期からスマートフォンが席巻するまでの間、モバイル広告に大手ブランド広告主が参入していなかった現実を指摘した。「広告主とユーザーの両方に対し、LINEは企業のブランディングの場であるという位置付けをしておきたかった」と田端氏は語る。
LINEをリリースしてから1年後に同社は広告事業を展開してきたが、土壌が整っていないという判断から、広告メニューを限られたものにしていたという。
「安直なマネタイズではなく、スマートフォンとLINEのコミュニケーションの特性を生かした広告ビジネスを展開したいと思い、運用型広告は少しずつ計画を進めていました」(田端氏)
もちろん顧客から、運用型広告に対するニーズは以前からあった。では、なぜこのタイミングなのだろうか。田端氏によれば、広告主とユーザーの両方からLINEの広告ビジネスについての理解が浸透したことが、運用型広告の検討につながったという。
「公式アカウントが250社を越え、ゴールデンタイムにテレビ広告を出稿するようなブランドの多くがLINEで広告施策を展開するようになり、LINEユーザーからも良い反応が返ってきていたことが大きな転換期になったと思います」(田端氏)
2015年後半より、同社は運用型広告配信プラットフォーム「LINE Ads Platform」の具体的な計画に入っていくわけだが、展開に当たって大きいのが2016年2月のM.T.Burnとの業務提携だ。これにより、M.T.Burnのスマートフォン向けネイティブ広告プラットフォーム「Hike」を配信基盤とした広告配信プラットフォームを展開できるようになった。5月初めまでHikeをLINEの広告枠に合わせるためのシステム接続や改修を進めた後テスト運用を開始し、6月に本格運用開始にこぎつけた。
ネイティブ広告プラットフォームを提供する企業は複数あるが、M.T.Burnを選んだ理由については、社内開発という選択肢もあったと明かしながら「インフィードの配信技術をとても重要視しており、ここで特化した技術を持っていた」と田端氏は説明した。
これまでの広告ではリーチできない層にアプローチ
では、LINE Ads Platformにはどういった特徴があるのだろうか。現在、配信ネットワークとしては主にタイムラインとLINE関連サービスである「LINE NEWS」、さらにネイティブ広告プラットフォーム「Hike Network」があり、同じクリエイティブで両方に掲載できる。
ソーシャルメディアや広告ネットワークの広告枠との差別化については、「リーチの広さ」を真っ先に挙げた。Facebookが2015年12月に発表した最新のデータで月間アクティブユーザー(MAU)は2,500万人であるのに対し、「LINEの国内登録者数は6,800万人を越えており、外部調査によるとデイリーのアクティブユーザーは7割を越える」と田端氏は胸を張る。
「FacebookやTwitterではリーチできない層にアプローチできる自負があります。特に若年層はテレビでもリーチが難しくなってきている中で、LINEは若年層へのリーチも強みとしています」(田端氏)
また田端氏は、これまでLINEが提供してきた広告メニューとの違いとして「潜在層へのアプローチがより可能になる」点を挙げた。同社が主に提供してきたLINE公式アカウントの場合、企業が開設したアカウントと友だちになってもらうことで、様々なアプローチが可能になるため、いわば一定のニーズが顕在化したファンとなる。
しかし、LINE Ads Platformであれば、全くサービスを知らない、公式アカウントと繋がっていない潜在層へもアプローチできるのだ。