ABMは、BtoBマーケティングには欠かせない
MarkeZine編集部(以下、MZ):この半年から1年くらいにかけて、よくアカウントベースドマーケティング(以下、ABM)という言葉を耳にするようになった印象をもっています。なぜABMが注目を集めるようになったのでしょうか? そこで、そもそも「ABMとはなんであるか」という話からお聞きしたいと思います。
東野:ABMは、端的に言うと、マーケティングオートメーション(以下、MA)を活用した取り組みに見られるような、リード獲得中心ではなくアカウント中心にマーケティングを行い、企業収益をあげていくという考え方を持った手法です。お客様個人、一人ひとりにフォーカスしていく、MAとは対照的にABMは組織全体を見ながら戦略的にターゲティングを行っていきます。
MZ:対個人を意識するリード獲得中心のマーケティングとは異なり、対企業・組織を意識するのがABMということでしょうか。では具体例を挙げて、もう少し違いを説明いただけますか?
東野:BtoBでMAを実行する際、「展示会に来て、セミナーに参加してホワイトペーパーをDLした人が特定のページを見たらアクション」というように、カスタマージャーニーをトリガーとして、アプローチを展開していくのが一般的です。
一方で、ABMだと「IPアドレスから見ると、株式会社Aがイベント管理システムのページを見ている。その企業をハウスリスト内で検索してみると、営業とマーケティングの連携セミナーに参加している人が2人いた。ここから、この企業はイベントの情報を営業と連携するのに課題を持っていると推測される。さらにハウスリストを検索すると、経営企画部門に営業担当がついているので、顧客にイベント情報の営業連携の事例を提案する方法を考えよう」というように、企業プロファイルも加味した顧客起点のストーリーが構築できます。
つまり、企業の業種や規模、組織内の部署といった、組織にまつわる属性情報を収集した上で、戦略的なマーケティング施策を構築するのがABMのあり方です。
法人営業をテクノロジー化する
MZ:考え方としては法人営業に近い、ということでしょうか?
東野:おっしゃるとおりです。ただし、法人営業は営業マン一人ひとりが動かなければならないところ、ABMはマーケティングのテクノロジーを使ったターゲティングができます。たとえば、IPアドレスベースでの企業訪問の判定や、ターゲット情報にもとづいたコンテンツの出し分けなどです。これはマーケティングテクノロジーの支援なしにはできないことです。
実はABMにまつわる考え方自体は、以前からありました。ただ、今はマーケティングテクノロジーが格段に進化を遂げて、ABMの考え方もテクノロジーできちんと補えるようになったことで、再注目されはじめているのだと感じています。
CRMやSFAを含めた関係性は、まず顧客化した企業、個人のマスタデータや接点データを管理するがCRMで、CRMの前段階の営業フェーズを管理するのがSFAです。さらにその前段階であるマーケティングのパイプライン上のデータを自動化するのが、MAとなります。マーケティングのパイプライン上のデータを管理するという意味ではMAと同じ位置づけですね。