両社のブランディング戦略に迫る
業界の現状打破、そしてデジタルマーケティングに対する社内理解の推進に取り組む両氏。ここからは、両社が実践しているブランディング手法に話題が移った。
西氏は、「海外旅行っていいな、楽しいなと思って頂けるよう、需要を喚起し、共感してもらうこと」をブランディングのテーマにしているという。

「JTBに関するイメージを調査すると、特に若い方の間で、敷居や価格が高いというイメージを持たれています。そのイメージを打破するため、若い方の生活の中心にあるスマートフォン向けのプロモーションを行っています」(西氏)
この発言に対し、安室氏も「当社も2年前、プロモーションの方向性を大きく転換しました」と語る。
転換する前はBOXERエンジンをはじめとしたプロダクトの特徴やスペックを強調するなど、機能訴求が主だっていた。それが功を奏し、「スバルは走りがいい」というブランディングが着実にできていたという。しかし、コモディティ化が進む昨今の現状をふまえ、同社では2014年にそういった機能訴求から、同社が提供する価値である、安心と愉しさを前面に打ち出す情緒訴求に切り替えた。
「自動車に対する国内需要が減る中で、機能訴求だけで購買に結びつけるのは難しい。だからこそ、スバルの自動車がある生活、またスバルというブランドを好きになってもらうための情緒訴求は、ブランドを磨く上で大変重要だと思っています」(安室氏)
訪問者が購入一歩手前だからこそ気を配りたい、オウンドメディア
現在、広告やソーシャルメディアの活用はもちろん、オウンドメディア上でのコンテンツマーケティングに注力する企業も増えている。富士重工業もその企業の1社だ。当セッションでは、その効果と注意点を安室氏から聞くことができた。
「オウンドメディアはとても重要なチャネルです。車を購入する方のほとんどが参考にされていますからね。オウンドメディアが購買を左右するかもしれない以上、サイトの使い勝手には気を配っています」(安室氏)
同社では、アクセスのしやすさはもちろん、表示スピードにまで目を向けて日々サイトを改善している。これらの取り組みが評価され、『トライベック・ブランド戦略研究所Webユーザビリティランキング2015』では、同社は「自動車・自動二輪」業界で2年連続1位、調査対象となった全150社の中でも16位に入ることができたという。