3つの事例からゴールの見直し方を解説
生田氏はゴールを見直すことについて、「定石を疑い、既存のゴールにこだわらず、ゴールの有効性を検証し柔軟に見直す。この3つが重要」だと述べた。セミナー内ではこれらの項目を体現している3つの事例を紹介した。
定石を疑ったサプリメントEC企業
基本的に同業界のビジネスゴールは、商品の定期購入をしてもらうことだ。そしてほとんどの企業が、ユーザーに単品購入やサンプル購入から商品理解を促し、その後メルマガなどで定期購入を訴求するという手法が定石となっている。
しかしこの会社は、オフライン施策や動画広告も行っており、ユーザーに一定の商品理解があることもわかっていた。そのため、オフライン施策や動画広告などに接触したユーザーに対しては、いきなり定期購入を訴求する施策を実施してみたという。
これまでの業界の常識を覆す施策だったが、結果としては飛躍的に成果が上がった。「このように今までの定石を疑い、ビジネスゴールから考えることが重要です」と生田氏は語った。
ビジネスに紐付いたゴールを設けた大手教育会社
この企業では、無料体験レッスンのキャンペーンを定期的に行っていたが、キャンペーンが未実施の時期にWebサイトへアクセスしてきたユーザーへのゴールをどうするかが課題となっていた。これまでは見学予約というゴールを設定していたが、体験レッスンほどの魅力を伝えられないからか、あまり成果が出ていなかった。
そこで、“無料体験レッスンキャンペーン開始に関するお知らせメールの登録”にゴールを切り替えたところ、入会数が爆発的に伸びたという。生田氏は、「無料体験レッスンがビジネスゴールなのであれば、そこにシンプルに紐づけてみるのも手。既存のゴールにこだわらず、成果までの道筋を設計することが大切です」とした。
仮説を見直したクラウドソフトウェア企業
BtoBのビジネスを展開するこの企業では、リードの数を増やすために製品資料ではなく、ソフトウェアを利用した業務に関連したホワイトペーパーを作成。そのダウンロードをきっかけに得られたリードに対し、営業が訪問するスタイルに変更した。
結果、以前の資料請求に比べてダウンロード数は爆発的に伸び、一見成功に見えたが、最終的なソフトウェアの導入はそれほど伸びなかった。原因は、営業が少なく増えたリードをフォローできなかった点、知見資料目的のユーザーだったため必ずしも導入を検討してもらえるとは限らなかった点にある。そこで、現在はゴールを資料請求に戻しているという。
「ゴールはあくまで仮説。有効性を見極めて、柔軟に見直すことがポイントです」(生田氏)
ファクトから顧客を理解したコーチ・ユナイテッド
次にユーザーを深く理解するためのコツを、生田氏は事例をもとに示した。
事例企業として挙げられたのは、習い事のプラットフォーム「サイタ」を運営しているコーチ・ユナイテッド。同社では、ビービットのウェブアンテナを活用し、同社が運営する「サイタカメラ教室」において、無料体験レッスンの申込数を導入前に比べ7倍に増加、CPAも30%減少させることに成功している。
同社が行ったユーザー理解に関する取り組みは主に2つ。それは「ユーザー行動を見て広告配信の調整に活かす」「LTVでキーワードごとの獲得ユーザーとサービスの相性を分析する」の2つだ。
前者に関しては、ユーザー行動を分析した結果、Facebook経由で来たユーザーは土日のレッスンを受けるケースが多く、検索経由だと平日昼間を選ぶ人が多いことがわかった。そこで、土日のレッスンが空いていればFacebook広告を強化し、平日が空いていればリスティングを強化することで、配信の最適化を行った。
後者では、CVに至った検索ワードを比較し「カメラ教室」と入力しているユーザーはLTVや継続率が高く、「写真教室」で検索してきたユーザーはそれらの数値が低いことを発見。そのデータをもとに、「カメラ」というワードの方が、同社のターゲットに合うと判断し、サービスの打ち出し方を変更することができた。
生田氏は、以上の事例を「聞くと当たり前に見えるが、実際に0から行うのは難しい」と語った。さらに、ユーザーの生の姿を実際に見ることもユーザーを深く理解する上では有効だとした。
「お客様を店舗内で観察してみたり、コールセンターで電話対応をしてみたりするだけで多くのインプットが得られるはずです」(生田氏)