グローバル企業5社の取り組むデータ活用
次に参加したのがオープニングサミット。Shazam CEO、Acxiom International CFO、IBM CDO、Caratのグローバルプレジデント、Yahoo! CROによる40分のパネルディスカッションになっている。タイトルは「How data drives value」。ここでは、5社の取り組むデータ活用を要約して列記したい。

ユーザー体験と広告効果の向上に取り組むYahoo!
Yahoo!は、ビックデータを「行動をデータにすること」と捉えている。利用者は一日4時間、スマホを使う。世の中では80万のアプリが利用されている。その行動を分析することで、ユーザー体験と広告効果双方を良くしていきたいという。
Watsonで非構造データの理解進めるIBM
IBMは動画などをダークデータ(非構造化データ)と呼んでいるが、同社ではコグニティブ・テクノロジー「Watson」によって解析、理解する取り組みを進めている。マーケターに対し、どのデータセットを使って分析し、アクションするのかを提案していく考えだ。
データの進化に必要なのは顧客体験の向上
Acxiomはデータ取得、販売を行っている企業だ。同社は、データの価値を進化させるには、人間の体験を良くすることが必要だという。エージェンシーやメディアが広告を使い、よりパーソナルな体験を消費者に提供することで、より良いデータが集まるようになるという。
データ活用を推進するCarat
電通の海外子会社として知られるCarat。以前はメディアのデモグラフィックに関しては統計情報をもとに見ていたが、デジタルエコノミーとなって変わった。消費者とのエンゲージメントを高める個別ターゲティングを行うようになり、データの収集だけでなく、データ活用に強みを持つ企業とのパートナーシップを強化している。
音楽認識データでヒットを予測
Shazamは、音楽認識ができるアプリを提供しており、ダウンロード数はもうすぐ10億を超える勢いだ。同アプリ上で得られるユーザーデータは、アプリが認識した音楽データと紐づいており、今後ヒットしそうな曲などが予測できる。プライバシーの課題を解決する必要がありつつも、広告主に提案できるようになってきたという。
海外で進む消費者視点のデータ活用
また、セッション内ではデータ活用の事例が紹介された。その中で特に面白かったのは、Yahoo!が行ったネイティブ広告のケーススタディだ。
モバイル向けに同広告を出稿する場合、冒頭に行動を促すメッセージを出すと、ROIが上がったという。さらにテレビCMではブランド名は最後に出すが、モバイル上の動画ではそこまで待ちきれないなどといったことがわかった。
今回セッション内では、「大量のデータをどう組み合わせ、新たな価値を生み出していくか」ということが語られてきた。広告主、エージェンシー、消費者、誰が主体に進めていくのかという至極当然な話だ。
しかしマスではなく個人にフォーカスされる広告が求められ、ネット、ITが組み合わさっていく過程でいかにデータを活用すべきか、一通りの課題が今回登壇した大手企業の議論で網羅されているのは面白い。
また、ヨーロッパと日本が違う点として、サードパーティのデータ提供会社が合法的に個人情報などを守って存在し、提供できるデータの幅を広げていることが挙げられる。小売の人間としては、ちゃんと消費者のことを考えたデータ活用が進んでいるのだ、と安心した。