SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

日本KFCがIBM製品を用いて、スマホアプリを軸にしたDMP活用を開始~その狙いと戦略に迫る

 デジタルをフル活用してキャンペーンを展開している日本ケンタッキー・フライド・チキン。そんな同社が、オプトの協力の下、データ統合とデジタルマーケティング強化に向けて導入したのが「IBM Marketing Cloud」だ。ツール選定の理由、導入成功のポイント、そして今後のマーケティング戦略は何か。日本アイ・ビー・エム 大島啓文氏が、日本ケンタッキー・フライド・チキン 塩谷旬氏、オプト 伴大二郎氏、大谷遥氏に切り込む。

みんなに愛されるケンタッキー、これまでのデジタル施策

大島:日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下、日本KFC)は、デジタルマーケティング支援を営むオプトの協力の下、「IBM Marketing Cloud」を導入されました。本日は、その背景にある意図や戦略を伺いたいと思います。

左から日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 マーケティング部 DIGITAL・CRM推進担当 マネージャー 塩谷旬氏、株式会社オプト マーケティングマネジメント部 マネイジングディレクター 兼 ブランドコミュニケーション・アナリティクス部 部長 伴大二郎氏、同社 マーケティングマネジメント部 プロジェクトマネージャー 大谷遥氏、日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコマース事業部 理事 事業部長 大島啓文氏
左から日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 マーケティング部 DIGITAL・CRM推進担当 マネージャー 塩谷旬氏
株式会社オプト マーケティングマネジメント部 マネイジングディレクター
兼ブランドコミュニケーション・アナリティクス部 部長 伴大二郎氏
同社 マーケティングマネジメント部 プロジェクトマネージャー 大谷遥氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコマース事業部 理事 事業部長 大島啓文氏

大島:そもそも、これまで御社ではデジタルマーケティングに関してどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。

塩谷:私が所属するチームは、大きく分けてデジタルプロモーションとCRM、2つの業務領域があります。デジタルプロモーションでは、新商品の発売やキャンペーン時期に合わせて、デジタル上での企画展開や広告出稿などにより様々なチャネルを通じてコミュニケーションを取っています。そして、CRMではこうしたチャネルを通じて“繋がった”お客様との接点を持ち、関係を作り、継続したコミュニケーションと情報の管理をしています。

大島:その中でなぜ、IBM Marketing Cloudを導入しようとお考えになったのでしょうか?

塩谷:メールマガジンや公式アプリなど、自社会員基盤の構築には昔から力を入れてきました。ですが近年になり、チャネルも増え、施策ごとにデータも分散しており、統合的なマーケティングが困難になってきているという課題が出てきたのです。これを解消したいことがきっかけでした。

大島:デジタルマーケティングにおいて、オプトさんはどのような協力体制を持たれましたか?

伴:デジタルを使ったマーケティングが重要になる中、事業会社だけでは施策からPDCAまですべてを回していくことが困難になりつつあります。こうした中、私どもは企業コンサルティングという形で事業会社のデジタルマーケティング推進役を担い、価値創出を支援しています。

大谷:日本KFC様に関しては、私が2015年4月から常駐してデジタルマーケティングの支援をしています。主に、デジタルマーケティング全般におけるKPIの設定や効果の可視化などを担当しており、デジタルマーケティングのPDCAを迅速かつ効率的に回す役目を担っています。

分断されていたメルマガ会員とアプリ会員の情報

大島:先ほど、デジタル戦略においてチャネルや施策ごとにデータが分散していたというお話がありましたが、データ規模でいえばどれくらいなのでしょうか。

塩谷:LINEやTwitterなどの友だち数は常時変化しており、そのほかにも様々なチャネルがあります。メールマガジンの会員数は250万人を超えておりますし、公式アプリも2016年9月には500万ダウンロードを達成しました。ところが先ほどもご説明したとおり、これらのコミュニケーションプラットフォームと、自社の顧客管理基盤がバラバラで、マーケティング施策が分断されていたのです。こうした状況を打破するため、お客様IDを統合し、顧客管理をステップアップしていきたいと考えました。

日本KFCが展開するチャネル。左から、公式アプリ/LINE公式アカウント/Facebookページ
日本KFCが展開するチャネル。
左から、公式アプリ/LINE公式アカウント/公式Facebookページ

大島:そうした課題はいつごろから顕在化したのでしょうか?

塩谷:2015年12月末頃です。この頃「カーネル通信」と「カーネルPontaクラブ」という2つに分かれていたメルマガ会員の統合を進めておりました。アプリ会員とのデータ連携も視野に入れていたため、各会員組織の位置付けを明確にしようと考え、大谷さんに相談しました。

大谷:具体的には来店調査をして、お客様がどのチャネルをきっかけに来店するのか実態を調べました。すると、購入者に占めるアプリ会員やメルマガ会員のお客様の比率が想定より高いことがわかったのです。Webやアプリの行動データも含めたIDを統合し、個客の可視化を行い、最適なコミュニケーションを行うことが、お客様とのエンゲージメント構築にとって非常に有用だと考えました。そこを一元化するための強力なプラットフォームが必要だったのです。

膨大なデータ量への対応、施策の自由度も選定理由

大島:様々なプラットフォームがある中で、IBM Marketing Cloudを選ぶに至った経緯とその選定ポイントは何だったのでしょうか?

塩谷:施策やデータが分散しているという課題に対して、どのデータを保持するかを含めて検討を始めたのが2016年1月のことです。そのころ丁度、アプリのダウンロードが進んでいき、2016年5月にアプリを軸にしてDMPを導入することで方向性が決まりました。

日本KFCにおけるデータ統合マーケティング全体像
日本KFCにおけるデータ統合マーケティング全体像

伴:日本KFC様のお客様にスマートフォンユーザーが増えている状況を受け、当社としても「モバイルのユーザーエクスペリエンスをいかに高めていくかがポイント」であると考えてツールを検討していきました。IBM Marketing Cloudはこの点、モバイル体験を重視した機能が豊富であり、SDKを通じて顧客行動のモーメントがしっかり把握できます。この特長を日本KFC様も高く評価され、導入が決定しました。

大谷:時期の話でいうと、2016年3月から統合プラットフォームのプロジェクトが本格化して、ツールを検討したのがその年の5月くらい。IBM Marketing Cloudに決定したのが7月で、そこから短期間で導入を進められました。

大島:DMPを活かす方向としてスマートフォンアプリを主軸にすることが決まり、その目的に合ったツールとしてIBM Marketing Cloudを推薦したわけですね。

伴:そうです。まず、日本KFC様が全デジタルプラットフォームでお持ちの膨大なデータ量を処理できるスピードを確保できるかがポイントでした。たとえば毎年クリスマスの時期に非常に多くのトランザクションが発生します。そのような時にも十分に処理できるパフォーマンスがあるかどうか、日本KFC様に慎重に検討いただきました。

 それに加え、今後展開する施策について、ある程度の自由度があることもポイントでした。あれはできるけどこれはできない、というツールは避けたかったのです。IBM Marketing Cloudはこの点をクリアし、また当社が運用サポートをさせていただく中でミスが起きにくく、運用しやすいことも評価ポイントだったと伺っています。

大谷:細かい話になりますが、日本KFC様にIBM Marketing Cloudをご提案した際に、位置情報に基づいたキャンペーンが打てる点も、今後の活用を考えると魅力的であるとのお声をいただきました。また、メールの配信を個々のお客様のメール開封時間に合わせて最適化できる機能がある点もご好評でした。

顧客IDの統合を進めるための工夫

大島:今回の導入プロジェクトに当たり、日本KFC様の社内マネジメントは塩谷さんが中心になって進められたかと思いますが、その点で工夫した点があれば教えてください。

塩谷:会社として、かねてよりデジタルマーケティングには注力してきました。そのため、社内での‘デジタル’に関する意識はとても高く、大きな追い風になりましたね。

 一方で、デジタルマーケティングの領域は流れが速く、次々に新しい仕組みも登場するので追いかけるのは大変です。どうしても現場のマーケターやマネジメント層、その他の領域担当など、立場によって情報量に差はついてしまいます。そのギャップを埋めるためにじっくり腰を据えて、社内に対して説明していく必要はありました。たとえば、「そもそもCRMとは何だろう」というテーマからCRMの定義を考え、「では日本KFCとしてやるべきCRMとは何か」を考えてみたり、まずは「CRM」「DMP」というキーワードを浸透させることから始めてみたりと、いろいろな観点から理解を得られるように説明を続けていきました。

 また、おもしろい・新しいマーケティングの取り組みは世の中のニュースになりやすいので、「他社は○○をしているけど、うちもできないの?」と聞かれることもあります。その際に「私たちはこういった取り組みを通じて、××を実現させたいので、現在こんな準備をしています」と状況を説明できるようにしました。すると、今後の活動を見据えた取り組みをしている、と社内からの理解を得やすいと感じました。

伴:加えて、CRM基盤構築のプロジェクトの進捗を経営層に対して随時共有していただいたことも、今回の導入のポイントだったと思います。

「即断・即決・即実行」で進んだデータ統合

大島:先ほどのお話ですと、これまで分散していたデジタルユーザーの情報を統合することが今回のプロジェクトの肝だったと思いますが、その点に関しての工夫や苦労はいかがでしょうか。

伴:ID統合プロジェクトの場合、部門間のセクショナリズムが顕在化するケースもあります。日本KFC様の場合、そういうことはなく、各部門が協力的に進めてくださったので、非常にスムーズでした。

塩谷:当社は社員に対して「即断・即決・即実行」を標榜しており、その方針は浸透しています。いくら綿密に下準備をしても必ずしも成功するとは限らないですし、ならば「即実行!」ということで新しいマーケティング活動に乗り出すことができました。

大島:データ活用の観点では、現場のデータサイエンティストが「他部門のデータを活用したいけど、協力が得られない」という課題でつまずくことが多いのですが、日本KFC様の場合そうしたケースがないというのは、強みですね。

大谷:この取り組みに至るまで約1年半という期間を日本KFC様とご一緒させていただき、情報システム部の皆様や各ベンダー企業など、データ統合プロジェクトに関係する方々とじっくり信頼関係を築けたことも大きかったと思います。

購買前後の顧客行動を把握し、エンゲージメントを深化

大島:導入を開始して約半年ですが、これからはどのような取り組みをお考えですか?

塩谷:今回、統合IDを用いてお客様を統合的に見られるようになることで、アプリの起動やソーシャルでの行動など、購買前後の顧客の行動もある程度、把握できるようになります。こうした行動を分析し、将来的には、個々のお客様に最適なタイミングで最適なメッセージを送信し、よりエンゲージメントを深化させたいと考えています。

伴:これからのデジタルマーケティングは、一貫した顧客体験をどう作っていくかが鍵になると思います。IBM Marketing Cloudで、今後の施策に必要な要素は準備できましたので、今後の日本KFC様の顧客体験をより良いものとするべく、共に歩んでいきたいですね。

大谷:そうですね。当社の得意分野は、PDCAを回してマーケティング効果を向上させることなので、IBM Marketing Cloudを用いて、結果の出るコミュニケーション作りをしていくことが当面のミッションだと考えています。

「IBM製品は遠い存在」は思い込みだった! 成功例を作っていきたい

大島:最後に、私共、日本IBMに対して期待やご要望があればお話しいただけませんか。

塩谷:実は最初にオプト様からツールの提案を受けた時、「IBM社の製品なんて、私たちが活用できるものではない」というのが率直な感想でした。もっといえば、遠い存在だったわけです(笑)。ところが実際にオプト様の協力を得て導入してみると、思ったよりも身近な存在で驚きました。

 これからデジタルマーケティングをさらに洗練させていくために、成功事例を作っていきたいという思いがあります。その時、「IBM Marketing Cloudを活用することで、当社でも様々なことにトライできている」とアピールできればいいですね。そんな事例をどんどん作りたいです。

大島:私共も、日本KFC・オプト両社のお取り組みをしっかりご支援できるよう一層努めていきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

★「生涯にわたり購入してもらえる関係」を顧客と築くには? ロイヤルティー・プログラム構築の前に立ちはだかる5つの課題と、その解決方法をIBMが伝授します。詳しくはこちら

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2017/02/03 10:00 https://markezine.jp/article/detail/25650