PDCAで「隠れた需要」を掘り下げよう
――これからのマーケターに必要な、PDCAの新しい回し方はどのようなものだと思いますか。
冨田:まったく未知の状況に直面したとき、『鬼速PDCA』でいかに速く解決策を見いだせるかが、今後は非常に大切になってくると思います。
たとえば、ホテル予約。為替変動や所得の増加による旅行者数の増加など、単純に自社の課題を見ているだけでは見えない需要に対応していく必要があります。「外国人旅行者が増えている→自社のホテルには外国人旅行者が少ない→その理由はなぜなのか」というように、外的要因からPDCAを回し、速く解決策を見出した企業だけが、ブルーオーシャンに入ることができます。各ホテルや旅行業界のマーケティングをサポートする会社が日々PDCAを回して、海外への広告出稿を行ったり、MAを導入してリターゲティングを徹底するなどの対応ができれば、PDCAを回せない会社を大きく引き離していくと思います。
ファッション業界でもこうしたことは顕著で、お気に入りのブランドであればサイズ感や質感も予測がつくので、ネットで注文しやすい。そこに一番早く気づいた企業が先行して利益を得ています。これは今となっては当たり前のことですが、「どうしてネットだとリピーターが多いのか」という小さな疑問に対し、いち早くPDCAを回していたから成長できたわけです。
大切なのは、「リアル」でのPDCA
――デジタル領域で日々業務を行っている読者の方に向けて、PDCAに大切なことをお聞かせください。
冨田:Webだからこそ、対面の接客を意識してPDCAを回すことが大切だと思っています。
ある商品を売る際には、お客様のペルソナだけでなく、「その商品を売っている人のペルソナ」がすごく重要だと思っています。それがどういう人で、どういう言い回しで、どんなプロセスで売っているのかを考えることで、実際のお客様の心理状態を予測しながらマーケティングができます。
最近では、バナー広告やリスティング広告についてもよく知られていて、ユーザーさんが誤ってクリックをする確率も低くなっています。OSによっては、広告をスキップする機能までついています。
私は以前、大手証券会社で金融商品を対面で売っていた経験があり、お客様が喜んでいる顔や笑っている顔を何度も見ながら、何度もPDCAを回しながら仕事をしていました。こうした「売る側と買う側」というリアルの現場から、お客様のカスタマージャーニーをイメージしながらPDCAを回していく。そうすることで、どのようなサイトや広告が適正なのかを検証していくことができるのではないか、と思っています。
(了)
冨田 和成(とみた・かずまさ)
株式会社ZUU代表取締役社長 兼 CEO。神奈川県出身。一橋大学卒。野村證券にて数々の営業記録を樹立した後、シンガポールにてビジネススクールに留学。タイでASEAN地域の経営戦略を担当する。2013年、株式会社ZUUを設立し、「ZUU online」の運営や投資判断ツール「ZUU Signals」を開発する。近著に、『鬼速PDCA』(クロスメディア・パブリッシング刊)がある。