O2O・オムニチャネルへの可能性とID連携の価値
田端氏は次に、オムニチャネルやO2O目的の活用も進んでいると2つの事例を挙げた。
イーグルリテイリング:LINEを会員証として機能
小売業に多い施策として、ユーザーの購買履歴などのデータ取得を目指し、会員カードを発行することがある。しかしながら、複数サービスと提携しているポイントカードや来店頻度の高い店舗でないと、なかなか財布に入れて持ち運ぶことは少ない。

その中で、American Eagle Outfittersのアパレル製品の販売を行うイーグルリテイリングは、LINE上でバーコード表示ができる機能の提供を開始。これにより、財布にポイントカードがなくともポイントを貯めることができる。
ファーストリテイリング:店舗での積極的案内を実施する
ユニクロやGUなどのアパレルブランドを展開するファーストリテイリングは、店舗でのLINEアカウントの友だち追加を積極的に推進しているという。田端氏は休日、両ブランドの店舗に行った際に「レジ待ち列の近くに両社の公式アプリに関する案内にあわせて、LINEアカウントの友だち追加に関するチラシが貼ってあった」と語る。
また、田端氏は続けて、既存サービスとのID連携に関する事例企業としてAmazonを挙げた。同社はLINEでも2,000万以上の友だちを抱えており、Amazonの顧客IDと連携させる取り組みを進めているという。連携によってユーザーは、商品の注文情報などをLINEで受け取ることが可能になる。またAmazonもLINE上にユーザーの購買履歴などをもとにしたレコメンド情報を送ることができる。
この他にも田端氏はAIやIoTを活用する際にLINEを連携した事例なども紹介し、多彩な用途、目的で利用できることを示した。
「uno」のリブランディングにLINEを選んだ理由
続いて、田端氏は実際のクライアント2社を招き、事例についてトークセッションを行った。まず登壇したのは資生堂ジャパンの山ノ井千草氏だ。同氏がブランドマネージャーを務める「uno」では、LINEにて、パーソナルヘアスタイルBotサービス「uno roid」の提供を開始(現在は終了)。同サービスでは、LINEのトーク上で6つの質問に答えると、最適なヘアスタイリング方法を動画で提示してくれる。

パーソナルケアマーケティング部 フェイス・ボディー・メンズ室 UNOグループ ブランドマネージャー 山ノ井千草氏
山ノ井氏は今回のキャンペーンを実施した目的として、2016年に「uno」ブランドのポジショニングの再設定、ラインアップのリニューアルに関する認知拡大、そしてスタイリングに対する啓蒙活動を挙げた。その上でLINEを選んだ理由を3つ語った。
「1つ目はターゲットとしている10代後半から20代前半のにリーチできる点で、2つ目は彼らが手軽にコミュニケーションを行うアプリであり、ブランドが入ることで密な関係性が構築できるのでははないかと考えた点です。そして3つ目は、LINEのプラットフォーム上では、双方向でのコミュニケーション設定ができる点。これらの点が揃っているのは魅力的でした」(山ノ井氏)
資生堂ジャパンでは、ターゲットやLINEと同サービスの親和性を高めるため、診断結果にもとづいて送る動画フォーマットを縦型にするなどの工夫も行った。その結果、事後調査では「一般的なハウツー動画よりも自分に合ったものが提供されていた」と非常に満足度の高い結果となった。