スマホと名寄せ。ECを変えた2つの技術革新と会員化の流れ
MAのようなツールが出てきた背景には、テクノロジーの進化と、優良顧客との関係をより密なものにしていこうとする、サービス提供側の変化があるようだ。
押久保(MarkeZine) 最近、大手企業の方とお話しすると、MAを始めとしたデジタルマーケティングの活用の幅がすごく広がっていると感じます。
加來(バリューコマース) 一番大きいのは、やはりスマートフォンだと思います。メディアへの接点が従来のテレビや紙媒体からシフトし、デジタルへの接触時間が圧倒的に増えました。その影響で、これまでマーケティング施策は、「デジタル」と「リアル」、2種類のチャネルで別々に考えられてきましたが、それがデジタルを中心にすべきだという方向に進んでいます。
もうひとつ重要なのが、デジタルとリアルをつなげる名寄せができるようになってきたことです。私は過去、100サイト以上の顧客分析を行ってきましたが、やはり2対8の法則は存在します。2~3割のお客様が7~8割の売上を構成しているのは間違いないので、そういった優良会員を見つけ出すことが重要になってきます。その際、ソーシャルを見て来店した、お店でこれを買ったお客様がECサイトに来たといった具合に、デジタルとリアルをつなげて分析できるようになったのは大きいと思います。
小澤(ヤフー) 優良なユーザーの会員化ですよね。Amazonプライムしかり、楽天カードしかり。ECではこの流れが主流になると思います。
「LTVマーケティング元年」の今年。手本にすべきは旅行業界
EC業界の潮流、MAの活用法などさまざまな話題が飛び交った今回のパネルディスカッション。最後に今後の展望について両名の口から語られ、締めくくりとされた。
押久保(MarkeZine) 最後におふたりから、今後のECやマーケティング領域に関してひとことずついただけますか。
加來(バリューコマース) 今年は「LTVマーケティング元年」だと思っています。よく「個」客対応などと言いますが、どんなお客様がロイヤルカスタマーになりそうなのかを見極めることが、今後のEC事業者にとって重要になるでしょう。ロイヤルカスタマーが増えれば、全体のピラミッドは必ず大きくなります。いかに優良顧客としっかり向き合えるかが、ECやデジタルマーケティングを成功に導く鍵になると思います。
小澤(ヤフー) MAはCVRやリピートに効くツールです。これをバランス良く使いこなすことが重要で、いい道具を選べば、結果が伴うことはYahoo!ショッピングで実証済みなわけです。それに関連して、今後のECを占うという意味で、注目したいのは旅行業界です。
ここは最も競争が激しい。なぜなら、物流が無関係だからです。どこから買っても同じなので、お客様はすぐ乗り換える。その分、顧客の奪い合いが熾烈になっています。MAにしてもマーケティングにしても、一番頑張っているのは旅行業界だというのが私の認識です。これらのサイトをよくご覧になっていただくと、勉強になるのではと思います。(了)