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表面的な「データドリブン」が施策を迷走させる データの見方が180度変わる「デジタル行動観察」

ユーザーの行動はマーケターの予想を100%裏切る

押久保:では実際にユーザグラムではどういったことができるのでしょうか。

三宅:ユーザグラムはクラウドタイプの“ユーザー行動観察ツール”です。まず観察対象のユーザーを、行動を指定して抽出するか、クライアントが持っている顧客IDを使って抽出します。たとえばロイヤルティプログラムを持っている場合は、その中の優良会員のIDだけを入力して抽出するといったことができます。ちなみにユーザグラムでは個人情報を持たない仕組みなので、セキュリティ上も安心ですし、複雑なシステム連携をせずに、クライアントが保持する最新の顧客情報に基づいて分析ができます。

クライアントが持っている顧客IDを使って、観察対象のユーザーを抽出する
クライアントが持っている顧客IDを使って、観察対象のユーザーを抽出する

 使用いただくシチュエーションとしては、日々のマーケティング活動における細かなスパンでの施策の効果検証と改善をメインに想定していますが、ビジネスインパクトが大きい長期的な戦略立案のタイミングでも使っていただけます。

 それでは、EC・メディア系のサービスメディア・教育・不動産など様々な業種の20社以上のクライアントとトライアルを実施したので、その結果を紹介させてください。

CVRへの貢献が多い動画が、実はムダだった〜美容系サービス会社の場合

三宅:ある美容系のクライアントのケースです。薬事法の関係で効能をダイレクトに表記できないため、それまでは商品の効果的な利用法などを2分ほどの動画にまとめてユーザーに理解してもらい、申し込みにつなげる形をとっていました。GAで、その動画を見た人が何人申し込んだか調べると、月に100件ほどありました。その数字だけを見て、「動画、効果あるね!」と評価されていたのですが、ユーザグラムで改めて顧客行動の文脈を調べてみると、まったく違っていたのです。まず、動画はほとんど見られていなかったんですよ。

押久保:そんなことが!

三宅:まず、サイトに入ってきたユーザーは、動画は見ずに、テキストの情報を詳しくチェックします。そして一旦離脱して、今度は比較サイトから入ってきます。それでテキスト情報をさらに細かく見る。この行動を3〜4回繰り返し、ほぼ決めたであろうタイミングでやっと、おそらく「他に情報はないかな」くらいな軽いノリで動画を見ます。

 でも、動画は元々、初心者向けに簡単な情報しか載せていなかったのです。そのためユーザーには物足りないと感じられ、10秒も経たないうちに消されてしまうのですね。それから申し込む。こういった流れをたどるユーザーがほとんどでした。

押久保:なるほど。動画はCVに貢献していなかったわけですね。

三宅:そうです。こうして見ることで、「動画は不要」とか「動画の内容を詳細なものにすべき」といった正しいアクションにつなげられるわけです。このアクションには「動画を見た顧客が100件CVした」という定量的な情報だけではたどり着けないでしょう。

そのリニューアル、必要ですか?〜ハイブランド中古品売買ECサイトの場合

三宅:次にご紹介するのが、ハイブランドのリユース業をされているECサイトです。元々新規会員獲得に注力していたのですが、優良会員が全体の売り上げを押し上げていることがわかっていたので、優良会員一人当たりの売り上げを増やすことを戦略にしました。

 そこで、優良会員にお目当ての商品を見つけてもらうために、サイトトップのナビゲーションを改善してブランドごとの商品情報をわかりやすくしたり、サイト内検索を充実させたりする大型のサイトリニューアルを計画していたのです。

 ところがユーザグラムで行動観察してみると、優良会員は高級住宅街に住む40~50代の女性が多く、彼女たちはサイトトップからは商品を探していなかったことがわかりました。むしろ重要な導線はメルマガで、メールが届いた途端に新着商品の中の自分の好きなブランドだけをチェックし、気に入ったものがあれば即決する傾向があることがわかりました。

 だから、大規模にサイトを改修するのではなく、好きなブランドの新着商品だけをお知らせするメールを新たに配信するほうが、はるかに効果が大きいことがわかったのです。

押久保:なるほど。優良会員の売り上げが大きいという数字だけで施策を決めていたら、必ずしも効果に結びつかないサイトリニューアルを実施していたかもしれないわけですね。定量データだけでは正しい施策を選べないことがよくわかりました。

マーケターが直観的に判断できるデータが簡単に見られるので、ユーザー行動についての「思い込み」を修正できる
直感的に判断できるデータからの気づきが、ユーザー行動についての「思い込み」を修正してくれる

三宅:総じて、ユーザグラムを使用するまで持っていた仮説が正しかったクライアントは皆無でした。具体的な仮説を持つことの重要性を知っている熱心なマーケターほど、ユーザー行動ログを食い入るように見ていましたね。

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ユーザーを理解せず、数値目標を掲げることの危うさ

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/04 13:00 https://markezine.jp/article/detail/26266

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