GIF動画を日常的に楽しむスマホ世代
――大野さんが運営されている「GIFMAGAZINE」は、どのようなメディアなのでしょうか。
大野:「GIFMAGAZINE」は、エンタメ好きなスマホ世代向けの“ショートムービーメディア”です。端的に言えば、GIF動画版のYouTubeやInstagramですね。誰でもアカウントを作ってGIF動画を投稿することができるようになっており、多くの作り手が集まってきてくれています。もちろん見て楽しむだけのユーザーも数多くいます。
――どのくらいのアクセスを集めているのでしょうか。
大野:「GIFMAGAZINE」のサイト内での再生回数は、月間6,000万回。さらに「GIFMAGAZINE」からSNSへシェアされることで、さらに多くのコンテンツビューが生じています。Twitterでは2,300万回/月、Facebookでは7,500万回/月の再生回数があります。「GIFMAGAZINE」から操作すると各SNSへ投稿しやすいこともあり、GIF動画のプラットフォームとしての側面も持っています。
今、なぜGIFがリバイバルしているのか?
――GIF動画が昨今、再び注目されるようになった背景は、どこにありますか?
大野:GIFの歴史は長く、1980年頃に生まれた形式です。1989年にアニメーションの機能が追加されました。その後、Flashの普及や通信回線の高速化にともない、2000年代の後半にかけて次第に廃れていったのですが、2010年を境に再び脚光をあびるようになってきました。
――2010年というと、iPhone3Gが登場してスマホの普及が加速化した時期ですね。
大野:はい。GIFの復権にはスマホの流行と切っても切れない関係があります。2010年ごろにリバイバルが起きたのは、「iOSがFlashに対応していないこと」「GIF動画には瞬間的に楽しめる爆発力があり、スキマ時間に楽しめるのでスマートフォンとの相性が非常にいいこと」という二つの大きな理由が考えられます。
GIF動画の再生はどんなブラウザでもできますし、容量が軽いので移動中の通信環境がよくないところでも、サクッと見ることができる。
――スキマ時間で楽しむには格好の条件がそろっていたために、スマホ世代の心をつかんだわけですね。
大野:もはやGIFは単なるファイル形式ではなく、スマホに最適化された動画体験の代名詞といってよいのではないかと思います。なにげなくTwitterやニュースアプリなどのタイムラインを流し見していたとしても、“短尺・クリックレス再生・自動ループ”のGIF動画なら、パッと目を引きます。ストレスなく視聴できるためスマホ世代へのリーチが抜群で、ブランディング広告の手段としての価値も再評価され始めています。
毎年ファンが待ち望む川崎フロンターレのGIF動画
――確かについ見てしまいますし、急にタイムラインで再生が始まっても短尺だから「なんだCMか」みたいな抵抗感がないことが新鮮です。生活者のスマホに自然に入り込んでいけそうですね。実際に「GIFMAGAGINE」でGIF動画を企業が活用された事例を教えていただけますか?
大野:これは川崎フロンターレ様がエイプリルフールのネタとしてGIF動画を活用された例です。
(c)KAWASAKI FRONTALE Co. Ltd. (c)瀬川三十七 via GIFMAGAZINE
川崎フロンターレがファンの間で“おフロ”と呼ばれることから、古代ローマ時代の浴場をイメージした絵画の中に、選手たちが風呂桶を持って登場するGIF動画を制作しました。「『川崎フロンターレ』のクラブ名の由来が、2000年前の古代ローマ時代の銭湯の経営にあったことが判明。今でも当時の名残で『おフロんた~れ企画』を度々開催しています。」というコメントとともに投稿したんです。
するとSNSでも拡散し、「フロンターレの広報さんはセンスいい!」、「試合の日にも関わらず、小ネタを忘れないの素敵です(笑)」などと大きな反響をいただけました。「GIFMAGAZINE」サイトで192,331回再生されて、Instagramでは「いいね」3,260件、Twitterでは1,441件のリツイート、「いいね」が2,238件、Facebookでも「いいね」1,725件でした。
――川崎フロンターレのGIF動画は「GIFMAGAZINE」のクリエイターさんが制作されたのでしょうか。
大野:そうです。制作はもちろん、「GIFMAGAZINE」での配信・ブランドリフト調査までワンストップでご提供しました。独自の世界観を持った人気のクリエイターさんに広告クリエイティブの制作を依頼することができるうえに、配信の設定や調査の手配をしなくて済むのが私たちの強みです。
さらに、制作したコンテンツは、広告主様のオウンドメディアやSNSや店頭などで使用可能である点もクライアントには評価いただいているようです。
スキップされず、一瞬でブランドの魅力を訴求できるGIFの実力
――ブランドが「GIFMAGAZINE」に出稿することと、どのような効果が期待できるのでしょうか。
大野:ブランドの認知・理解促進が得意領域なので、活用のされ方としては、テレビCMに近いですね。
「GIFMAGAZINE」のユーザーは18歳~34歳が70%を占めており、男女比は半々です。閲覧環境はスマートフォンユーザーが9割を占め、圧倒的に多くなっています。
実際に出稿いただいている広告主の例でいうと、育児用品メーカーの「ピジョン」、メディア事業の「KADOKAWA」、ファミリーレストランの「デニーズ」、コンビニエンスストアの「ローソン」などがあり、若いスマホ世代に男女問わず幅広くリーチしたい広告主様にご活用いただいています。
あるPCメーカーにご出稿いただきブランドリフト調査を行ったケースを紹介しますと、GIF動画を見たユーザーは非広告接触者に比べて、動画で見た商品に対して「若者向け」「個性的」「おしゃれ」「親しみやすい」といった印象を強く感じるようになりました。GIF広告はブランド意識を「若者向け」に誘導したい場合有効だといえます。
――動画広告といえば、まず思い浮かぶのはYouTubeではないかと思うのですが、YouTubeとGIF動画には、どのような違いがあるのでしょうか。
大野:長尺でストーリーを見せるYouTubeと異なり、パッと見でおもしろい3秒ほどのコンテンツがそろっているのがGIF動画ならではの特長です。YouTubeの動画広告のように、スキップするスキを与えないうちに、商品の魅力やブランドを印象づけることができます。
――スキップするスキを与えないというか、自然にスタートしてさくっと終わるので邪魔にならず、そもそもスキップしようという気にならないですよね。再生ボタンを押す必要がないことも大きいと思います。
大野:その意味で、他の動画広告に比べてブランディングに有利だといえます。
――YouTubeと使い分けたいというブランドも多いと思いますが、いかがでしょうか。
大野:確かにYouTubeでのブランディング施策は有効ですが、ただせっかくYouTubeの用の長尺動画を作るのであれば、ダイジェスト版として、GIF動画も作っていただくのがおすすめです。長尺動画は時間内に濃淡をつける必要があるのに対し、GIFは一瞬一瞬が見せどころなので、生活者への届き方が違います。だからこそ、併用していただくとより大きな効果が得られるはずです。
ラグジュアリーな訴求や映画のような体験も創り出せる
――「GIFMAGAZINE」のクリエイターさんには、どんな方がいますか?
大野:映像のプロから、マンガ家まで様々なクリエイターが参加してくれています。私はよく「GIFは映像の最小単位」だとお話しするのですが、GIFは短いので映像の専門家でなくても参入するのが簡単です。手描きのイラストレーターやフォトグラファーのような静止画専門の方でも、数枚をつなげればGIF動画にすることができますから。
ラグジュアリーな雰囲気からお笑いネタのようなものまで、多彩な表現ができるため、ファッション・動物・グルメ・漫画など、様々なジャンルで投稿されています。
――GIFのクリエイティブ面での魅力はどのようなところにあるのでしょうか。
大野:パッと見はただのラーメンの写真でも、アニメーションで湯気を動かすことで、より美味しそうに見せることができます。レンズに水滴を飛び散らせて撮影した、ピンク色の花を握りしめる手の画像も、別アングルのカットをつなげて滑らかに動かすことで、水滴が張り付いた回転するガラス壜をのぞき込むような感覚を惹起したり。リアルタイムで撮影しただけの映像ではないからこそ、作者の視点が凝縮されるんですよね。
ループされる特徴を使って、髪を揺らし振り向きざまにウインクを投げかけ続ける女性や、水が落ちているのにいつまでたってもコップがあふれないなど、あえて違和感を出すことで、視聴者を惹きつけることもできる。不思議と見入ってしまうんです。こうした効果を駆使して、記憶に残るクリエイティブを作ることができるのは、GIF動画の魅力のひとつでしょう。
インパクトが強いため、TwitterをはじめとするSNSでも拡散されやすい。ジワジワとコンテンツが流通していくのは、GIF動画ならではだと思います。
芸能事務所やテレビ局の公式コンテンツも続々登場
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
大野:現在、「GIFMAGAGINE」のプラットフォームを大きくしていくために、芸能事務所やテレビ局、出版社やスポーツクラブ、アニメ制作会社など、コンテンツをお持ちの企業とどんどん提携を進めているところです。
同時に、広告主様の商品やサービスをよりよく伝えられるクリエイターを増やす施策もどんどん仕掛けていくことで、企業のみなさまに活用していただきやすいメディアへと成長していきます。
――公式コンテンツが増えることで、オーディエンスもクリエイターもさらに層が厚くなりそうですね。今後の動向も注目しています。今日はありがとうございました!