表面化するブランドセーフティの問題
2017年3月、イギリスの新聞紙「タイムズ(The Times)」が、「YouTubeで公開中の過激主義者の動画に、大手企業の広告が配信」と報じた。この報道が発端となって、YouTubeに出稿する広告主や広告代理店は早急に対応を迫られることとなる。
フランスに本社を置く広告代理店ハバスは、イギリスにてYouTubeへの出稿を全面停止。これに呼応するかのように、ナショナルクライアントが複数社、次々と出稿停止を決断していった。
出稿した広告が、適切な場所(プレイスメント)やタイミングで配信されず、広告主のブランドセーフティが問われる問題は、以前から国内外で見え隠れしていたが、タイムズの報道が象徴するように、今こそ本気の対応が求められている。
Teadsの共同設立者であるピエール・シャパズ(Pierre Chappaz)氏の第一声もまた、ユーザー本位の広告配信をポリシーに掲げる同社らしい、世界的な広告事情を踏まえながら根本的な問題意識をうかがわせる内容だ。
「Teadsの創業時からのポリシーにも深く関わるのが、広告主さまが安心して広告配信できるよう信頼性を担保できるプレミアムな媒体でのみインリード広告を配信するということ。きちんと質を担保した上で量をともなうことで、良質なプレイスメントによる広告配信を実現しています。
独りよがりになることなく、第三者機関を通じてブランドセーフティを証明できていることから、世界の各企業でTeadsのフォーマットが重宝されています」(ピエール氏)
ブランドセーフティを重要視するTeadsの理念
Teadsは2011年に創業。アウトストリームの動画フォーマットを広告主に提供し、昨今はモバイル向けに注力。世界で600を超えるプレミアムな媒体社がTeadsのプラットフォームに参画中で、日本では日本経済新聞や朝日新聞、東洋経済オンラインなど、様々なメディアパブリッシャーが配信先となって、コンテンツ内でインリード広告を展開している。
Teads全体では、月間12億ユニークユーザーへのリーチを誇り、そのうち60%がモバイルとなる。そして同社は、配信プラットフォームとして3点の項目を遵守している。
1.プレミアム広告在庫への出稿
2.ビューアビリティの保証(視認性の確保)
3.ユーザーファースト(媒体読者本位であることの徹底)
1点目の項目と紐づくのが、ブランドセーフティへ取り組む姿勢だ。プレミアムな媒体であっても、“テロ”“事件”“事故”など、悲痛で神妙、厳粛な内容を伝える記事内に、空気を読まない場違いなブランド広告の配信が適当だろうか? Teadsでは、これらも広義のブランドセーフティと捉え、記事内におけるNGワードを厳密に規定。グレープショット社のキーワード解析ツールを用いながら、NGワードのある記事には配信しないよう管理している。
こうしたプレミアムへの需要が強まるきっかけをもたらしたのが、隆盛をきわめてきたYouTubeなどの動画共有サービスで配信するプレロール広告である。
「ここで問われるのが、コンテンツの本編が適切なのかどうか。動画解析をして適切と判定した動画の前にだけ配信できれば理想ですが、そうした技術はまだ確立されていません。CGMというプラットフォームの特性上、技術的に100%阻止できないことは、ブランドセーフティを担保できないということです。改めて英タイムズの報道は、黙殺されがちだった広告配信事情に、敢然と光を当てたわけです」(今村氏)