ノウハウが属人化しがちな発注作業をICTで底上げしたい
――実際に導入された小売事業者の反応はいかがですか。
神林:3月末に提供を開始し、既に数社にてテスト的に利用いただいておりますが、反応はよいですね。スーパーマーケット業界は人材不足の傾向にあり、かつてのような職人技による発注は過去のものになりつつあります。少ない店員数で業務を回していくために、ICTの活用は必須と言えるでしょう。
ただ、「販売予測システム」についてご説明する時に、AI技術については拒絶反応をいただくこともあります。世の中があおりすぎているせいもあってか「仕事をAIに取られる」という心配を持たれるようです。実際にはAI技術は敵ではなく業務を手伝ってくれる頼れる存在なのだと認識してもらえるよう、努力を続けたいと思っています。
山崎:店舗の担当者の方が日々こなしている業務って、まだまだ機械には真似できない、非常に高度なことです。たとえば「お客様の服装」を見て何を売るか判断するカリスマ的な店員さんは、ECにおける購買予測エンジンを磨き上げる上でも「先生」なんです。
ただ、ノウハウをロジック化できておらず、スキルが属人的になりがちなので店舗スタッフによってパフォーマンスに差が出てしまいます。そこにICTを活用することで、人間の力を補完して全体的な底上げができることを知っていただきたいですね。
仕入れ精度はスーパーマーケット社員だった頃の神林氏を超えた!
――今後については、どのような展開をお考えですか。「販売予測システム」や御社のこれからについてお聞かせください。
山崎:「販売予測システム」については偶然の産物で、神林さんとの個人的なつながりがあったからこそ実現したものです。このシステムの開発を通じて、私たちの「販売予測」ロジックがECのみならずリアル店舗でも有効だということが示されたのは、大きな自信となりました。
私たちの予測テクノロジーが使える業界はまだまだあるはずだと感じています。たとえば、遊園地の来場者数予測にも使うことができるでしょう。もしかしたら、渋滞予測やメディアのPV予測なども可能かもしれません。今後はそうした他分野への展開も意識していきたいと考えています。
神林:私自身はやはり小売業界の未来が気になります。時給2,000円でもパートが集まらないというくらい人が不足して、業務が回らなくなってきていると聞きます。そんな状況だからこそICTの手を借りて業務を効率化することを訴えていきたいですね。
「販売予測システム」の発注能力は、100%に近い精度で販売を予測する「名人」クラスの売り場担当者には及びません。でも、スーパーに務めていた当時たまに発注をかけていた私よりは断然精度が高いのは実証済み(笑)。だから自信を持ってお薦めできます。