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今だから始める!カスタマージャーニーマネジメント入門

コンペや営業の勝率を上げるには、カスタマージャーニーを使う!ストーリーファーストの提案方法とは

カスタマージャーニーを基にストーリーを組み上げる

 では、カスタマージャーニーを企画書上で適確に活用するにはどうすれば良いのでしょうか。それは、ストーリーを組み上げることです。すなわち、機能やコンセプト、クリエイティブなどを、データを軸に一連のストーリーに仕立て、物語るわけです。

【営業・コンペにおけるストーリーテリングの骨子】

・顧客ブランドの買われ方・選ばれ方はどうなっているのか、どこに問題があるのか

・問題が起こる原因のメカニズムは何か

・原因に対して、どういった仕掛けで変化を起こすべきなのか

・仕掛けによって、カスタマージャーニーがどう変化するのか

・その結果、集客や売上がどれ位向上することが期待できるか

 カスタマージャーニーの考え方を借りると、原因と問題から始まり、必要な変化、変化を起こす方法、変化を起こした時の成果の期待値までの「一連の変化」についてのストーリーテリングを行うことができます。

 ちなみに、”変化を起こす方法”の部分が、売り物が登場する箇所です。このように、カスタマージャーニーベースで、「課題→変化→根拠」の順でストーリーテリングしていく訴求を「ストーリーファースト提案」と私は呼んでいます。

 ストーリーファースト提案のポイントは、冒頭に、カスタマージャーニーの変化のストーリーを持ってくることです。提案したいモノやサービスの説明などは後回しにします。

ストーリーファーストの提案テクニック

 ここから、実践的な話に移ります。今回はカスタマージャーニーを使った営業・コンペにおける提案のテクニックをいくつかご紹介します。ストーリーファースト提案では、その名の通り「ストーリーを語ること」を重視します。

 具体的には、カスタマージャーニーを軸として、最終消費者の課題は何か、現状のカスタマージャーニーをどう変化させるべきか、それにより期待できるビジネスの成果、その実現に適したソリューションという順で営業ピッチを進めます。

 また、先述した「データのように見えるが、データではない」という問題を避けるため、カスタマージャーニーはデータドリブンで作成することを前提とします。

●ストーリーファースト提案を実現する4つのステップ 

[STEP1] 実績・事例紹介

[STEP2] ファクトファインディング

[STEP3] 原因分析

[STEP4] 企画提案

[STEP1] 実績・事例紹介

 まず、営業マンが売りたい自社のソリューションやサービスの過去実績を紹介するシーンを考えます。営業の中でよくある場面の1つだと思いますが、ここでカスタマージャーニーという”見せ方”が力を発揮します。

 まず自社の提案やソリューションの実績を数値に落とし込みます。「潜在顧客の顕在化25%UP」や「集客率50%UP」などです。そしてこれらの”数値”が過去事例で得られたジャーニーを書きだします。つまりクライアントの課題をどう解決し、ビジネスの成果がどう変化したのかという実績のストーリーを、図で紹介するわけです。

図:問題を解決して、ビジネスの成果が上がったという実績のストーリー

 またその際、いかに顧客が納得できるストーリーとして過去実績を語れるかが重要になります。聞き手である顧客は「どう成果につながったのだろうか? ウチでやった場合、当てはまるだろうか?」と考えながら話を聞いています。

 したがって訴求すべきは機能ではなく、顧客のどんな課題を解決したから成果を上げることができたのか、という「課題を解決する仕組み」です。そこをジャーニーで視覚化することで、成果を生み出すロジックをスムーズに理解してもらうことができるのです。

[STEP2] ファクトファインディング

 実績や事例を紹介した後は、具体的な提案を行う前に、まずはクライアント企業の現状のカスタマージャーニーにおける、「機会損失の診断」を行います。ビジネスゴールに対して現状どのような問題があり、どれほどの機会損失が起きているのかをデータで示すことで、クライアント側の問題意識を膨らませ、解決すべき優先課題として認識してもらいます。

図:現状のカスタマージャーニー上の問題箇所と機会損失のストーリー

 これは、営業ではファクトファインディングに相当します。ファクトファインディングにおいて重要なのは、顧客が「コストをかけてでも解決すべき問題はこれだ!」と確信できる課題を見つけ出すことです。

 この課題の特定に、カスタマージャーニーを使います。現状のカスタマージャーニーの問題を診断しながらファクトファインディングを行うことで、顧客企業の先にいる消費者の視点を落とすことなく、顧客企業の担当者と与件を整理していくことができます。カスタマージャーニーの問題は、大きく以下の3つの類型に分けられます。

1.カスタマージャーニーの停滞

→カスタマージャーニーから離脱はしていないが、進んでもいない状態

2.カスタマージャーニーからの流出

→そもそも商品カテゴリー自体から離脱した

3.競合ブランドへのスイッチ

→消費者が自社ではなく競合の商品を選んだ

(出典:カスタマージャーニーの教科書 9章

 これらの類型を用いてカスタマージャーニー上の問題を診断し、機会損失額に換算することで優先課題を特定していきます。また同時に、機会損失額を提示しながら、その問題を解決するためにどの位のコストを捻出できるのか等のテストクロージングを行っていきます。何度か営業機会を重ねる提案営業などであれば、ここで課題を特定して一旦持ち帰り、その課題を解決する企画を作成して再度商談を行います。

次のページ
提案に求められるインサイトマッチとストーリーテリング

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この記事の著者

村山 幹朗(ムラヤマ ミキオ)

 株式会社コレクシア 代表取締役。APRC/JMRAアニュアル・カンファレンス2016にてカスタマージャーニーの現場活用をテーマにした発表で最優秀賞を受賞する他、アカデミアと実務家の連携によるカスタマージャーニー研究会「JEXIS」を主宰する等、カスタマージャーニーの理論研究と実践の両輪でマーケティング支援を行う。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/06/23 12:00 https://markezine.jp/article/detail/26558

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