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MAの目的は売上UPだけじゃない!「顧客体験」にこだわる三陽商会が設計するコミュニケーション戦略とは

データベース連携で、きめ細やかでタイムリーなメールを自動送信

 まだ導入して日が浅いので、顧客行動の中長期的な観察にまでは至っていないが、CCMPの導入により確かな効果が出始めていると安藤氏は語る。

 まず、連携されるデータベースが増えたことで、それまで使っていた単純なメール配信システムより実現できることが増えた。たとえばデータ作成の場合、以前のメール配信システムでは、会員情報とECでの購買履歴を基に、手動で作成を行っていた。

 CCMPでは、「会員マスタ」「ECと実店舗両方の購買履歴」「商品データ」「お気に入りブランド」「お気に入り商品」「カート投入商品」など、様々なデータを日次でインポートしている。各データテーブル同士を、一元化されたIDをもとに連携させているため、複雑なセグメントであっても、管理画面上で自由に切ることが可能だ。それだけでなく、そのセグメントされた対象者に送るコンテンツさえ決めておけば、データ抽出から配信まで自動化ができる。

 こうして、手動でのデータ抽出や加工、そして配信などの作業にかけていた工数を大幅に削減でき、顧客のアクションに対してタイムリーにコンテンツを配信することが可能になった。

 「CCMPの導入前は、システムベンダーからカート放棄した顧客のデータをもらい、それと会員マスタを紐付けしてからメールを作成し、配信テストを経て本送信していました。CCMP導入後はカート放棄のデータを日次で連携したため、あらかじめ配信ロジックさえ組んでおけば、カート放棄のお客様に対して時間を空けずにリマインドメールを配信できます」(安藤氏)

 また、新作紹介メールに関しても、顧客ごとにパーソナライズした内容をタイミングよく自動的に送信できるようになった。

 以前のシステムでは、メールで紹介したい商品を一つ一つ手動で選択し、メルマガに挿入していた。配信準備には大変な手間がかかり、週1~2回の配信が限界だった。当然パーソナライズまで手が回らず、全会員に同じクリエイティブのメールを送っていた。

 「現在は、顧客データベースに格納されている『お気に入りブランド』のデータを取り込んでメールを自動送信できるようになりました。自動化による工数削減のおかげで、配信頻度も増やすことができ、新作入荷の度に送れるようになりました。こうしてタイミングを逃さず、かつお客様のニーズに合わせた情報を送ることで、メールの効果が向上したと考えられます」(安藤氏)

 タイムリーな配信により、メールの効果は飛躍的に向上した。たとえば、カートに品物を入れたまま離脱してしまった顧客に「カートに品物が入っています」とカート放棄された商品をリマインドするメールでは、従来に比べ開封率が1.3倍になり、コンバージョンは3倍になった。また、新作紹介のメルマガでは、開封率が1.5倍、コンバージョンは1.4倍にまで伸びた。

MAツール最大の効果は「担当者の気づきの時間」が得られたこと

 そしてCCMP導入の最大の効果は、「実際に業務を回している担当者が、『気づきの時間』を確保できたことです」(安藤氏)という。

 「コミュニケーション戦略を考えていく際、『現状の問題点』や『本来やるべきこと、やりたいこと』の分析は欠かせないのですが、目の前の業務に追われているとつい後回しにしてしまいがちです。データはあっても本来やるべき戦略立案の時間が取れなければ、イノベーションは起こせないのです。通常作業の負荷を軽減でき、コミュニケーション全体に対する気づきの時間を確保できたことが、三陽商会がCCMPを導入して得た最大の効果だと考えています」(安藤氏)

 今後、三陽商会はメールやアプリ、SNS、ECサイト、実店舗など各種メディアやチャネルでパーソナライズ化を推進していく。また、現状ではMAをECでのメール施策中心に使っているが、今後はMAで蓄積した様々なインタラクションデータから得られた気づきを、CS(顧客満足)対策・商品企画・生産計画・店舗在庫の配分などにも活用して、顧客体験の向上につなげていく予定だ。

 

 MAの活用をパーソナライズしたメールを適切なタイミングで送信する「コミュニケーションツール」にとどめず、全社的に優れた顧客体験を提供するための「プラットフォーム」として活用していくのが三陽商会の戦略だといえる。

 「『モノづくり=商品力』は、三陽商会の強みの1つではありますが、それだけでは顧客の心をつかむことはできません。今や、競争優位性の源泉は、『商品力の差』ではなく、『優れた顧客体験を提供すること』にあります。『商品を買ってもらう』のではなく『体験を買ってもらう』、つまり、お客様に使っていただくのは、『お金』ではなく『時間』だという視点に立って、これからのコミュニケーション戦略を進めていきたいと思っています」(安藤氏)

 こうした戦略を構築する上でも、CCMPがもたらした気づきの時間は役立つに違いない。「コミュニケーションを通じて顧客一人ひとりの『特別感」を演出し、ロイヤルティ向上を実現していきたい」と安藤氏は語り講演を締めくくった。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/07/06 18:03 https://markezine.jp/article/detail/26602

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