「脱東京」から読み解く、日本人の価値観変化
なぜ東京から離れるのか。地方の方が生活コストは安い、都会での満員電車や長時間勤務を避けたい、都会で子育てをしたくない、など理由は様々だ。また、地方創生の流れのなかで、地方で勝負したいという若者も多い。
このような人びとの行動は価値観の変化の表れであり、マーケターは、このような社会変化から何を読み取るべきだろうか。
「脱東京」が示すことの1つは、消費社会への疲弊と言っていいかもしれない。東京は生活コストが地方に比べ高い。その高い生活コストを稼ぐために、朝から晩まで身を粉にして働く。つまり、消費するためにストレスまみれになってお金を稼いでいるライフスタイルになっており、それに疲弊し始めているということではないだろうか。

実際に、多くの地方移住者から、久しぶりに東京を訪れたらすごく疲れた、という声をよく聞く。筆者もシンガポール在住で、東京に行くたびに感じることだ。疲れる理由の1つは、消費を促す情報が街の至る所に氾濫しているからだ。脳は無意識に視覚・聴覚から入ってきた情報を処理している。東京にいると脳が無意識に大量の情報を処理しており、知らない間に多くのエネルギーを消費し、疲れてしまうのかもしれない。
人びとが消費活動に疲弊してしまっているとしたら、経済活動は滞り企業の将来は悲観的なものになってしまうのだろうか。大量生産・大量消費の時代から続く消費を促すだけの広告やPRを続けるのならば、悲観的なものになってしまうだろう。しかし、この価値観の変化を理解し、新しい価値観に適応するならば人びとの賛同を得ることができるはずだ。

では次に、こうした価値観の変化が起こるなかで、企業はどのように振る舞えばよいのかを考えていこう。
