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創業70周年の老舗広告代理店「I&S BBDO」、国内外で支持される理由に迫る

 2017年6月に創業70周年を迎え、国内外のナショナルクライアントを中心に信頼される大手外資系広告代理店、I&S BBDO。BBDO Worldwideとしては、6月に行われたカンヌクリエイティブをはじめ、世界的な広告祭で毎年数々の受賞を誇る。様々な企業や組織に常に信頼を寄せられる理由とは? クリエイティビティに溢れるマーケティング支援業務のあり方を中心に、自社メディアの開設や今後の展望を含めて、広報の阿久澤騰氏に話をうかがった。

世界的な広告賞で受賞を続ける凄み

 2017年6月、フランス・カンヌで開催されたカンヌクリエイティブにおいて、名だたる世界的な広告代理店ネットワークを押さえてAgency Network Of The Year(1年で最も優れた広告代理店ネットワーク)に選出されたのが、BBDO Worldwide。I&S BBDOは、そのネットワークの一員として日本に拠点を置く外資系広告代理店である。

株式会社I&S BBDO 広報 PRマネージャー 阿久澤騰氏
株式会社I&S BBDO 広報 PRマネージャー 阿久澤騰氏

 同社は、戦後間もない1947年6月に設立された、創業70年という老舗企業だ。第一広告社という名前でスタートした後、1986年にI&Sと社名変更。さらに1998年にはオムニコグループとの資本提携、並びに米国・ニューヨークに本部があるBBDO Worldwideとの業務提携を経て、現在のI&S BBDOとなる。

 「I&S BBDOは、日本で培ってきた広告やマーケティングに関する知見と、グローバルから得ている知見をあわせて、クライアントの広告やマーケティング、PR活動を支援しています。加えて、テレビCMやデジタルのメディアバイイングも行っていて、広告・マーケティング施策の企画・製作から枠の提案まで総合的なクライアントニーズに応えることができる体制を整えています」(阿久澤氏)

 ちなみに「BBDO」は、1928年にニューヨークで誕生した広告会社で、創業者4人の頭文字から取ったのが名前の由来。現在はBBDO Worldwideとして、世界81カ国、289拠点に、1万5,000人を超えるスタッフが従事し、全世界でネットワークを形成している。

 今年の7月20日にはI&S BBDO設立70周年感謝の集いを開催。花王の代表取締役、社長執行役員の澤田道隆氏や読売新聞グループ本社代表取締会長である白石興二郎氏の祝辞をはじめ、多くの広告主やメディア・パートナーとともに設立70年を祝った。

パーティー時の写真
設立70周年感謝の集い時の写真(撮影:編集部)

企画性に富んだクリエイティブで勝負

 最近のI&S BBDOの広告・マーケティング事例を見ても、企画性が高く、高品質なクリエイティブが目に入る。たとえば「東池袋52」。カード会社のクレディセゾンによるプロモーション施策で、実際の社員がアイドルグループ「東池袋52」として活動するというもの。選りすぐりのクリエイターをスタッフに招きデビュー曲「わたしセゾン」とそのPVを制作すると、企画性の高さや本気の作り込みが伝わるPVとして各メディアや各種SNSで話題化し、広く拡散された。

 他にも、国内大手食品メーカーのテレビCMや、「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」「スーパーサラリーマン左江内氏」「ボク、運命の人です。」といった日本テレビ系列のドラマのプロモーションなどをはじめ、硬軟織り交ぜた各種の施策を手がけている。

 「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」のPRプロモーション施策として行った「地味にスゴイ!番宣」に関しては、ジェイアール東日本企画の主催する「交通広告グランプリ2017」において「企画部門・優秀作品賞」を受賞している。

 I&S BBDOグループは、I&S BBDOを筆頭に、2社のグループ会社、BBDO J WESTとBBDO JAPANの3社から成り立っている。

 「I&S BBDOは東京本社に加え、全国に5つの拠点を持ちます。グループ会社のうち、J WESTは福岡・博多に本社を置き、沖縄から広島まで西日本の各地域に根ざした活動を行っています。JAPANはグローバル企業が日本市場でビジネス展開する際の広告、マーケティング活動を支援する位置付けです。

 国内で展開するこれら3社のことを、グループ内では日本市場における“3本の矢”と位置づけ、社内リソースや社内連携を活かしながら、他社とは一線を画するマーケティングやメディアバイイング支援を行っています」(阿久澤氏)

 世界的には知名度の高いBBDO Worldwideのネットワークだが、これまでの日本における知名度はまだそこまで、という状況だった。しかし、近年は認知浸透の成果が見られている。たとえばJ WESTは、地元密着とユニークな施策実績を重ね、新卒・既卒学生のための就職情報サイトを運営するキャリタスの調査によれば、2018年九州・沖縄地方人気企業ランキングにて全体で53位、広告代理店の中では1位に選ばれている。

3社がシームレスに連携して生まれた成果

 続いて、I&S BBDOグループの特徴について、代表的な2つを阿久澤氏に挙げてもらった。1つ目が、社内クリエイティブユニット「CUTTING EDGE」の結成だ。斬新な、最先端の、という意味を持つ同ユニットは、I&S BBDOとBBDO J WESTのメンバー4人で構成。メンバーには、福岡のタイヤメーカーAUTOWAYのPV「雪道コワイ」という、2014年当時に多くの拡散を呼んだバズ動画を手がけたコンテンツ・プランナー、眞鍋海里氏も参画する。

 「たとえば、割り勘アプリpaymo(ペイモ)のPVのプランニングを眞鍋が手がけています。単なる広告・マーケティング施策ではなく、続きが気になるコンテンツを発想・映像化することが得意な眞鍋のような人材がいること、グループ内で必要に応じて柔軟に連携できることが、グループ全体の強みにもなっています」(阿久澤氏)

 2つ目が、3社連携が機能した事例でもある、広島県尾道市の観光キャンペーン「広島 CAT STREET VIEW 第1弾 --尾道編-- - カンパイ!広島県」の取り組みについてだ。

 「グループ3社と空気株式会社が連携した施策です。目減りする観光人口の打開策として実行しました。実際に尾道市内を歩いてみたときに、街中を散歩する猫の存在に気づいた社内チームの着想から、猫目線のGoogleストリートビューを企画並びに開発。猫目線(足元に近い下からの視点や、ジャンプなどをして屋根の上に登ったような視点など)で街中を探検、回遊できるというサービスです」(阿久澤氏)

 この動画は、国内にとどまらず海外でも大きな反響を呼び、新たなインバウンド観光客の開拓にもつながり、海外観光客も含めて全体の観光客数の底上げに寄与したという。クライアントからも大きな評価を得ることとなった。

モットーは「クリエイティブで人を動かす」

 先ほどの「広島 CAT STREET VIEW」は、アジア太平洋エフィー賞(APAC Effie Awards)、The APPIES 2016、Warc賞(Warc Prize for Asian Strategy)など、アジアを代表する広告賞で金賞を受賞。そもそも各広告賞のエントリーは、クライアントの承諾および成果があってこそだ。クライアントの理解を得られるのは、そのキャンペーンの結果がよいからだともいえる。

 すなわち、クライアントの要望に徹底的に応えることで、国内だけでなく海外の広告賞における高い評価を獲得しているのがI&S BBDOグループの大きな特徴になっている。

 大きな成果を生み出すプロモーション施策をクライアントとともに展開できる背景には、BBDOが大切にする「人を動かす」ことを重視したスローガンにある、と阿久澤氏は補足する。BBDOのスローガンは、「The Work. The Work. The Work.」だ。

 「前置きなしにThe Workとあれば“仕事”と解釈するかもしれませんが(笑)、英語のWorkには“作品”という意味があります。The Workは私たちが生み出す、すべてのコミュニケーション活動であり、作品です。私たちの戦略、リサーチ、プランニング、コミュニケーション・デザイン、これらすべては「The Work」を効果的な形に方向づけ、実現させるためにあります。優れた作品を生み出し、届けることで、消費者の心が動き、商品も動き、クライアントの売り上げへの貢献につながると私たちは信じているのです」(阿久澤氏)

 BBDO Worldwideは、グループ方針として広告賞応募に積極的なスタンスをとっているという。

 「世界的な広告代理店ネットワークの中でも、最も広告賞の受賞数が多い広告会社ネットワークがBBDO Worldwideですが、もちろん受賞ありき、受賞を目的化したスタンスではありません。最大限の効果を引き出すThe Work(作品)を生み出した証左として、広告賞の受賞という結果が副産物、砕けた表現をすればオマケのようなものとしてもたらされているとも考えていますし、こうした環境をポジティブに捉えています。

 また、広告賞の存在は、BBDO Worldwideでネットワークされた世界各国の広告会社同士での切磋琢磨を促す役割を担っていると思っています。あの国の、あのチームがあの地域の広告賞を受賞した、評価を集めた、という情報もBBDO Worldwide本社があるニューヨークから届くので、そうした情報もいい刺激になっているはずです」(阿久澤氏)

新メディア「Tokyo XYZ」運営の狙い

 2017年2月には、I&S BBDOのプランニング&デジタルグループのメンバーを中心に執筆運営を行うオウンドメディア「Tokyo XYZ by I&S BBDO (以下、TOKYO XYZ)」を開設。公開から約半年が経過し、堅調にユニークユーザーやPVを増やし、マーケティングに興味関心の高いユーザーから業界関係者まで、裾野を広げながらリーチを広げている。

 名称となるTokyo XYZは、X軸、Y軸、Z軸が由来。一方向のみではなく、縦横斜めから対象を読み解くという趣旨を込めた名前だという。

 「2016年秋から年末にかけてデジタル業界を揺るがした、キュレーションメディアによる掲載情報の信頼性を巡る問題も背景にあり、自社メンバーで実際に取材し、丁寧に深堀りした情報を発信し、メディア運営を行う姿勢が業界関係者やクライアントから評価いただけるようになっています。その結果、既存・新規クライアントからオウンドメディアの制作・運営に関する弊社へのご相談・ご依頼がTokyoXYZの立ち上げ後、増えてきています」(阿久澤氏)

 現状は、自社の取り組みに加えて、海外のネットワークを活かして海外のマーケティング、広告事例を紹介。分析したエントリーなど、他では見られないコンテンツを意識している。業界キーパーソンや注目企業など、取材記事の数を今後もさらに増やしていく意向だ。

「人を動かす」ことを念頭に置いた展望

 ここまで見てきた通りI&S BBDOは、ナショナルクライアントへの対応に長けたI&S BBDO、西日本を中心にローカルに根ざした企画力に定評のあるBBDO J WEST、グローバル企業の日本市場でのマーケティング活動をサポートするBBDO JAPANが、三位一体となってグループ内でシナジーを生み出してきたことがわかった。

 今後、Tokyo XYZの発信力がもっと高まれば、I&S BBDOグループ全体の国内におけるプレゼンスがさらに高まるに違いない。

 最後に、I&S BBDOをめぐる今後の展望で話を結んでもらった。

 「広告・マーケティング業界において、現代はデジタルの波が押し寄せています。技術の進歩による変化はめまぐるしいですが、その分、想像を越えた成長が期待できる魅力的な領域です。

 BBDOのスローガンである“The Work, The Work , The Work”には、“最高のクリエイティブこそが人を動かす”というこだわりが込められています。弊社代表の加藤和豊が常日頃から言っているのが、このスローガンが象徴する基本理念を大切にし、デジタル領域でも最高のコンテンツを届けていこう、ということです。今後もより質の高いクリエイティブと効果的なコミュニケーション活動の創造を通してクライアントのビジネスのさらなる成長に貢献していきたいと考えています」(阿久澤氏)

 世界各国に拠点を置く巨大なネットワークを持つ広告代理店の一員として、I&S BBDOはクライアントとともに、世界のクリエイティブにおける牽引役を目指す。これから、どのように新たなクリエイティブやマーケティング施策を提供していくのか。期待して見届けていきたい。

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この記事の著者

遠藤 義浩(エンドウ ヨシヒロ)

 フリーランスの編集者/ライター。奈良県生まれ、東京都在住。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経てフリーに。Web、デジタルマーケティング分野の媒体での編集/執筆、オウンドメディアのコンテンツ制作などに携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/08/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26829