マーケティング、つまり4Pを「運用する」
これまで、サービス化の事例をもとに4Pの変容をみてきましたが、まとめたものは以下になります。

4Pの要素は密接に関係を強めてきており「それぞれを個別最適で順を追って考える」ではなく「連携していることを前提とし同時並行的に検討し、実行に移さねばならない」という難しさをはらんでいます。
「統合的に考えることの重要さ」はデジタル化する前と変わりませんが、たとえばアプリクーポンなどニーズと消費が同時に生まれる世界がデジタルによって実現可能になっていて、それを具現化するためには、リアルタイム・ライトタイムな4Pの運用、つまり「マーケティングの運用」をITや企業組織の変革も併せて行いながら、一人ひとりの顧客に対して相対しながらやりきらなければいけない、マーケターにとってはとても要求の高い状況だと感じています。
どこから着手するか?顧客への“コミット”でみたサービス化分類
前ページでは、サービス化の事例についてビジネスモデルの変革に至ったものや、チャネルの変革に着手したものなど、マーケティングの戦略視点いわば企業側の目線で紹介しました。
では、実際に自社で事業のサービス化実装を検討する場合、どういう視点で考えればよいのでしょうか。前回も“デジタライゼーションの本質的な目的は顧客への提供価値の高度化である”と書きましたが、事業のサービス化を考える場合には3つの視点があると筆者は考えています。
1.情報的拡張=(自社のサービスは)ヒトの「意識変化」を支援しているか?
コンテンツマーケティング、One to OneのEメール・DM、位置情報やアクションを起点にしたアプリプッシュ・広告配信など、リアルタイム/ライトタイム/ライトプレイス/自分向け、と感じさせ、意識の変化を促す情報の提供
2.機能的拡張=(自社のサービスは)ヒトの「行動変化」を支援しているか?
店頭連動アプリ(クーポン・待ち時間軽減)、カテゴリーの利用支援サービス(オンライン美容コンシェルジュ)など、お得/便利/選びやすい/買いやすい/使いやすい、と感じさせ、行動の変化を促す機能の提供
3.情緒的拡張=(自社のサービスは)ヒトの「非連続な意識・行動変化」に寄与しているか?
デジタルを活用した店頭接客改善/おもてなし(チャットによるスタイリストサービスなど)/驚きがある/発見がある/楽しみがある、と感じさせ、ロイヤルティの礎ともなるような情緒的な情報の提供
これらの拡張を通じて、どれだけ顧客の生活にコミットできているのか? が、これからの事業・ブランドの新たなKPIになるでしょう。1.や2.はデジタル化が進展し、コンテンツやアプリサービスを企業が容易に提供できることになったことで拡張した領域ですが、3.は「お! スゴイ!」とか「さすがのもてなしだ」と感じる、いわば「WOW」な体験や瞬間を、オンライン/オフラインチャネルを問わず提供することです。
たとえば、店舗などのオフラインサービスでもデジタルやロボティクスを活用した業務プロセス改善で、顧客体験を高度化することが可能です。また、クルマや保険のセールスプロセスをデジタルで支援することや、ホテルのおもてなしのクオリティ向上のために、業務にロボティクスを導入するなども挙げられます。オフライン店舗や接客の役割が、デジタル上の接点の増加にともなって相対的に変化するとしたら、店頭や従業員の業務効率化をデジタルやテクノロジーで進め、余剰の時間で「顧客に対するサービスの付加価値を上げること」や「店舗ならではのおもてなしや特別な体験を提供すること」が、これからの店舗やオフラインチャネルの役割になっていくでしょう。ロイヤルティを非連続に向上させるヒントがここにあるのかもしれません。オンライン×オフライン視点、顧客視点×エンプロイー視点、トータルでのサービスのマネジメントが、進化したサービス化のためには必要になってくるのです。
ここまで、4P目線でみたサービス化事例の背景と、サービス化の着手の考え方についてお話しました。次回以降では、“事業のサービス化実装”を可能にするいくつかの具体的なソリューションやテクノロジーを、活用事例を踏まえながら紹介します。